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2011年4月 4日 (月)

消費のすゝめ――日本復興のために、あえて...

悲しくとも辛くとも、時だけは容赦なく過ぎて行く。あれから早や3週間あまりが経ち、ようやく余震の規模と回数は少しずつ下火になってきたような気がするものの、原発事故収束の見通しは依然として不透明なまま。自分の身の周りでは、スーパーなどでの品不足は何故か相変らずだが、ガソリンスタンドの行列は見なくなり、計画停電もこのところ中止続きで、幾分生活が落ち着いてきた。しかし、被災地ではまだまだ行方不明者の捜索と避難民の苦しい生活が続いていることを思うと、申し訳ないような気持ちになる。
だが、そんな中でも、地元の小・中学校の卒業式がとり行われたり、高校野球春の選抜大会に被災地校が出場して精一杯の健闘を見せたり、仮設住宅建設の槌音が聞えてきたりと、徐々にではあるが、事態改善と復興に向けての歩みが始まったように見受けられる。

まことに感激に堪えないことに、日本中・世界中の有名・無名の人々とさまざまな組織からの義捐金や物資提供、そして100を超す国々からの人的・物的・技術的支援を受けて、いまや、当面の被災者救済のためのサポート体制は極めて充実したものになりつつあるように思える。が、この未曽有の大災害からの真の復興は、残念ながらそれだけでは実現できない。日本国民はこれから、さし当たってのことだけではなく何十年ものスパンにわたって、そして被災地のことだけではなく日本国全体のことを考えて、この問題に取り組んで行かなければならなくなるだろう。
今回失ったものはあまりにも大きかった。大地震・津波による各地の直接被害だけでなく、原発事故沈静・安全化のための途轍もない出費、またその事故による電力不足のための産業の停滞、そういう状況下での自粛ムードによる消費の落ち込みなど...これらを取り戻すのは容易なことではないだろう。被災者の救済、被災地や被災施設の復旧・再生には、長期にわたる莫大な出費が必要になる(政府試算では国の年間税収の半分にも当たる25兆円)と言われているが、これは、いかに世界中の人々や国々の友情や善意が厚くとも、それで補いきれるものではなく、罹災を免れた人々が、電力をできるだけ復興のための産業推進に回そうと計画停電に協力しても、それだけでは到底追いつかない。

では、どうしたら良いのだろうか?どんな分野で誰が何をなすべきなのか?政治は?企業は?消費者は?そしてメディアやマーケターは?...復興のためのグラウンドプランとロードマップは当然、国家が作成に着手しているはずだし、一般・経済ジャーナルおよび識者も続々と、さまざまな角度からその方向性を提言しつつある。自分もそれについての多少の意見は持っていなくもないが、そこまでの広い範囲にわたってこの問題を論ずることは自分の分には余るので、もとマーケターという己の身の程をわきまえた範囲内で、偏向かつ独断的ではあるが、復興への道筋を考えてみることにした。
さて、身も蓋もない言い方かも知れないけれども、先立つものは実質的にやはりお金ということになるのだろう。すなわち、強固な国家財源が存在しなければ、被災地の復興のみならず今後の国全体の維持・安定化もおぼつかなくなるのは自明の理だ。だからそれを確保するためには、国としての歳入を増やす必要が出てくるわけで、すでに政府内では、時限的増税や暫定的新税の創設、特別国債の発行などの案が提議・検討され始めているようだ。それらは止むを得ないことなのかも知れないが、マーケターの性としては、安易にそういう方向に走らずに、少しでもその分を、正攻法で減らせないものかと思いたくなる。

マーケターなら、既存の税制の下で、借金などはなるべくせずに、“知恵”を出すことによって大いに経済を振興し税収をアップしてそれに当てるべきと考える。幸い――と言っては語弊があるかもしれないが――今回の災害を免れた消費者がこの日本の国にはまだ沢山いるはずだから、そういう人々に、この際ぜひ、被災地への善意に加えて消費意欲も燃やしてもらい、企業はそれに応える商品やサービスを開発し市場に最大限にアピールして全力で販売を推進すれば、消費税収が増えるだけでなく企業の業績が上がって法人税収も増え、雇用と従業員に対する待遇も向上して個人の所得も増し、それによってまた所得税収も増える――という好循環がもたらされることになるのではないかと思うわけなのだ。
物事はそう簡単ではないのは百も承知だが、あえてそんなことを言い出したのには訳がある。震災後の企業は(特に大企業ほど)、その多大な奉仕・貢献には素直に敬意を表したいと思うものの、ビジネス活動に関しては、必要以上に消極的になり過ぎているのではないかと思うからだ。その傾向は、テレビや新聞などのマスメディア上の広告掲載状況からよく見てとれる。無論、ああいう大災害の発生時とその直後は、メディアのコンテンツが報道中心になるのは当然のことで、テレビのCMタイムが一斉にACジャパン(旧名・公共広告機構)のものに差し替えられ、新聞のラ・テ面と社会面が記事一色になったのは止むを得ないことであったが、その傾向が3週間以上を経過したいまでも後を引いているのは、企業本来の目的からしてそれでいいのかと、いささか気になってしまう。

