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2010年3月29日 (月)

いまごろ初めて赤坂Sacas

赤坂にオフィスと居を構えるH君に会いに行ってきた。ビジネスの現場にタッチすることがほとんどなくなり、ナマの情報にリアルタイムで接する機会がすっかり減って、ともすればメディア経由のニュースだけしか目や耳に入って来なくなってしまっている身には、ときどき彼のような第一線で活躍中の人たちから、最近のビジネス事情や世の中のトレンドを聞いておくことが必要なのだ。
彼と彼のスタッフN君には、自分の弱いIT面でさんざんサポートしてもらっており、2~3ヵ月に一度は顔を合わせてはいるのだが、彼が仕事でこちらの方へ出てくるときにあざみ野駅近辺で会ったり、自分が都心まで出向く途中に渋谷で待ち合わせたりということが多く、赤坂まで足を延ばしたのは久し振りのこと。地下鉄で通過はしょっちゅうしているのに、気がついてみたら、もう3年近く赤坂の街を歩いていなかった。

お天気が良かったら桜並木のある通りをブラついて、ランチはそのあとでということにしていたが、その日は生憎の冷たい雨。そんな中を散歩しても仕方がないと、H君が地下鉄出口まで迎えに来て、すぐそばの「マロン」というカフェに案内してくれた。彼の考えでは、散策後まず鮨屋か蕎麦屋で腹ごしらえをして、その後でコーヒーを飲みにその店に繰りこむ手筈だったようだが、サンドイッチなどもあると聞いたので、雨の中わざわざ歩き回ることもないからそこだけで済ませようと、自分が希望した。
その店のマスターはパリでしばらく修業していたとかで、他店にはない独特のブレンドのコーヒーを出し、フランスパンのサンドイッチもなかなかイケるということだったので、最近とみに、そういうカジュアルな組み合わせの軽めのランチの方がよくなっていた自分には、願ったり叶ったりだった。H君もすっかり常連になっているらしかったが、確かに彼がいう通りパンもコーヒーも満足できる味わいで、自分が頼んだミネストローネ風の骨付きチキン入り野菜スープも、なかなかのものだった。

TBS 山王下から乃木坂に抜ける通称“赤坂通り”に面したその店のガラス窓越しに見える彩り豊かな街並みと、それを背景に歩道を行き交う人々の姿は、郊外のユックリと時間が経過するような街の風景をいつの間にか見慣れてしまった自分には、何か気ぜわしく感じられたが、同時に、若いころの自分が立っていていた舞台をいまは観客として眺めているような感覚にもおそわれて、奇妙な懐かしさも感じた。
ちょうどランチタイムでもあったため、どんどんグループ客が入って来たが、みんな、いかにも業界人という空気を漂わせている連中ばかり。よく考えたらそれもその筈で、道をはさんだ北側の大きなビルはテレビ局のTBSだったし、少し離れたその東側は、大手広告代理店の博報堂グループが入居しているオフィスビルだった。かつて自分が昼に夜に出没していた(もちろん仕事で!)ころの赤坂は、“和”と“アジア”と“ラテン”がモザイクになった、銀座とも新宿とも渋谷とも六本木とも違うエスニックな街だったが、大規模再開発された一角が誕生したいまでは、お台場や汐留や六本木ヒルズなどと共通する雰囲気を持った、ビジネス街の様相も見せ始めたようだ。

昼食の間もしょっちゅうケータイに電話がかかってくる多忙なH君と、気ままなペースで好きな仕事しかしていない自分の話は、噛み合わないようで噛み合い、アッチに飛びこっちに飛んだ。彼の会社の景気、最近の仕事内容、クライアントの要望の変化、情報環境が激変したこの時代の広告代理店の動向と業界団体の現況、そしてやはり中心話題は、ダイレクトマーケティングとインターネットのこと。彼自身も彼の会社もそこに徹していて、それ故に存在価値を発揮しており、そのうちいつか大化けするのではないかと楽しみだ。
仕事の他に、落語・食べ歩き・見て歩きと、好奇心旺盛で活動的な彼は、ブログもそれに応じて幾つも書き分けているが、いまハマっているのはTwitter(これも仕事がらみと個人用とで2つある)で、自分にも、“まずはやってみることですョ”と盛んに薦める。これを自からやらずしてソーシャルメディア・マーケティングを論じることはできないだろうから、何だかよくわからないけれどもやってみるかと思ってはいるのだが、ケータイを自在に操れるわけでもないのにこれを始めたら、パソコンに向かう時間がまた増えて負担になるような気がし、イザというところで二の足を踏んでいる。

