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2013年7月

2013年7月22日 (月)

顧客を得るは難く失うは易し

数日前、「グリーンケア」という造園会社の代表(社長)なる人物から手紙が届いた。自宅を建て替える2~3年前から庭や生垣のケアをしてもらうようになり、建て替えてからも毎年のように、新規造園も含めてガーデニングの仕事を依頼し続けていた会社だ。
が、昨年11月に、年内の作業を依頼しようと思って電話を入れたところ、予定をとれるかどうか現場の担当者に聞いてみなければわからないということで、それっきり返事がナシのツブテとなり、結局、不満と失望のうちに付き合いを止める結果となった。

実はそのとき、2週間近く経っても返事がないので、再度こちらからわざわざ電話をしたのだが、それまでに何も確認が進んでいなかったらしく、待たされた挙句の果てに“年内には予定が取れません”と言われ、踏んだり蹴ったりになってしまった。
どうやら、現場担当者(職人?)が話をいい加減に聞いて放っておいたか、電話窓口の係員がチャンと伝えずまた再確認もしなかったか...ということだったようで、いずれにしても、こちらは大迷惑、ただただ憤慨に堪えなかった。

初めての依頼というわけでもなく、何度も仕事をしてもらっていた間柄なのに、そんな対応はあまりにもいい加減じゃあないかと頭から湯気を立てて怒りたかったが、それよりも急激に心が冷えて行き、この会社はダメだ(になった)ナという思いがこみ上げてきた。
付き合い始めたのは、確か一枚の投げ込みチラシがきっかけで、そのころは、いわゆる造園屋っぽい押しつけがましさのない営業や作業のセンスに好感が持てて、やがてリピーターになったが、ある時期から急に、違和感と失望感を覚えるようになった。

それは、この会社がウエブに力を入れ始め、メルマガを発行・送付し始めたころあたりからだったと思う。相手(つまり当方)がかつてどういう内容の仕事を頼んだ客であるかに関係なく、自分の方で売りたい仕事を一方的に提案してくるようになったのだ。
こういった商売は、いったん良い関係が生まれれば、剪定や消毒・施肥など季節ごとの定型的作業の需要が自然に継続するはずのものだが、この会社はそれらのフォローよりも、造園・エクステリアなど、新規のより値嵩の張る仕事に力を入れるようになった。

ウエブもメルマガも、それ自体が問題なわけではないし、値嵩の張る仕事を獲得したいと思うのも悪いとは言わない。ある意味では当然のことだろうが、そのために既存顧客の地味だが継続的な二ーズのフォローを忘れてしまった(ように見える)のはいただけない。
そんなことはないと抗弁するかも知れないが、その時期に前後して、担当者からのフォローも一切なくなってしまった。いまどき、昔風の植木屋でも、季節ごとに“そろそろまた手入れの時機ですね”ぐらいの挨拶はしてくるというのに...。

そんなわけでこの会社とは、こちらからするのは電話や手紙の時間も費用ももったいないと、あれ以来モノ言わぬまま絶縁していたが、今春になって突然アンケートが舞い込んできたので、このついでに一言言っておくかと、以上のような経緯について筆を執った。
冒頭の社長の手紙とは、それでやっと知ったらしいこの一連の事実に対する詫びと釈明と反省の弁で、先行して直接の電話もあったが、如何せん、こちらに言われていまごろ気がつくのではあまりにも遅過ぎると、もう二度と縒りを戻す気にはなれないでいる。

社長は、経営合理化のために顧客対応の業務を外注していたのでさまざまな不手際が生じ、客に迷惑をかける事態が頻発していると弁明していたが、こちらとしては、外注云々以前に、経営上のもっと根本的な問題がわかっているのかどうかに疑問を感じている。
つまり、経営において何を最も重視しどこに力を入れているのかという問題だが、この会社のそれは、社長の言から察するに少なくともこれまでのところは、既存顧客の定型的リピートオーダーではなかったようだし、顧客との関係構築でもなかったようだ。 

それらとは裏腹に、この会社が重視していたのは、たとえ一回限りでも値嵩の張る新規の仕事の獲得。力を入れていたのは、人や電話によるパーソナルな接触ではなくてウエブやメルマガによるデジタルなコミュニケーションだった。それも一方通行の...。
これは、二者択一的にどちらだけが正しくてどちらだけが間違っていると極めつけられる問題ではないが、優先順位は明らかだ。言うまでもなく、パーソナル・タッチの既存顧客重視が先で、デジタル・アプローチによる業務拡大はその上でということだ。