この非常時に消費意欲を刺激して商業目的を追求することなど、日本人としての倫理感覚が許さない...と思うのは、自分自身にもよく理解できるのだが、国家経済の牽引役である大企業がそういう本来の活動をいつまでも抑制していては、国中が沈滞ムードに落ち込み、景気はなかなか回復しにくいと思う。極端な消費の減退は国の収入にマイナス影響を及ぼして復興予算の確保すら困難にし、根本的な国力の衰退を招きかねない。ためらいを感じるかも知れないが、消費者も被災地以外の人々は、こういうときだからこそ普段通りに生活し、精一杯働き、しっかりとお金を使って、経済を活性化させる必要があるのではないだろうか。それが結果的には、被災者への支援にもつながると思って...。
これは、単なる理想論や“風が吹けば桶屋が儲かる”式の屁理屈ではない。実際にそういう目的を満足させるに相応しいマーケティング手法があることは、経験豊かなマーケターなら知っているし、それを今回の大震災に関して企業のとるべきマーケティング戦略として提言している識者・実務家も、すでに何人か存在する。それは、「Cause-related Marketing」――大義(Cause)関連付けマーケティング――と呼ばれる、特定の商品やサービスの購入が社会貢献に結びつくことを訴求して販売促進を図るマーケティングの手法で、単なるチャリティ活動とは違い、企業のブランドイメージ・アップと収益拡大を最終目的とするものだが、実例を紹介すれば、アゝあれかと思い当る向きも少なくないはずだ。

パートナーとなる社会貢献団体との関わり合い方によっていくつかのかたちがあるが、最もポピュラーで広く採用され、成功事例も多いのが、「Purchase-triggered donations」(購買起因型寄付)と言われるもので、消費者の1回の購入や利用毎に支払い額の一部(一定金額またはパーセンテージ)がパートナー団体を通じて貢献目的のために寄付される仕組み。米国「アメリカンエキスプレス」の“自由の女神修復募金キャンペーン”がその元祖とされ、日本でも「ボルヴィック」の“マリ共和国井戸造り支援キャンペーン”などの例がよく知られ、今回の大震災に際しても「アマゾン」や「グルーポン」などが、この手法によるキャンペーンを展開している。
これは確かに、企業の持つ商品やサービスの特性と貢献目的がピッタリと合致した場合には、企業は社会的責任を果たしたと評価されつつなお収益の大幅アップとブランドイメージの向上まで望み得る、良いことづくめのマーケティング戦略だ。けれどもそれは、あくまでも期間的・商品的に限界が存在するプロモーション的な活動であり、今回のような途方もない規模と長丁場にわたる国家経済の振興に寄与するための企業のマーケティング活動は、それだけで十分というわけには行かない。そのためには、これまで普通にやってきたことを、これまで以上に質を高め、より量をアップして行わなければならない。

それには、特別な大義や手の混んだ戦術などはむしろ必要ではなく、シンプルに消費者が欲しくなるようなものを考え出し、買いたくなるように訴求するという、マーケターとクリエーターの“真の、基本的な力量”が要求されてくる。
また消費者もこの際はそれに対応して、倹約・貯蓄しているだけでなく、ノーマルな消費生活に復帰する必要がある。ローンまでして背伸びした浪費をするのは論外だが、自分の許容範囲内で好きなことに目一杯お金を使うのは、自分の人生を楽しくするだけでなく国の経済力強化に結びつき、その恩恵がまた自分に還元されてくると考えれば良いのだ。

お金は使えば生きてくる。かつて“消費は美徳なり”と言った人がいたが、その言のもとになったケインズの「有効需要の原理」は、いま改めて見直されても良いのかも知れない。

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コメント

今回の大地震で故郷がそれなりの被害を受けたとのことですが、それはとても辛いニュースですね。ついでながら、このところ連日の震度の高い地震が頻発して不安な毎日が続き、それとともに原発問題と放射性物質が大きな関心事となっています。

福島原発のレベル7で、人々の間でますます恐怖感や風評被害が拡大・増大している折に、非常に興味深いyoutube情報を入手しました。ご参考までにお知らせします。

ともかく昨今の新聞論調や不安をあおる学者たちとは全く正反対の論点からの、科学的な根拠に基づいた論理を展開、「福島原発事故の
医学的科学的真実」という講演で一般市民の不安解消に努めているようです。

サイトのURLは:
http://www.youtube.com/watch?

です。ともかく一度聞いてみてください。その勇気ある発言に傾聴の価値は十分あると思います。(もしすでにご存知でしたら、お見捨て置きください)<夏>

投稿: | 2011年4月13日 (水) 14時15分

すっかりご無沙汰しております。

今回の震災では、阪神・淡路や中越の頃にはまだ普及していなかったTwitterやmixi・Facebookを通じてデマを含めた情報爆発を実感しました。

結果、情報過多・情報過敏によって自粛というより委縮が拡がっているように感じてますが、雇用を下支えしている小売・サービスがこれ以上落ち込まないことを祈りつつ、自社サービスを通じて少しでも役立てるように取組んでみます。

投稿: 山本隆 | 2011年4月24日 (日) 15時51分

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