« 単純な気分転換 | トップページ | 深け行く秋 »

2009年10月19日 (月)

Eメール・マーケティングを考える

まだ現役だったころからの習慣で、毎朝・昼・晩と、コンピューターを開く度にメールボックスをチェックする。とうに第一線から引退しているとは言え、マイペースながら仕事はしているので、購読しているニューズレター上の海外ビジネス情報には日々目を通しておく必要があるし、友人・知人や新旧の仕事上の関係先から思いがけない便りが入っていることもあるからだ。
でも、相変らずの迷惑メール=スパムの多さにはウンザリとさせられる。無論、スパムフィルターはインストールしてあり、大半のものは自動的に識別されそちらのフォルダーに隔離されるのだが、全体の数があまりにも多いときは数件が残ってしまい、自らの手で一つ一つ移さなければならない。これがたまにではなく毎日のことだから嫌気がさす。

もう何年も続けていて、そんなEメールの配信状況にもいささか麻痺気味になっていたが、このところ仕事上の課題としてEメール・マーケティングの現状と可能性を見直す必要が出てきて、改めてそれではいけないと感じ、新旧各方面の資料を見直すと同時に、自分自身の日常についての簡単なフィールドワークも試みることにした。
調査会社などの分析結果として世間で一般的に言われていることが実際当てはまるのかどうかを確かめるために、自らを観測定点として、最近1ヵ月あまりの間に配信されてきたさまざまなEメールの件数を、発信者タイプ別、目的別、内容・形式別などに毎日集計し、そこから何らかの傾向が読み取れないものかと分析してみたのだ。

誰かに仕事として頼まれて約束したわけでもなかったので、途中で何度もサボりたくなったが、35日間、我慢して観測を続けた。結果、メールの総受信件数は2,522。1日平均72件で、多いときで100件近く、少ないときでも60件前後あった。
そのうち純個人的なメールは14件(0.56%)、自分が顧客・会員として配信を許諾しているメルマガなど企業からのメールが107件(4.24%)で、あとの2,401件(95.20%)はすべてスパムだった。一般的に個人が受信するEメール中のスパムの割合は90パーセント超と言われているが、自分のような退役ビジネスマンは交友範囲や社会的接触分野も狭くなっているから、相対的にスパムの割合が高くなっているのかも知れない。

スパムフォルダーに自動隔離されるメールは、出会い系、会員制アダルトサイト、闇金融・投資、精力増強剤、模造腕時計、オンラインカジノ、学位取得など、お定まりのものばかりのはずだから、毎日サッサとすべてを一括削除してしまってもいいようなものだが、ときに、必ずしもスパムではないものも混じっていることがあるので悩ましい。
受取りを許諾してはいるが配信頻度の高過ぎるメルマガ、ちゃんとした企業・個人からの信書だが初コンタクトで見慣れないアドレスのものなどがそれで、メルマガはともかく信書の場合は、そのまま見過ごし削除してしまうと失礼になる場合もあるため、一たん隔離されたスパムメールを、一応件名だけ全件再度目で追い、該当するものがあれば拾い上げて非スパムに指定し直すことになる。これもかなり煩わしい作業だ。

自分の場合、仕事の参考にもなると思ってメルマガの配信を許諾しているのは、かつて、または進行形で、オンラインで商品を購入したり、サービスを利用したり、契約・取引をしたり、問い合わせをしたり...という何らかの接触があり関係が生じたことで自分の名前が会員・顧客または見込客として登録されている企業。
マルチチャネル・マーチャント(店舗・通販併行型小売業者)または通販専門のオンラインショップ、パソコンのハードおよびソフト・メーカー、クレジットやマイレッジやETCなどのカード会社、旅行代理店や交通機関・エンタテインメント関係のチケット予約センター、インターネットプロバイダー、銀行・保険会社、不動産販売会社、出版・コンサルティング・情報サービス会社、業界団体など、25社ほどになる。

そういったメルマガの3分の2は、通販・店舗販売という流通チャネルの違いはあってもともあれ商品を広告し販売することを目的とするもので、その半数がHTMLフォーマットで直接メール上での通販を展開し、あとの半数はシンプルテキスト・メールからリンクさせて間接的にウエブサイト上での通販または店舗集客プロモーションを展開している。
残り3分の1のメルマガは、企業からの定期的な告知・報告・参考情報といったいわゆる広報的なものだが、これらとて、顧客との間に信頼・親近感を深めより良い関係を構築・維持することによって反復・継続的な販売・取引を実現しようというのが目的だから、その意味でEメール・マーケティングは、よく対比されるダイレクトメール・マーケティングとは必ずしも同列に論じられないところがあり、記事だけでも広告だけでもない、“メルマガ”という典型に凝縮されているのだなと実感させられる。