その点においてこの会社は、誤りとまでは言わないにしても大きなリスクを冒してしまったのではないかと思う。おそらく、自分のケースだけが特別だったわけではなくて、同じような原因・理由で、何割かの貴重な顧客を失ったに違いない。
ただ単に出入りのガーデニング業者に不満を持つ顧客という一個人としての立場からだけでなく、これまでにも機会あるごとに各所で何度も顧客サービスの重要性を書いたり話したりしてきたマーケティング専門家の端くれとして、あえてそう推測する。

が、かつては世話になったこともあったこの会社に対する今後のためのせめてもの餞として、また似たような世の野心的事業家のための他山の石として、今回のケースから学ぶべきことを、僭越ながら書き留めておこうと思う。
キーワードは、「顧客データベース」「顧客接点」そして「顧客コミュニケーション」。まとめて言えば“既存顧客重視の経営戦略”ということになり、すべてに“顧客”という言葉が、キーワード中のキーワードとして含まれてくる。

思うに、今回のケースは、この会社には顧客のデータベース(取引履歴が詳記された)というものが存在せず、電話応対係員の未熟さか怠慢のために客とその依頼の価値判断を誤り、その後のフィードバックもせずにダメ押しをしたということではなかったか?
これでは、客が嫌気を起こして離反して行くという最悪の顧客サービスの見本のようなもので、それを招いた原因は、顧客データの未整備と、電話窓口という顧客接点の軽視と、顧客に対する2ウェイコミュニケーションの欠如にあると断じられても仕方ないだろう。

もっと言えば、事業拡大もいいがそのためには、やたらと新企画などを提案して新規需要ばかりを掘り起こそうとするよりも、既存顧客の定期・定型ニーズに誠実に対応し、その実績から派生する紹介などをベースにしてネットワークを拡げて行くべきだった。
コミュニケーションのメディアも、この仕事の性格や客層を考えれば、デジタルメディアのインターネットだけではなくて(SNSに力を入れるのはいいが)、電話や手紙といったアナログメディアをあえて重視・活用すべきと思う。

こんな経営格言がある。“たった1人でも、顧客を獲得するということは決して容易ではないが、失うのは実に簡単だ”...という。また、“1人の新規顧客を獲得するためには、1人の既存顧客を維持するための5倍(一説では10倍)のコストがかかる”...とも。
してみれば、事業経営(特に起業期の)において、どこに着目し、何に力を入れるべきかは自明の理。これからでも遅くはないから、「グリーンケア」や同じような問題を抱えている世の起業家は、経営戦略の見直しを図った方がいいと思うが如何なものか。

ここに詳細を引用していると長くなってしまうからそうしないが、2008年2月11日付の拙ブログ「だから顧客が去って行く」もその際の参考になるかも知れないので、とりあえず上記にリンクを貼っておく。
なお、より積極的な興味をこのテーマに関して持たれた向きは、「ザッポス」または「ザッポス・ドットコム」で検索して、同社の関連記事を読まれることをお薦めする。

ほんの些細な私ごとに端を発して、思わず大口をたたいてしまったが、どうでもいい身の回りのことばかり書いている昨今、たまにはビッグマウスもご容赦を。

(マーケティング随論)顧客を得るは難く失うは易し

数日前、「グリーンケア」という造園会社の代表(社長)なる人物から手紙が届いた。自宅を建て替える2~3年前から庭や生垣のケアをしてもらうようになり、建て替えてからも毎年のように、新規造園も含めてガーデニングの仕事を依頼し続けていた会社だ。
が、昨年11月に、年内の作業を依頼しようと思って電話を入れたところ、予定をとれるかどうか現場の担当者に聞いてみなければわからないということで、それっきり返事がナシのツブテとなり、結局、不満と失望のうちに付き合いを止める結果となった。

実はそのとき、2週間近く経っても返事がないので、再度こちらからわざわざ電話をしたのだが、それまでに何も確認が進んでいなかったらしく、待たされた挙句の果てに“年内には予定が取れません”と言われ、踏んだり蹴ったりになってしまった。
どうやら、現場担当者(職人?)が話をいい加減に聞いて放っておいたか、電話窓口の係員がチャンと伝えずまた再確認もしなかったか...ということだったようで、いずれにしても、こちらは大迷惑、ただただ憤慨に堪えなかった。

