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2010年11月29日 (月)

病気になったら治すだけ

前回ここで予告していたように、ある病気で手術を受けて、先週半ばに予定通り退院した。開腹したわけではないので、別に体力がガタ落ちしたという意識はないが、腰椎へ半身麻酔注射をしたためらしく、頭を起こした姿勢でいると、枷を嵌められたようなかなりキツい頭・首・肩痛がし、吐き気を覚える。退院時にドクターから、この症状は1週間くらい続く可能性もあると聞いたときには、そりゃあいささか想定外だったと、憂鬱になった。
手術前は、自分としては電車・バスでの自力入・退院が十分可能だと思っていたほど元気で、図らずも家族全員が集まってくれたことが嬉しくてジョークを飛ばしながらの入院だったが、文字通り冗談じゃあなく、結果的に、入院はともかく退院は一人では明らかに無理だった。家内には結局4日間連続で病院に足を運んでもらい、忙しい仕事や家事を抱えた倅や娘たちにもすっかり世話をかけてしまった。

退院の当日はそうも行かないにしても、翌日からは普段とほとんど変わらぬ生活に戻れるものとばかり信じていたのだが、やはり入院・手術というものはそう甘くはなく、この分ではもうしばらく、寝たり起きたりの毎日を強いられ、各位に不義理をかこつことになるかも知れない。こうしているうちにも、後頭部・首筋・両肩の、吊るようで張るようなズキズキ痛に耐えられなくなり、思わず、ベッドに横たわらざるを得なくなる。
ところで、皆さんにご心配をかけ過ぎては...と思い、ごく一部の方にしか明かしていなかったが、実は自分の今回の病名は「前立腺ガン」。日本人の食生活の欧米化(肉・脂肪類摂取過多傾向)と共に近年急速に増加傾向にあり、中高年男性にとって今やそう珍しくもないと言われている病気で、彼のやんごとなき方も、マラソン・コメディアンや古希越えプロゴルファーも闘病中であるのは、つとに知られているところ。

自分の父親もそれで亡くなっているので、これまでも気にしていなかったわけではなく、ここ10年以上、他のガン検診と合わせて毎年定期的に血液検査(PSA-前立腺特異抗原-測定)を受けており、ずっと異常はなかったが、今春4月の検査ではそれが基準値を上回るという結果が出て精密検査を受けるように勧められ、近所の横浜総合病院で再血液検査と泌尿器科専門医による直腸診を受けることになった。
考えてみると確かに、用を足すのに時間がかかる、事後スッキリしない、などという症状は数年前からあり、3年前、家の建て替えで非常に多忙になった頃から、夜中に何度もトイレに起きるようになって、工事中で山荘に引きこもっていたときには寒い季節と重なったこともありそれが辛いと感ずるようになっていたが、それでもまだそういうことは齢のせいだろうと思っていて、ガンとは疑ってもみなかった。

しかし、やはりガンの疑い濃厚ということで、「針生検」(組織採取によるガン細胞有無の検査)のため6月初旬に1泊2日の検査入院をし、完全にガンであることが確認された。ために、続いて「MRI」(周辺臓器への浸潤を調べる画像検査)を同病院で、「骨シンチグラフィー」(全身の骨への転移を調べる画像検査)をその病院では設備がないため帝京大学溝の口病院で受け、7月の半ばに、転移・浸潤はない“限局ガン”であることが判明した。
よく、ガンを宣告されたときは大きなショックを受けるという話があるが、自分の場合、針生検の結果ガンだと言われても、どういうわけかショックは感じなかった。ピンと来なかったというのが正確な言い方かも知れない。痛いとか痒いとかいう自覚症状は何もないので、病気なら必要な処置をとり、治るものは治そうという気持ちにしかならなかった。だが、周辺・全身への浸潤や転移がない、いわゆる“早期ガン”の状態だと聞かされたときには、やはり、正直言ってホッとしたのは事実。

