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2009年12月21日 (月)

いまクーポンから目が離せない

Xmas 今年もすっかり押し迫ったが、経済状況が好転しそうな兆しは一向に見えてこない。年が明けてから2番底もあり得るなどとも言われており、公私にわたってまことに心配なことだ。自分個人は現役を退いてすでに久しいので、蒙るものは最小限で済んでいるが、日本の経済を前線でまた後方で支えている企業も個人も、いまは本当に大変だと思う。
一昨年あたりまではなかなか華やかだったご近所の家々のクリスマス・デコレーションも、今年はグッと控えめ。我が家も小さな子がいるわけでなし、ひっそりと慎ましく、家内の手作りリースを玄関ドアに掛けているだけだ。

良くも悪くも景気の影響がさほどストレートには及んで来ない自分たちのような立場の者にも、そんな世相から自然発生した節約マインドは、無意識のうちに深く浸み込んでしまっている。
家内がデパートから帰って来て、チョッと素敵なコートがあったと言っていたので、気に入ったのならすぐに買えば...と言うと、セールにならなければ買う気がしないという。これまでも毎年そう言っては買いっぱぐれて、後で悔しがっていたのだが、こういう時代には、むしろそういう感覚こそ必要なのかも知れない。

そう言えば、少し前に読んだデジタル版「ニューヨークタイムズ」に、この出口の見えない不景気にはアメリカでも、たとえ懐具合に余裕があっても高額な買い物をするのは罪悪的という気風が蔓延し、比較的裕福な階層の人々の中にも質素に暮らす考え方が根付いているとの、ペンシルバニア大学のマーケティング学者の談話が載っていた。
米国内最大の小売チェーンでさえ2ケタの率の売上減を食い止められない、そんな市場の状況に対応するように、広告のキャンペーン・コンセプトも、従来の“消費誘惑型”は影を潜め、消費者心理に合わせた“実利提供型”へと大きく転換している。

それを消費者の気持ちとして言い表すと、“誘惑よさようなら、クーポンよこんにちは”ということになるだろうか。日本ではまだそれほどでもないようだがアメリカでは、この景気の低迷が始まって以来、多くのブランドや小売りチェーンが何とかして消費者の購買意欲をかきたてようと、“クーポン”を多用するようになっている。
言わずと知れた、広告・集客・販売促進を目的として代金割引や景品進呈といった特典提供のために配布する切り取り式の印刷小片のことで、それを使用するマーケティング手法は“クーポニング”と呼ばれている。

最近の「シカゴトリビューン」や「アドバタイジングエイジ」に掲載されていた、アメリカの場合の話だが、クーポンは発祥が100余年前、19世紀末にさかのぼり、例の“大恐慌”の時代を通じてその効力を証明し、1950~60年代にブームを迎えて1992年に79億枚という償還量でピークに達した。
以後は2006年の26億枚までジリジリと下降線を辿り、昨年後半まではそのまま横這いだったが、最終4半期からは再び上昇に転じ、償還枚数は月平均20%以上の率で伸び続けて、今年度の合計償還量は32億枚に達すると見られ、その勢いは不況を脱出してからも衰えることはないだろうと予測されている。

それ以前と以後とで何が違うのかと言えば、答えははっきりしている。パソコン、ケータイをプラットホームとする“デジタル化”、“モバイル化”という、新しいメディア環境の出現で、クーポンに関する情報の入手と取出・利用の機会が格段に拡大したのだ。
本来クーポンは、新聞・雑誌広告中に刷り込まれるスタイルから始まって、それ専門のフリーペーパーにまで発展し、折り込み・投げ込みチラシですっかりポピュラーになり、ときにダイレクトメール同封のかたちも見られる、印刷メディアに依拠する手法だったが、近年ではむしろ、“デジタル・クーポン”が注目を浴びるようになった。

すなわち、ウエブサイトからプリントして、あるいはケータイに保存して店頭で示す、“オンライン・クーポン”とか“ネット・クーポン”とか“モバイル・クーポン”と呼ばれるものがそれで、これらデジタル・クーポンの利用は、景気の減速に反比例して、過去1年間で爆発的に伸びている。
事実、インターネット上では、クーポン専門サイトは求人サイトに次いで最もよくビジットされるサイトとして知られ、今年、「ヤフー」における“クーポン”というキーワードでの検索結果は経済関連項目検索ランキングの第1位になっており、「グーグル」のクーポン掲載ページの検索件数は昨年の倍になったという。

クーポンといえば長年、シリアルや洗剤など日用消費財のための、メーカー主導の販売促進手法と相場が決まっていたが、いまはだいぶ様相が変わってきている。
小売業者主導であらゆる商品分野にわたって利用されているのはネット上を見れば一目瞭然だし、これまではイメージがどうのこうのと言っていた自動車や金融サービスや高級アパレルブランドまでもがこの流れを無視し得なくなり、間接的な欲求誘引から直接的な購買喚起へと、広告アプローチのリメークが行われている。

またクーポンは、もともと時限的・短期的な販売促進の機能が評価されて、新商品への注目・認知度アップのために有効な施策とされていたはずだったが、どうやらそれだけのものではないということも証明されつつあるようだ。
米国「コムスコア」社が成人インターネット・ユーザーに対して行ったオンライン・クーポン利用状況調査によれば、一度クーポンを利用して買い物をした人の4分の3がそのクーポンをオファーし続ける店に再来店するといい、クーポンは新しいブランドへの集客に効果があるだけでなく、ブランドへのロイヤルティ形成にも貢献することがわかった。

してみるとこれからのマーケティングでより大きな機会にチャレンジするためには、“クーポニング”という戦略を通して、ブランドに対する“ロイヤルティ”と“価格”という2つの要素のクロス・ポイントを追求する必要があるということになる。
そしてそのチャレンジにおけるキーワードは“モバイル”と“ソーシャルネットワーキング”。ケータイはいつでもどこでも個人の身辺に存在するから、手軽に欲しいオファーを見つけ、保存し、使うためのツールになり、ソーシャルサイトがその情報と経験に対する信頼と共感を蓄積・拡大して行く役割を果たすことになるからだ。

と、わざわざそんな講釈をするまでもなく、実際自分たちの生活の中にも自然にクーポンは入り込んでいる。夫婦2人だけの暮らしだから時には簡単な食べ方をしようと、口に合いそうなもののクーポンが発行されれば、バーガーショップのMでテイクアウトすることもあれば、中華ファミレスのBでデザートをオーダーすることもある。
年に1~2度しか行かないが、家内のところには小淵沢のアウトレット内にある米国の革製品ブランドCの店から、シーズン毎にディスカウントクーポン同封のダイレクトメールが送られて来るので、ツイ、2回に1回くらいは足を運ぶ。

というよりも、昔から、家内とアメリカ本土やハワイへ行ったときにはいつも、買い物もレジャーもフリーペーパーでつぶさに調べて、むしろ積極的にクーポンを利用しているので、そうすることには何の抵抗もない。
家内が言う通りこんな時代には、消費者個人としては正価で物を買うのが何だかバカバカしくさえなるが、マーケターとしては、単なる値引き競争のあげくデフレ・スパイラルに陥らないためにも、日本のメーカーや小売・サービス業者は、継続販売とブランド・ロイヤルティにも繋がるクーポニング戦略にもっと力を入れるべきだと思う。

クーポニングは、償還量で見る限りいまのところ“新聞折り込み”のかたちが主流のようだが、“インターネット”特に“モバイル”が急速にそれを追い上げていると聞く。
クーポンは、時代に沿って“次世代化”した。不況時のみならず、新時代のマーケティング傾向として、これからも目が離せない。

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