初めての依頼というわけでもなく、何度も仕事をしてもらっていた間柄なのに、そんな対応はあまりにもいい加減じゃあないかと頭から湯気を立てて怒りたかったが、それよりも急激に心が冷えて行き、この会社はダメだ(になった)ナという思いがこみ上げてきた。
付き合い始めたのは、確か一枚の投げ込みチラシがきっかけで、そのころは、いわゆる造園屋っぽい押しつけがましさのない営業や作業のセンスに好感が持てて、やがてリピーターになったが、ある時期から急に、違和感と失望感を覚えるようになった。

それは、この会社がウエブに力を入れ始め、メルマガを発行・送付し始めたころあたりからだったと思う。相手(つまり当方)がかつてどういう内容の仕事を頼んだ客であるかに関係なく、自分の方で売りたい仕事を一方的に提案してくるようになったのだ。
こういった商売は、いったん良い関係が生まれれば、剪定や消毒・施肥など季節ごとの定型的作業の需要が自然に継続するはずのものだが、この会社はそれらのフォローよりも、造園・エクステリアなど、新規のより値嵩の張る仕事に力を入れるようになった。

ウエブもメルマガも、それ自体が問題なわけではないし、値嵩の張る仕事を獲得したいと思うのも悪いとは言わない。ある意味では当然のことだろうが、そのために既存顧客の地味だが継続的な二ーズのフォローを忘れてしまった(ように見える)のはいただけない。
そんなことはないと抗弁するかも知れないが、その時期に前後して、担当者からのフォローも一切なくなってしまった。いまどき、昔風の植木屋でも、季節ごとに“そろそろまた手入れの時機ですね”ぐらいの挨拶はしてくるというのに...。

そんなわけでこの会社とは、こちらからするのは電話や手紙の時間も費用ももったいないと、あれ以来モノ言わぬまま絶縁していたが、今春になって突然アンケートが舞い込んできたので、このついでに一言言っておくかと、以上のような経緯について筆を執った。
冒頭の社長の手紙とは、それでやっと知ったらしいこの一連の事実に対する詫びと釈明と反省の弁で、先行して直接の電話もあったが、如何せん、こちらに言われていまごろ気がつくのではあまりにも遅過ぎると、もう二度と縒りを戻す気にはなれないでいる。

社長は、経営合理化のために顧客対応の業務を外注していたのでさまざまな不手際が生じ、客に迷惑をかける事態が頻発していると弁明していたが、こちらとしては、外注云々以前に、経営上のもっと根本的な問題がわかっているのかどうかに疑問を感じている。
つまり、経営において何を最も重視しどこに力を入れているのかという問題だが、この会社のそれは、社長の言から察するに少なくともこれまでのところは、既存顧客の定型的リピートオーダーではなかったようだし、顧客との関係構築でもなかったようだ。 

それらとは裏腹に、この会社が重視していたのは、たとえ一回限りでも値嵩の張る新規の仕事の獲得。力を入れていたのは、人や電話によるパーソナルな接触ではなくてウエブやメルマガによるデジタルなコミュニケーションだった。それも一方通行の...。
これは、二者択一的にどちらだけが正しくてどちらだけが間違っていると極めつけられる問題ではないが、優先順位は明らかだ。言うまでもなく、パーソナル・タッチの既存顧客重視が先で、デジタル・アプローチによる業務拡大はその上でということだ。

その点においてこの会社は、誤りとまでは言わないにしても大きなリスクを冒してしまったのではないかと思う。おそらく、自分のケースだけが特別だったわけではなくて、同じような原因・理由で、何割かの貴重な顧客を失ったに違いない。
ただ単に出入りのガーデニング業者に不満を持つ顧客という一個人としての立場からだけでなく、これまでにも機会あるごとに各所で何度も顧客サービスの重要性を書いたり話したりしてきたマーケティング専門家の端くれとして、あえてそう推測する。

が、かつては世話になったこともあったこの会社に対する今後のためのせめてもの餞として、また似たような世の野心的事業家のための他山の石として、今回のケースから学ぶべきことを、僭越ながら書き留めておこうと思う。
キーワードは、「顧客データベース」「顧客接点」そして「顧客コミュニケーション」。まとめて言えば“既存顧客重視の経営戦略”ということになり、すべてに“顧客”という言葉が、キーワード中のキーワードとして含まれてくる。

