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2012年1月23日 (月)

拡大するネットショッピングのシニア市場

“近ごろ、ネットショッピングにハマって、要らないものまで買ってしまうお年寄りが増えているンですって”...と、ある日の朝食の後に、顔は笑っているが真面目な口調で、自分の目を見ながら家内が言った。ギクッ!...胸に手を当て...なくとも、思い当るところ大あり。昨年12月だけでも、バタバタッと3回、ネットショッピング・サイトでウエア類を注文し、晦日近くと新年早々にそれを受取っており、数日前も、図書館では予約者が多くて1年経っても借り出せる順番が回って来そうもない人気作品を、6冊まとめて購入したところだったので...。
これまで購入したことのある2~3のネットショップから1週間と間を置かず送られて来るメルマガを一読すると、3回に1回ぐらいは何かしら“あってもいいかな...” と思うものが見つかるので、言われれば確かにこのごろ、実際に必要なものを探して買おうとするついでに、いまでなくてもいいものまで買っているかも知れない。購入手続きは夜間ひとり書斎に籠っているときパソコンからひっそりと、品物の受取も時間帯指定をして一日の間のなるべく目立たないタイミングに...と気を遣いつつ。別にやましいことをしているわけではなし、そんなにコソコソすることもないのだが、常日頃これ以上持物を増やさないでくださいと言われている手前、チョッピリ後ろめたい気がして...。

自分のお小遣いの範囲内でささやかに遊んでいるようなもので、家計に影響を及ぼしたり、そのために家の中が散らかったりしているわけではないのだから、もっと堂々としていれば良いのだが、何となくそういう態度になってしまうのはどういうわけだろう?多分それは、オンラインコマース(消費者の側から言えばネットショッピング)における商品・サービスの年々着実な質的向上とそれを上手に利用することによる消費生活の合理化という新しい流れを、伝統的な買い物観の持ち主である家内に説明して自分のしていることを正当化しようとすると家庭内に要らぬ摩擦が生じるので、それを避けるために、姑息な生活の知恵を発揮しているだけのことなのかも知れない。
それにしても、このネットショッピングの普及スピードは目覚ましいようで、一向に伸びの衰えを見せず、5年前には総人口のわずか5%だったものが現在では40%前後にも達していると言われている。別の統計では、ネットショッピングの利用者は、全インターネットユーザー(全人口の推定約80%)の90%以上とも報告されているので、この数字のどちらをより信じどう読み解くかによっても見方は変わって来るだろうが、何れにしてもネットショッピングは、いまやかなりの浸透度で消費者の生活の中に定着しつつあると言っても、あながち言い過ぎにはならないのではないだろうか?

もっとも上記の数字は全年齢層の加重平均に基づくもので、60歳以上のシニア(要するに高齢者)層だけに焦点を絞ると、また違ったことが見えて来るようだ。さまざまなサンプルに対してさまざまな手法で行った基準の違うさまざまな調査データがあるので、どれか一つだけを取り上げて一概に断定的なことは言えないが、基本的にこれまでは、シニア層へのパソコン普及率は全年齢層合計のそれと比較するとかなり低く、したがってインターネットおよびネットショッピングの利用率も決して高いものではなかったのに、2010年までの3年間の推移を見るとそれが急速に伸びているということだけは、どのデータを通じても傾向として観て取ることができる。
ちなみに、総務省の「通信利用動向調査」によれば、60歳以上の年齢層のインターネット利用率は、この3年間で20.4%の伸びを見せているという(全年齢層合計のそれはわずか2.7%でしかないというのに)。また別の調査では前記のように、ネットショッピング利用者は全ネットユーザーの90%以上に達している(富士通総研「インターネットショッピング調査報告書」)とも言われているし、60歳以上のシニアだけでも7割近い人々が日常的にオンラインショッピングを利用している(NTT・gooリサーチ「シニアの情報端末保有情況に関する調査」)というデータもある。