そうとわかり、次は治療法の選択となったわけだが、前立腺ガンにはいくつもの治療法があって、限局ガンの場合にはいっそう、その選択肢が多くなるという話だった。ただ、いまは専門化が進んでいるためか、ドクターが個人的に特定の治療法を指示・推薦することをしないようになっているらしく、自分の意思で選択決定するように言われ、その参考資料として、ドクター自身も座右に置いていたNHK出版「きょうの健康―前立腺肥大症・前立腺がん」という本を薦められた。
で、それを熟読し、自らもインターネットで検索して数多くの解説記事・体験談などに目を通した結果、前立腺ガンの治療法としては、大別して「全摘除手術」「放射線療法」「内分泌療法」の三つ(それに「待機療法」を加えて四つとする場合も)があって、どの治療法を選ぶかは、ガンの進行度や悪性度、さらに年齢などによっても異なることを知り、自分の場合は幸運にも、その何れも選択可能であることがわかった。

検討熟慮の末、自分が選んだのは「小線源療法」と呼ばれる、放射線療法の中の“組織内照射療法”。簡単に言うと、小さなカプセル状の線源を前立腺の中に埋め込み、内側から放射線を照射してガン細胞を死滅させる方法だ。日本では2003年に厚生省から認可されたばかりで、まだ治療機関もあまり多くはなく、前立腺ガン手術と言えば依然として全摘除が一般的だけれども、アメリカでは今は、この治療を受ける人の方が多くなっているという。
待機療法はあくまでも経過観察の一環であり、内分泌療法が進行度・悪性度の高いガンに対する抑制効果を期待する、どちらかと言えば消極的治療法であるのに対し、全摘除手術と放射線療法は根治を目的とする積極的治療法で、中でも小線源療法は、同じ放射線療法でも“外照射療法”(週5回x7週間継続通院)とくらべて拘束期間が極端に短く(3泊4日入院)また後遺症を起こす可能性も極めて低くて、完治率は全摘除手術(2~3週間入院)とくらべても遜色なく、かつ全身的な侵襲(身体の負担)も小さく、治療後のQOL(生活の質)を良好に保つことのできる可能性が最も高いとされているのが理由だった。

と言っても実際には、文献資料だけを鵜呑みにして簡単スムーズに決定したわけではなく、家族やこの病気を体験した友人などにも相談して、さんざん考えた末にそうした。そして病院選びにもさまざまな紆余曲折を経て、信頼するに足る小線源治療の実績を持っていることを大前提としつつ、事前の検査や事後の定期検診のための通院が比較的楽にできるという点も重視し、東京都目黒区の「国立病院機構東京医療センター」に決めた。
この病院を最初に訪れたのは8月の初め、疑いが発生した春からすでに3ヵ月あまり経ち、いつの間にか本格的な夏になっていたが、入院・手術はそこからさらに110日先の、晩秋11月下旬ということになった。毎日2人ずつの治療に順番待ちしている患者が、この病院だけでもそれほどいるということで、この治療法の希望者の多さに改めて驚かされた。

手術自体は、入院の翌日午後に行われたが、下半身麻酔なので意識は明確なまま何の痛みもなく、2時間ほどで終わった。その1ヵ月半前の準備的検診の際に線源の埋め込み位置や本数の算定のため前立腺に超音波を当てて作成した精密な3次元画像と留置計画に基づいて、複数のスタッフにより患部に“シード”と呼ばれる密封小線源を“アプリケーター”という専用の装置で挿入して行く作業で、“aの5”とか“eの3”...とかいう、埋め込み位置を示すらしい指示の声が聞えるだけで音波的衝撃も感じられず、静かなものだった。
1本のシードは4.5ミリx0.8ミリのチタン製カプセルで、それをガンの大きさによって50本~100本埋め込むのだそうだが、自分の場合は74本と聞かされ、結構な本数が腹中に入ったのを知った。でも、事後特に何も違和感はない。

さて、“時間は最良の医師”ともいうように、頭痛もあとわずかの我慢だろうし、吐き気も日一日と治まってきている気がする。次の訪院は12月の中旬だが、そのころには自分もすっかり、もとの調子をとり戻しているに違いない。後は2~3ヵ月おきの定期検診になるらしいが、月を追ってPSA値が下がって行くのが楽しみだ。
今回はここで、あえて自分の病気治療経験を晒したが、決してブログのネタ切れのためではない。男性だけの問題ながら、自分と同じか近い年代の方々の健康管理上の参考になればと思ってのこと。少しでも役に立ったら幸いだ。

とりあえず手術・退院直後の状況報告だけになってしまったが、次回からはまた、あれこれ気ままなテーマでお目にかかりたいと思っている。

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