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2012年3月 5日 (月)

ポイントプログラムはSPかCRMか?

“ポイントカードはお持ちですか?”“ポイント会員になりませんか?”...と、いまはどこで買い物をしても、またサービスを受けても、ポイント、ポイント、ポイントだ。日本人の9割以上は何らかのポイントを保有していると言われるが、自分自身のことを考えてみても、クレジットカード、エアライン、高速道、携帯電話、百貨店・スーパーなどの小売チェーン、家電量販店、ドラッグストア、オンラインショップ、そして銀行、書店、ブティック、レストランと、いつの間にかすっかりポイント漬けになっているのに気付く。
その中には、意識して会員になったものもあれば、結果としてそうなったことを知ったものもあり、それぞれに対する関心の程度はマチマチだが、積極的にどれかのポイントを貯めてどうにかしようというほどの意欲もないので成行きにまかせているうち、新たにゲットするそばから古いものが無効になって行く。大半のものについては、特に大きな期待を持ったりしているわけでもないので、それはそれでいいのだが、中には、ポイントの得失について節目々々にリマインドしてくれるものもいくつかあって、その都度、有難いような、だけど残念なような思いにさせられることがしばしばある。例えば...

ここ2~3年、清里の山荘へは年間に数えるほどしか行かなくなっているが、往復には中央道を使うので、毎年ある程度のETCポイントが貯まる。と言っても、節約のために通勤時間帯割引きなどを利用することが多いので、大した得点にはならない。けれども、折角換金できるものをムザムザと捨てるのももったいないから手続きをするわけだが、それで得られるものの割には、しなければならないことが面倒だし、どういうわけかいつも、あと少しだけ走り方が足りなかったために、換金できた分とあまり変わらないポイントを期限切れでムダにする結果になり、やれやれまたか...という思いにさせられる。
似たような思いをするのはETCの場合だけに限らない。ずいぶん長い間利用している国際クレジットカードは、プレミアムカードなので年会費を支払わなければならず、一定額以上使わないとそれがチャラにならないのだが、このところしばらく海外旅行に出ていないため国内での買い物だけでは消費が追いつかず、不本意なまま会費を徴収される破目になる年がある。この1年がそうだったが、さりとて会費を支払いたくないからと言って相当な額の不必要な追加出費をするのも本末転倒だしと、これも何となく割り切れぬ思いを抱いて、そろそろこのカードも辞めどきかなどと考えたりもする。

でも、このポイントプログラムというものには、必ずしも不満ばかりを抱いているわけではなくて、時にささやかな特典も享受して、意味を感じていることもある。最近はなくなったが以前は、貯めたエアラインのマイレージを航空運賃やホテル料金の支払いにずいぶん充当していたし、携帯電話の使用で貯まったポイントをバッテリーと交換したこともあれば、某プレミアム国際カードのポイントをチョッピリ気の利いた景品に交換したこともあった。小売チェーンやドラッグストアなどのポイントは、少額でも利用回数が多いだけにすぐに現金代りに使えるようになって便利だし、銀行のポイントも、ネットバンキングの手数料を省くことができて役に立った。
そんな限られた経験からも、確かにこの制度は、あって悪いものではないと実感するが、消費者としての立場からは、ポイントのつくことが購買活動における何にも優るメリットで、いまのような仕組みが十分満足に値するものであるかと問われれば、何のためらいもなくイエスとは答えられない。躊躇のもとの第一は、前記でフラストレーションを打ち明けたように、有効期限の短さだ。そう設定しておかなければ引当金がどんどん嵩んで行ってしまうという理屈はわかるが、貯めるそばから期限切れになって行くような有効期間の短いプログラムは、初めから積極的に利用しようという気が起きなくなる。