これを以ってクリティカルマスと断じ、大騒ぎするのはまだまだ時期尚早だろうが、少なくともインターネット、もっと言えばネットショッピングの世界で、シニア市場というものが着実に拡大しつつあり、無視し得ない質とサイズに進化しつつあるということは、傾向として間違いないと言えるだろう。事実(と無理にこじつけるわけではないけれども)、十数年前から始めて、ポツリポツリとしか利用していなかったものが、環境や生活スタイルの変化による必要に迫られてというところはあるものの、近年急に頻度が増した自分のネットショッピング歴も、この流れに重なるところがある。
頻度増の第一のキッカケは、家の建て替えのため清里の山荘で半年暮らしたことだった。何しろ、仕事で東京へ出るための幹線鉄道や高速バスの券売所へ出るのに車でも15~20分かかり、近くには大手銀行の支店も書店もないところ。そこでは、日常不可欠な乗車券の予約に、書籍の購入に、銀行の決済に、インターネットが絶大な力を発揮し、ネットショッピングにもすっかり慣れてしまった。第二のキッカケは、この3年間毎年入院・手術を繰り返し、退院しても何となく出無精になって、直接店舗で買い物を楽しむ機会がグンと減ってしまったこと。どうやらこれで自分は、娯楽と実益を兼ねて、よりディープにネットショッピングの世界にのめり込んだようだ。

と言っても、家族を心配させるようなレベルではまったくない。書籍はコンスタントに、CD・DVDはときどき購入するが、モノがモノだから大人買いすると言っても金額はタカが知れたもの。たまに雑貨・服飾品のようなものを探して買うことがあるが、それにしてもせいぜい1~2万円以内の特価品。これまで買ったものの中での唯一の高額品は6年前には10万円を超える価格だったノートパソコンで、最近たて続けに買ってしまった防寒用のアウターとインナーのウエア類は、まとめ買いした割には、1回平均5~6千円に過ぎない。これぐらいは可愛いものじゃあないか...というのが自分の言い分だが、でも、いま要らないものまで買い込むのは止めて...と、家内には釘を刺されている。
さて...そういう内輪話を書き連ねているだけではマーケターとして芸がないから、ここで、自分の場合のささやかなネットショッピング経験を、“なぜシニア層はネットショッピングにハマってしまうのか”、“どんなショッピング・サイトをどう見てどう使い分けているのか”、“何に満足し何に不満足なのか” などの切り口から自己分析をし、一見ミスマッチのようにも感じられる高齢者とネットの接点、アピールポイントなどを浮き彫りにしてみようかと思う。もちろん、個人的でまだ狭く浅い経験・観察がベースだから、結論としては偏向性があり、汎用的なものにはならないかも知れないが、何がしかのヒントにはなるだろうと思うので...。

自分がよく利用するショッピング・サイトは、「アマゾン」「楽天」「ユニクロ」そしてたまに「無印良品」「ヤフー」「ソニー」...など。最初の経験は「アマゾン」で、書店で探していたがどうしても見つからなかった本がそこで手に入り、これは重宝なものだと思った。だが、独自の画面レイアウトと組織的な導線設計には感心したものの、小うるさいレコメンデーションと問い合わせしにくさにはやや辟易し、と言ってそれ以上の満足も不満足も特になく、一言で“便利”というのが率直な感想。ここでの買い物が面白いとか楽しいとかいう感覚は持てなかった。今日まで最も長く付き合い、購入の回数も額も最も多いが、良くも悪くも、どこから見ても典型的な米国流を押し通しているサイトという印象だ。
ネットショッピングが面白くなったのは、「楽天」や「ユニクロ」で買い物をするようになってから。楽天のショップで買い物をしたのも、最初は探していた本だったが、次は欲しかった銘柄の腕時計を検索しているうちに偶然、楽天のサイトに行き当たり、そこでは同じ商品がさまざまな加盟ショップからさまざまなディスカウント価格で売りに出されていて、じっくり比較して決められるのが非常に楽しく合理的に感じられた。楽天からはそれまでにも、各種のメルマガが送られてきていたが、このとき以来“メンズファッション”のそれも来るようになり、嫌いではない方面ということもあってときどき眼を通すようになったら、ついにはウエアやガジェットなども買うところまで引き込まれた。

