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2013年4月 1日 (月)

花冷え

やっと待ち望んでいた4月になった。3月という月の間は、まだどこか“春は名のみの...”という季節感から抜けきれなかったが、4月の声を聞くともう“春本番!”という気分になるのは自分だけだろうか?
でも今年は、寒暖の移り変わって行く様子がどうもおかしい。先々週の前半などは、彼岸前なのに晩春か初夏かというほどの陽気になったかと思うと、その週末から先週にかけては、一転、ひと月前の肌寒さに逆戻り、おまけに冷たい雨まで降った。

おかげで桜の名所はどこも、開花が予想外に早過ぎてしまって、イベントの予定日とタイミングが合わず大慌て...したかと思うと一方、お花見は雨に祟られたり寒さに震え上がったりする始末。こちらも何となく、春を楽しむ調子が出ない。
あの、一気に気温が上昇した数日は、もう冬着とは完全にお別れと思い、内でも外でも重ね着する枚数を思いきって減らしたが、いくらも日を置かないうちに十度以上も気温が下がって、またもとの黙阿弥。こうコロコロ気温が乱高下しては、年寄りは身がもたない。

御嶽神社の桜ただ、今年の桜の花は、早咲きした割には長持ちしている。5分咲きに気がついたころからすでに10日以上経つけれども、いまだに満開状態を保っているのは、途中で一度寒くなったのがかえって幸いしたのかも知れない。
いつもなら1週間であらかた散ってしまうご近所の御嶽神社の桜も曇天の下で健気に咲き続けているし、近辺の人気の桜並木、たまプラーザの駅前通りやカリタス短大横の桜通りにも、依然として観桜の人出が絶えない。

このような、桜の咲く時期に陽気が定まらず季節が逆戻りして一時的に冷え込むことを、俳諧の道では風流に“花冷え”などと呼んでいるようだが、こちとらご老体としては風流だけでは済まされず、体調への微妙な影響があったりする。
この季節は、いきなり上がったり下がったりする気温に交感神経と副交感神経のバランスがとれなくなり、毎年のように、どことない不調が生じてはホームドクターに“自律神経失調症ですナ”と診断され、とりあえず...と、トランキライザーなどを処方されてきた。

が、今年の春はどうも、そんな不定愁訴だけでは済まなかったようだ。あの、急に気温が下がった日の朝、目が覚めてみたら、首筋から肩そして肩甲骨の内側と二の腕から肘にかけての辺りまで右上半身が固まったように痛くて、どうにも動かしにくくなっていた。
以前から慢性的に肩凝り症だったので、その朝の寒さにベッドの中で縮こまっていたことでそれを昂じさせたかと思い、起床してからしばらく、肩を回したり首を回したりしてみたが、いつものようには動かない上に、凝りというよりは痛みがキツくなるばかり。

そんなとき、肩凝りぐらいは運動で治す...と称して、身体を動かしているうちに症状が軽くなり、多少は気になるところが残っても、そういう体質だからと自己納得していたのがいつものことだったが、今回はどうもそれでは済まなさそうだという感じがした。
食事の箸の上げ下げや、ムッシュを散歩させるときのリードやバッグにも妙に重みを感じ、右腕を浮かすような姿勢をするとき酷く疲れるのだ。パソコンも、キーボードを叩くのはともかく、マウスのクリックがいちいち辛い。

こういう症状に陥った場合、皆さんだったらどうするだろうか?常識的にはまず整形外科に診てもらうということになるのだろうが、自分の再三の経験では、一般の整形外科で問題が解決したことはなかった。
これまで、似たような症状で3院ほどかかったことがあったが、どこでも、頸椎などのX線写真を撮って、牽引や電気刺激やレーザーなどによる物理療法を施され、注射を打たれたり鎮痛剤や湿布を投薬され続けるだけで、快癒の見通しは一向に立たなかった。

自分のような症状には、これに対して、整体・整骨・カイロプラクティックなどの伝統的な手技によって施療する一派があるが、以前、整形外科では治らなかった腱鞘炎のような症状で整体院にかかり、そう長期間を要せず快癒したことがあった。
もう8年前になるが、「体系ダイレクトマーケティング」を上梓したとき、1年余の間猛烈に原稿書きに集中したため、右腕が肘を中心に肩から手首・指まで、痛いような、痺れるような、ダルいような感じになって、上がらなくなったときのことだ。

整形外科では必ずしも腱鞘炎と言われたわけではなかったが、対症療法を繰り返すばかりで治癒の度合いがはかばかしくなく悩んでいたところに、良い整骨院があると紹介してくれた方が近所にいて、物は試しと通い始めた。
その整骨院では、そのときの自分の症状を“俗に言うハネムーン・エルボーですね”と診立てたが、そんな心当たりはないので“冗談でしょう”と言ったら、正式には“撓骨神経麻痺”と言い新婚さんの腕枕以外の原因でもなることがあると聞いて納得。

余談はさておき、そのときは10回余り通院してほぼ軽快した(自己判断だったが)ので、保険が利かなくてけっこう高額なものにはついたが、そこの治療法は確かに効果のあるものだと信頼するに至った。
で、今回も、ずいぶん久しぶりだったが、迷わずまた訪れた次第。8年も経ったのでスタッフの顔ぶれはさすがにほとんど変わっていたが、相変らず、整形外科ではなかなか治癒成果が得られないという、悩める老若男女で賑わっていた。

今回の自分の症状に対する診立てはこうだった。考えられる原因は、パソコン作業による身体の特定部位の反復的過剰使用による勤続疲労ということもさりながら、より根本的な問題は、その際の不正な一定姿勢の継続による筋や筋膜の過緊張だ...と。
その緊張が限界を超えたために、本来備わっていたはずの身体バランス調整機能が崩れ、今回のような症状として発現したのだということで、要は、パソコン作業の量よりもむしろその姿勢とペースに問題があったということらしかった。

身体的緊張感とバランス回復機能という点では、やはり、60歳台だった8年前とくらべて衰えは隠すべくもない状態になってしまっており、この冬の寒さとここに来ての花冷えが、それに輪をかけたということになるようだった。
度重なる入院・手術も無事にやり過ごし、風邪もひかず元気いぱいに過ごしているつもりだったが、意外なところに伏兵がいて、いまさらながら、無理はできぬと自分の齢を思い知らされた。

今度のことではまだ2回しか通院していないが、“健骨美勢”(正しい骨格、良い姿勢)を実現するというこの治療院の“身体調整”という手技は、確かに効き目が顕著で、早くも、ずいぶん腕や肩の固さが取れ、軽く動かせるようになった。
自分でも、同じ姿勢を長く続けないようにして、合間合間に“肩回し運動――両肘を水平に上げ、指先を肩に付けて、息を吐きながら前後に回す”や“手指反らし体操”をすると良いと教わったので励行しているが、これは効く。気持が良くなる。

テナわけで、最近は寒さがぶり返すしそのせいか首や肩が凝るしで、正直のところ、外面はともかく内心はいささか憂鬱だったが、それを察してどうか家内が用意してくれた昨晩の食事でいっぺんに機嫌が治った。

筍ご飯木の芽添え旬のタケノコの炊き込みご飯に、我が家の庭で摘んだ木の芽を添えて、味噌汁もタケノコ。“筍づくし”は吾が輩の大好物だ。

花冷えのころには、たまに嬉しいこともある。

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