赤坂Bizタワー さて、忙しいH君と別れてからは、何となくそのまま地下へ降り、気がつくと千代田線赤坂駅の改札口の前まで来ていたが、よく考えたらまだ時間は早いし、折角だから最近の赤坂はどんなことになっているのか観察して行こうかと思い直した。そう言えば、この辺りの地上は「赤坂Sacas」とかなんとか呼ぶようになったと話には聞いていたが、恥ずかしながらまだ一度も実際に来たことはなかった。
昔はなかった(と思う)改札口正面の大きな昇り口からエスカレーターで上がると、そこもその上のフロアも、ショッピング&ダイニング・モール。どこかで見たような気がするレイアウトだったが、オフィス・エリアと商業施設エリアを複合したビルを設計すると多分、最大公約数的にはこういうことになってしまうのだろうと独り合点。「赤坂Bizタワー」と命名されたその超高層ビルの1階ロビーは博報堂の受付になっていたが、そこにも、何となく既視感があった。自分が毎年広告賞選考のために定期的に足を運んでいる汐留の「電通」のそれによく似ていると感じたからだと思う。

中にいる間は、ここが赤坂とはいまひとつピンと来なかったが、“一ツ木通り”に出てみてやっと昔を思い出した。あのころは、昼はわざわざ竹橋のオフィスから焼肉を食べにこの辺まで出てきたり、夜はこの場所にあったTBS旧・旧社屋地下のフレンチ・レストラン(店名は忘れてしまったが)で商談を兼ねた食事をしては、遅くまで店を開けていた「コージー・コーナー」に寄って家族の土産にケーキを買い求めたり、さらにたまには、飲めもしないのに付き合いでバーにも立ち寄ったりと、よく食べ、元気に働き、そしてチョッピリ息抜きもしていた。
TBSの本館社屋が一ツ木通りから少し奥まった丘の上に移動し、千代田線が全線開通するまでは、どちらかと言えば銀座線の見附から歩いてくる一帯が赤坂の中心で、乃木坂へ抜ける赤坂通りに面した辺りはさほど繁華とは言えなかったように記憶している。いまでこそ「Sacas坂」とかいう洒落た風な名前で呼ばれ街路樹が並びきれいに整備されている坂道も、当時は、旧社屋本館やスタジオとか倉庫の間を抜けて駐車場に向かう、簡易コンクリート舗装の無名・無機質な坂道でしかなかった。

そのSacas坂をいま下から見遥かすと、丘の上には、辺りの高層ビル群にあまりそぐわない形の体育館かイベントホールのような建物が見えた。後で調べたらあれが、公演広告などで名前だけは聞いていたミュージカル劇場「赤坂Act シアター」とライブハウス「赤坂Blitz」だったと知ったが、昔とはまるで変ってしまった坂の上の景色には、茫然とするよりも、むしろ新奇さを感じさせられた。
3月も下旬、彼岸も過ぎたというのに、降りしきる冷たい雨で、折角開花し始めた「TBS放送センター」ビル前の広場(「Sacas広場」というらしい)の桜は3分咲きのまま、まだまだ春の彩りには程遠かった。この日は、晴れていれば赤坂桜廻りと洒落込んでいたはずのところ、気まぐれ陽気のためそれが叶わなかったが、商店街の路地裏の桜がカフェの窓からチラリと見えたし、行き帰りの車窓からも沿道の桜並木が淡いピンクに色づき始めたのがわかって、この雨に打たれながらもジッと耐えている風情のここの桜と合わせ、今年最初の花見は、一先ずこれでよしとしておくことにした。

去年の夏の入院・手術以来、やや体力がダウンし、すっかり出無精になってしまっていたが、丸の内や大手町とはもちろん西新宿や六本木とも違うビジネス・エリアに知らぬ間になっていたこの街を久し振りに訪れて、何だかチョッピリ刺激を受け、気分が高揚した。

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