O to O(オートゥオー)って何だ?
1年あまり前に、ここで、ネットショッピングにハマっていると告白したことがあった。が、その後はだいぶペースも落ち着いて、いまは、以前とは少し違ったオンラインショッピングサイトの利用し方もしている。
欲しいものがあったらサイト上で即オーダーし宅配されるのを待つという買い方だけではなくて、情報収集のためにサイトをチェックし、目ぼしいモノを見つけたら実店舗へ足を運んで確認した上で購入するという買い方もするようになったのだ。
もっともこれが可能になるのは、広くチェーンストア展開をしていて尚且つオンラインストアも運営しており、基本的に両チャネルの間で扱い商品に違いがないという業態の企業に限られるが、近ごろはそういう営業方針のところがけっこう増えてきた。
さらにその中には、オンラインで注文しておいて店舗で受け取るとか、店舗に在庫が無くてもオンラインの方から取り寄せるとかすることができるというサービスを提供するところも出てきて、買う方は大いに便利になった。
自分も昔から著作や講演などで、折りに触れては、こういうどちらの買い方も可能になるようにすることが客の満足度をよりアップし、ひいてはそれが企業のビジネス成果の最大化に結びつくと説いてきたから、この現状は我が意を得たりというところ。
だがこれは、何も自分のオリジナル発想ではないし、米国の小売業などは(出発が実店舗であってもネットストアであっても)とうの昔から実践していたこと。消費者・顧客の便宜を考えれば、当然、そうする方が良いはずという結論に自然に達したからである。
実際、客の立場からすると、どちらのチャネルにも満足するところと不満なところがあり、どちらか一方だけしか利用できない、あるいは相互に融通し合えない小売業者よりも、そうではないフレキシブルな業者の方に、どうしても目が行くし足も向く。
自分の限られた経験だけからの話で恐縮だが、これまでネットショッピングで利用してきたいくつかのカジュアルウエア小売チェーン(UQ、GP、RO、UAなど)の中で考えてみても、いまは、そういう融通の利いたサービスを提供するROを重用する傾向にある。
何れも、ブランドとしての商品特性はそれぞれだが、業態はほぼ同じだし、ネット通販か実店舗のどちらか好きなチャネルを選んで買う、ネットで調べ買うのは店でということができるところも共通しているが、ROだけは、もう一歩進んだサービスが受けられる。
ネットショッピングは日時指定で宅配してくれるから手間なしのようではあるけれど、半面、その時間には在宅していなければならないという拘束もあり、商品の受け取りは自分の都合の良いときに店でということも可能ならばさらに便利で、ROではこれができる。
その上ROでは、店頭で取り置いてもらった現物を確かめたとき、もし予想外で気に入らなかったらキャンセルも可能であり、実際に商品を引き取らない限り、支払い義務も発生しない。注文の際にあらかじめカードなどで代金決済をしておく必要がないのだ。
また、ネットで調べて着目し店で確認購入しようと足を運んだとき、そこに在庫がなかったら取り寄せてもらうこともできるし、ネットではセール特価になっているアイテムが店頭で正価のままになっていた場合は、ネット価格にアジャストしてももらえる。
ということで自分も、相変らずチョコチョコといろいろなものを買っていると家内の顰蹙を買わないように、このサービスを上手く利用して、あまり目立たないようにショッピングを楽しんでいるが、真面目な話、小売業は本来、これでなければと思っている。
つまり、昔は“クリック・アンド・モルタル”などと言われいまではほとんど誰もがやっている“店販と通販のダブルチャネル化”ということだけに止まらない、チャネル間のいわば“相互乗り入れ”による“互恵・相乗効果”の創出が必要ということだ。
このことは、マーケティングをマクロに考えた場合ごく当たり前に“マルチチャネル・マーケティング”とか“マルチチャネル販売戦略”という言い方をされ、それなりに浸透したものと思っていたが、最近また別の言い方で、新たなスポットが当たってきたようだ。
それは、“O to O”(Online to Offline)という略語で表され、Weblio辞書によれば、“オンラインとオフラインの購買活動が連携し合う、またはオンラインでの活動が実店舗での購買に影響を及ぼすといった意味の用語”と定義づけられている。
自分がこのバズワードの存在を知ったのは、実は、ごく最近、何かマーケティング関連の目新しいブログネタはないかと、“2013年の広告・マーケティング戦略...”といったキーワードでウエブ上の情報を検索していた途上でだった。
それまで見逃していたが、2月4日のYAHOOニュースに“2013年広告・PR業界注目のキーワードは!?”という一項があって、業界誌「宣伝会議」の本年1月号で、2013年最も注目すべきキーワードとして“O to O”が選出されたと報じられていた。
近ごろは、経済誌は目を通すものの業界誌にはすっかりご無沙汰していたので、恥ずかしながらそれまで気がつかなかったのだが、調べてみるとそれ以前の2011年ごろにも、この用語に注目した記事が、日経新聞電子版や業界関係者のブログに載っていた。
さらにその出自を辿って米国のサイトも覗いてみると、どうやら遅くとも2010年にはすでに、この略語は使われ始めていて、もともとはLocal Commerce、Mobile Commerceの観点から、ネットから実店舗への送客戦略として唱えられ出したらしいこともわかった。
スマホの普及で、Eコマースのモバイル部分が急速にメジャー化し、ソーシャルメディアなどをベースにした地域密着型情報発信が店舗送客に大きく寄与することがわかって、改めてオンラインとオフラインの密接な連携の重要性が認識されたからだったようだ。
確かにこれは、ある種のマルチチャネル戦略ではある。が、自分が認識しているようなマクロで双方向的なものではなくて、どちらかと言えばオンライン主導の単方向的なものであり、そのあたりのニュアンスが、O to Oの“to”に出ているような気がする。
タイミングを逃して実際に宣伝会議1月号の記事を読んでいないので、当たっていないかも知れないが、広告業界もこのO to Oに注目しているのは、多分、米国が起点となって日本にも着実に及んでいるこのトレンドに、大きな商機ありと見ているからなのだろう。
まあ、それはそれでいいが、こうなったらこのO to Oには、オンからオフだけではなくて、オフからオン、つまり店舗からネットへという流れも併せ持つようにして行かなければなるまい。そのようなバランスが実現されたとき、この戦略は完璧なものとなる。
聞くところによれば「楽天」の三木谷社長も、“O to O抜きでは楽天のビジネスモデルは完成しない”と言っているそうだが、自分が考えているのと同じような“双方向性を持ったヴァーチャル(ネット)とリアル(実店舗)の融合”のことを指しているのだろうか?
細かいことを言うと実は、O to Oという呼称のtoの単方向性が少し引っかかって、このような戦略はごく平凡に“マルチチャネル・マーケティング”と呼んだらいいのにと思っているのだが、実体が整って来さえすれればそれはどうでも良いかも知れない。
いまさら秘策・新策というほどでもなく、当然の基本策だが、楽天のようなオンライン・ベースの新興企業だけでなく、オフライン・ベースの伝統的な各企業も、固定観念を取り払ってぜひこの際、業績アップ・拡大のために、この戦略を取り入れてもらいたいものだ。
成功のための具体的施策? それは、企業主導という発想を切り替え顧客の立場になって考えれば、自ずと浮かんで来るはずだ。
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コメント
師匠がおっしゃる通り、わたしがこのバズワードを「o2o」と数値で表記するのは、「ダブル」であり「2乗」であるからだったりしますです。はい
投稿: tyama1965 | 2013年2月18日 (月) 15時07分