楽天のサイト・デザインは、店によっててんでんバラバラ、色彩感覚も全体にゴチャゴチャで好き嫌いはあるかも知れないが、不思議と、バーゲン会場に入り込んだようなある種の活気があって、ショッピングの楽しさを味わわせてくれているような感じがする。ある意味、きわめて日本的というかアジア的で、この感覚がこれから本格化させようとしているという海外市場で通用するのだろうかと懸念していたら、米国のサイトは日本のそれとはガラリと変わって、抑えた単純化した色調のスッキリしたものになっており、基本コンセプトは変わっていなかったが、だいぶ垢ぬけた印象だった。
アメリカンなウエブデザインと言えば、白バックに直線や囲みを多用して写真やコピーを整然と配列したレイアウトがショッピング・サイトの定番で、楽天と同じモール業のeBayやスーパーのウォルマートですらそのかたちに準拠しているが、アマゾンとは逆に日本から世界に進出した「ユニクロ」が、アマゾン同様、海外のサイトで本社(日本)流を貫いているのは面白い。ニューヨーク店などのサイトも、微細な点を除けば日本のものとまったく同じと言ってよく、楽天の姿勢とは対照的だ。ただこれは、偏狭なナショナリズムなどからではなくて、ウエブを起点としてウエブを軸にした発想・展開をして行くと当然にこうなるということを、同社自身が確認しての結果だということで、これは重要だ。

告白すると実は、自分がいまいちばんハマっているのは「ユニクロ」。新聞折り込みチラシは入るのに店が近くになくて気軽に足を運べず、やっと店に行っても混雑していたり在庫がなかったりで、ネットで買えないものかと社名で検索したら、エラく使い勝手のいいサイトだった。トップページこそチラシと似た感覚だったが、アマゾンなどよりもさらに体系的でわかり易いウエブデザインで、商品そのものについての説明、サイズやカラーのオプション、ユーザー・レビュー、在庫などの情報も至れり尽くせり、アチコチに飛びながら夢中になってそれらを見て、読んでいるうち、縦横無尽にサイト内をザッピングできている自分自身に、愉快感と満足感のようなものが湧いて来さえした。
基本的に決して高額でなく、お買い得情報も多いので、ツイ、本来いまでなくてもいいが買い置きしてもいいと、まとめ買いしてしまうのがこの店。それも、矢継ぎ早に送られて来るメルマガにシテやられる。手を変え品を変えたキャンペーン情報に、こんども何か良いものが見つかるのではないかと期待を持たせられるのだ。惹句や色彩感覚が楽天のようにドギツくないのも、緊張感と財布の紐を緩ませる要因になっている。ショッピング・サイトとしてほとんど不満はないが、唯一あるとすれば“送料”。5000円だか以上買わないと無料にならないが、これもまとめ買いさせる策戦のうちか...。

ということで、“なぜネットショッピングにハマるのか”と尋ねられれば、基本的には、シニアには時間と小金と好奇心はあるが対照的に体力と行動力がないから...ということにでもなろうか。正価よりも格安に買い物ができる、ポイントが貯まる、などというショッピングの醍醐味を、老いて初めて知ったということもあるかも知れない。“サイトの好み”という点では、「ユニクロ」のような系統立って整理され、それでいてメリハリの利いたウエブデザインがわかり易く好ましいと思っている。「楽天」のような止めどない作りには、やや疲れを覚えるし、「アマゾン」でさえそう感じるときがある。
“使い分け”ということでは必ずしもパターン化しているわけではないが、大勢としては、必要なものを決めて探すときはアマゾン、ウインドウショッピングやセール会場回りといった感覚で掘り出し物探しをするときは楽天、案内や広告に惹かれどちらの目的も持って買い物に行くときはユニクロ...といったところ。で、配送のスピード・質の向上などもあって、全体的に言えば“シニアのネットショッピングに対する満足度”は意外に高い。が、配送料の一律無料化ないしは低額化が実現されていないこと、問い合わせをしたいとき電話が使いにくいこと、などには不満がある。

だいぶ長々と書いてしまったが、ここからシニアとネットショッピングの接点、アピールポイントが読み取れる結果になっているだろうか?それはどうあれ、自分はこれからも気を遣いつつ、でもイソイソと、このささやかな楽しみを続けて行くに違いない。

いまアレコレ言っている家内だって、1~2年も経ったら、ケータイを使ってネットスーパーで買い物をしているかも知れない。

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