第二は、ポイントのつき方が“使用金額”のみに対応しているということ。それ自体は間違いではないし、顧客評価基準の一つを満たしてはいるから文句はつけられないが、それだけで済ましているところが引っかかる。つまり、もう一つの評価基準である“購入頻度”も、ポイント・ゲットに反映されて然るべきと思うのだ。本来ポイントプログラムは、リピーターづくりないしは顧客の囲い込みを目的として始まったはずだが、なのに、使用金額だけで利用頻度が考慮されていないというのはおかしい。そもそも、このプログラムの源流は“Frequent Shopper(多頻度購入者)Program”(略してFSP)だったはずだ。
現在のポイントプログラムは、事実上、購入の頻度にかかわらず会員なら誰にでも一律に適用される単なる割引還元制度で、“多頻度購入客こそ収益への貢献度が最も高い優良顧客”という証明済みの大原則に基づくFSPとは、似て非なるものになってしまっている。このレベルのプログラムは、顧客情報の取得を必要としないスタンプ・切手方式の“販売促進”手法として昔から存在しているが、本来あるべき姿の顧客ロイヤルティ形成のためのプログラムが、これと混同されてしまっているのだ。というよりも、“ポイントプログラム”というあいまいな概念の和製英語による呼び方がいけないのかも知れない。

紛らわしいからここでは、顧客情報の取得に基づくデジタル化されたプログラムの方をFSPと呼び、アナログによる単純な販促プログラムをスタンプ方式と呼んで区別するが、スタンプ方式は販促が目的だからいまのままで良いとしても、FSPの方はこのまま(実態として単なる販売促進)では、会員が最適なサービスを得られないばかりでなく、それを提供する企業の方としても、満足な優良顧客形成ができないということになるだろう。ポイントプログラムを取り入れている大半の企業が、これは販促の手法としてそれなりの効果を上げているのだからこのままでいいと言うなら、何をか言わんやだが...。
提案したいのは、一消費者としても一退役マーケターとしても、企業はこれを、「CRM」的見地から、もっと直接的に言えばポイントプログラムの本質であるはずの「ロイヤルティプログラム」という立ち位置から、見直すべきだということ。わざわざ会員の個人情報を獲得しておき、それをデータベースとして持ちながら、ほとんどの場合、プログラム利用の対価として提供されるサービスには、会員の要求・希望や利用実績(特に頻度)そして購買内容が反映されておらず、それらを踏まえていれば会員満足をより高めつつ収益も増大させられるであろう大きな可能性が開発されないままになっているからだ。

キーポイントは、“顧客情報分析”と“コミュニケーション”。機械的に会員の獲得ポイント・データの管理をしているだけではなくて、会員個人とその購買情報が結びついたデータを分析するところから、掘り起こすべき顧客満足と収益拡大の可能性が見えてくるし、アンケート調査をはじめ、キャンペーンや利用明細報告や商品情報など諸々の発信活動を行いそれに対する受け皿を設定するところから、思わぬ飛躍のヒントが得られる。こういった施策をとることによって、獲得し蓄積した会員情報は常時更新され、長期にわたる双方向の個別コミュニケーションが可能になって、会員はさらに活性化される。
見えてくる可能性、得られるヒントには、ポイントのより高い換金レートや倍率とか、高額な景品アイディアといった、金銭的欲求を刺激するだけの“特典”的なことばかりではなく、非会員には得られない優先権や優待サービスといった非金銭的で心理的な欲求を満たす“特権”的なものもある。カナダの調査会社Maritz Researchでは、前者を“ハード・ベネフィット”後者を“ソフトベネフィット”と呼んで、いわゆるポイントプログラムでは、ハードよりもむしろソフトを充実させることこそが重要だとしているが、これは十分、耳を傾けるに値する指摘ではないだろうか。

この見解は、VISAカードがスポンサーになってMaritz Research社が2011年12月~2012年1月に行った調査の報告書「Maritz insights: the loyalty report」として発行されており、同レポートにはその他にもきわめて示唆に富んだ内容が掲載されているので、興味のある方はぜひwww.maritzcanada.com.をビジットされることをお薦めしたい。

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