思うに、今回のケースは、この会社には顧客のデータベース(取引履歴が詳記された)というものが存在せず、電話応対係員の未熟さか怠慢のために客とその依頼の価値判断を誤り、その後のフィードバックもせずにダメ押しをしたということではなかったか?
これでは、客が嫌気を起こして離反して行くという最悪の顧客サービスの見本のようなもので、それを招いた原因は、顧客データの未整備と、電話窓口という顧客接点の軽視と、顧客に対する2ウェイコミュニケーションの欠如にあると断じられても仕方ないだろう。

もっと言えば、事業拡大もいいがそのためには、やたらと新企画などを提案して新規需要ばかりを掘り起こそうとするよりも、既存顧客の定期・定型ニーズに誠実に対応し、その実績から派生する紹介などをベースにしてネットワークを拡げて行くべきだった。
コミュニケーションのメディアも、この仕事の性格や客層を考えれば、デジタルメディアのインターネットだけではなくて(SNSに力を入れるのはいいが)、電話や手紙といったアナログメディアをあえて重視・活用すべきと思う。

こんな経営格言がある。“たった1人でも、顧客を獲得するということは決して容易ではないが、失うのは実に簡単だ”...という。また、“1人の新規顧客を獲得するためには、1人の既存顧客を維持するための5倍(一説では10倍)のコストがかかる”...とも。
してみれば、事業経営(特に起業期の)において、どこに着目し、何に力を入れるべきかは自明の理。これからでも遅くはないから、「グリーンケア」や同じような問題を抱えている世の起業家は、経営戦略の見直しを図った方がいいと思うが如何なものか。

ここに詳細を引用していると長くなってしまうからそうしないが、2008年2月11日付の拙ブログ「だから顧客が去って行く」もその際の参考になるかも知れないので、とりあえず上記にリンクを貼っておく。
なお、より積極的な興味をこのテーマに関して持たれた向きは、「ザッポス」または「ザッポス・ドットコム」で検索して、同社の関連記事を読まれることをお薦めする。

ほんの些細な私ごとに端を発して、思わず大口をたたいてしまったが、どうでもいい身の回りのことばかり書いている昨今、たまにはビッグマウスもご容赦を。

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2013年7月 8日 (月)

ムッシュと老老散歩の日々

今年も早や前半が終わって暦は7月に突入。夏至は過ぎたが、いま時分は1年中でいちばん日が長いころ。朝は4時ともなれば東の空が白み始め、夕方は7時を回ってもまだ外は明るく、自分の子供のころ実施されたサマータイムを思い出す。
年寄りは朝が早いなどと言われるが、寝足りて早朝に目が覚めるわけではないけれども、前立腺の手術をしたせいなどもあって、どうしても、未明に一度トイレのために起きるようになり、それっきり眠れなくなってしまうことも再々だ。

ムッシュそれでも、そう思って悶々としているうちに、いつの間にか1時間くらいは浅い眠りに落ちて、束の間ながら心地好いひとときを味わえていることもあるのだが、近ごろはその楽しみさえ奪われるような事態になっていて、いささか困惑している。
朝は8時ごろまで熟睡していて、ときにはこちらが声をかけて起こすこともあったムッシュが、思い返せばこの春ごろから、ちょうど1時間早い7時前後には目を覚まし、ワンワン吠えて、“ケージから出してくれー”と催促するようになったのだ。

初めのうちは、様子見をするように、控えめに“ワンッ”と一声啼いては暫く沈黙し反応をうかがっているが、それを繰り返しても何も反応がないとなると声が“エンエンッ!”になって、沈黙の間が短くなり、啼き方もトゲトゲしくなってくる。
こちらは“ワンッ”のころはまだ夢うつつ、彼は1階で自分たちは2階だから、だいたい“エンエンッ!”に変わるころに気がつくが、なにぶんまだ6時台で洗顔・歯磨きもこれからというところなので、すぐに飛んで行くというわけには行かない。

本当はもう少し眠りを貪っていたいところなのだが、もしや何らかの理由で切羽詰まっているのではないかと、急かされた気持ちになって、結局、“ハイハイ、分かった分かった”と、アタフタ1階に下りて行くことになる。
セコムのセキュリティロックを解除し、全室のシャッターを上げ、窓から光を入れて、それからムッシュのケージを開けてやるのだが、彼は中で待ちかねた様子でピョーンピョーンとジャンプしていて、文字通り脱兎のごとく飛び出してくる。

多分、外で用を足したくて我慢していたのだろうと思い、早速、朝の散歩に連れ出すが、この時でもまだ7時前。こちらは洗顔はしたものの気だるさが抜け切れていないのに、ムッシュはすでにエンジン全開だ。
小走りに家の前の道を渡って、向いのマンション脇の遊歩道の定位置までくると、そこで彼は朝の大小ご用足しをしてお腹スッキリ。そのころにはこちらもようやく身体全体が覚醒して、頭の中もスッキリしてくる。

散歩のコースは一様ではない。だいたい5通りあって、歩数(自分の)にすると最短で7~800歩、最長で1500~1600歩、標準で1000歩前後といったところ。往復ではなくてほとんどが周回で、右回りのときも左回りのときもある。
その日その日のコース選択はもっぱらムッシュまかせだが、興味深いことに、ある一定のパターンで上記の5通りをローテーションしているフシがある。厳密に記録をとっているわけではないが、どうも、そのように思えて仕方がない。

何れにしても、朝のムッシュは元気いっぱい。嬉々として先に立ち、こちらはそれに引っ張られるようにして足早にならざるを得ない有様。これが、余程の雨降りにでもならない限り1年365日続いている。
朝ほどではないが、昼寝(ムッシュの)の後にも散歩に出るし、昼食後・夕食後にも、家の周りをそぞろ歩きする。これも朝同様、毎日のこと。自分は1日の適切なウォーキング距離を5000歩以上ということにしているが、大半はこれでクリアできている。

ムッシュはいま12歳。あと4カ月で13歳になるので、もはや老犬の部類に入るのだろうが、極小で童顔なので誰もそうは見ない。だから、散歩途中で会う初対面の人にはたいがい、幼犬扱いされて、“可愛いネー”などと頭をなでてもらってはテレている。
ただ、見かけはそうでも、長年付き合っているこちらには、やはり彼の体力の衰えはわかる。清里の森の中で暮らしていたときを含めて5年前くらいまでは、いまの倍はおろか3~4倍の距離を平気で歩いていたが、もうそんなことはすっかりなくなってしまった。

かつては、昼寝後の散歩でも、朝に優るとも劣らない相当な長距離を歩いたものだったが、いまはまったくその面影はなく、ちょっと家の周りをブラつくという程度。考えてそうしているわけでもないのだろうが、いつの間にかそうなった。
でも、それでいい。上手くしたもので、ムッシュがそうなって行く間に、こちらも残念ながら、年々目に見えて体力が低下してきた。わずか1年余り前までは、身体を鍛え直すの何のと威勢のいいことを言っていたが、いまは到底無理と自覚するようになった。

ムッシュはいま、人間の年齢に換算すると還暦と古希の間くらいのところのようで、現在の自分よりもまだかなり若いから元気なのもうなずけるが、気を遣ってやるに越したことはないと、ヒアルロン酸とコンドロイチンの入ったサプリも服ませている。
そのお蔭か、足腰は以前と変わらずしっかりしているのが嬉しい。自分も、若いころ野球でさんざん走り込んできたのが幸いしてか、足の老化はほとんど意識せずに済んでおり、いまのところムッシュとの付き合いに不自由はない。

しかしあと4年もすると、彼の換算年齢が自分の実年齢にちょうど並ぶ傘寿の坂に差しかかることになり、お互いの一つの山場となる。が、いまの調子だと、何だかそれも何気なく乗り越えて行けそうな気もする。というよりも、それ以外のイメージが湧かない。
能天気と言われるかもしれないが、いまのムッシュを見ていると、そしてそれに付き合えている自分を考えると、そんなに難しいことでもなさそうに思える。マア、そう思っていることが、そうなるためのいちばんの近道ということになるのかも知れないが...。

思いがけず今年は梅雨明けが早まったようで、このところ猛暑が続いており、この先が思いやられるが、何だかんだ言いながらワテら二人(正確には老人一人と老犬一匹)は、今日も何事か語り合いながら、老老散歩に出かける。

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