自分も含め長く伝統的なダイレクトマーケティングに携わってきた者は、最初Eメールを知ったときには、“理想的かつ最強のダイレクトマーケティング・ツールの出現”と、小躍りしたものだった。何しろ、それまで郵便によるダイレクトメールというメディアで時間とコストと手間をかけて築き上げてきたコミュニケーション・システムが、より“早く”、“安く”、そしていとも“簡単に”実現できることになったのだから。
しかし、その後たちまち、その特性を“悪用”するスパム・メーラーがはびこるにいたって、それは諸刃の剣だったことを思い知らされ、Eメール・マーケティングというビジネス・コミュニケーションのあり方自体までが白眼視されかねない状態にもなり、結局、正しいEメール・マーケティングとは、“オプトイン”による受け手の許諾を得た上で配信する現在の“メルマガ”と言われるようなかたちに、いつの間にか落ち着いてしまった。

その後、「サーチ」や「ソーシャルネットワーキング」などにマーケターの関心が集中するようになるにつれ、一時あれほど盛んだったEメール・マーケティング論議もあまりされなくなり、かつてベストセラーとしてもてはやされたセス・ゴウディンの「パーミション・マーケティング」や、ジム・スターンとアンソニー・プライアーの「Eメール・マーケティング」も、いまではほとんど顧みられなくなってしまっているようだ。
そんな現状を見ると、やや先走り気味に、自著でも大いにスペースを割いて、Eメール・マーケティングの可能性について言及した者の一人としては、“このままでいいのだろうか?Eメール・マーケティングはその持てる可能性を十分に発揮していると言えるのだろうか?”と、考え込んでしまう。そしてそれが、今回のフィールドワークの動機にもなり、追求すべきいくつかの課題を想起させた。

まずは“配信頻度”の問題。自分のところに配信されてくるスパムではないビジネスEメール(すなわちメルマガ)は、全体のほぼ40%が月に2回以下だが、週1回以上2回以下(つまり月にして4~8回)のものも同じくらいあり、3日から2日に1回(すなわち月に10回以上)というものが20%近く(米ネット小売調査事例の倍)存在する。
その中で自分が一応ザッと目を通すのは、配信頻度も低く商品の販売を目的としていない告知・連絡・参考情報系のものくらいで、広告・通販の類い(こういうものに限って頻度が高くコンテンツの量が多い)はおおむねパスしてしまう。ただ最初から削除するスパムとは区別して、取りあえずそのまま残してはおくが、後で見直すことは稀にしかない。

そもそも、とてもその全部には目を通せない。というか、正直言って読む気になれないし、配信頻度が高過ぎるものには、スパムに対すると同様の嫌悪感すら覚える。米フォレスター・リサーチ社の調査でも、77%の消費者はそういうEメールを最初から無視すると報告されている(反面ジュピター・リサーチ社の調査によれば、42%の消費者が適切な頻度なら読むと言っている)から、自分のそのような感じ方も、あながち極端過ぎではないようだ。
高頻度配信の主体はオンライン小売業者だが、なぜそんなに配信頻度を増やすのかという理由を調べてみると、“競合相手に負けないため”ということだった。ビジネス機会を奪われまいと、毎週・毎日、相手に先駆けてEメールを配信し、より回数多く接触を重ねなければと信じ込んでいるらしい。が、それが逆効果になって、2007年頃からは毎年10%単位でEメール離れが進み、それがソーシャルネットワークの方に移行しているということだ。

頻度だけでなく“コンテンツ”も、受け手のニーズやウォンツにお構いなくアレコレとり混ぜてテンコ盛りだから、読む意欲の減退に拍車がかかる。「ロングテールの法則」はもはや空論となっているのに、まだ“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる”と思っているのだろうか?いくら沢山情報を届けても、受け手のプロファイルや履歴にターゲティングされていないために、結果的に興味を惹くことができず読まれなければ、何もならない。
また、たとえ最初に一度オプトインのステップを踏んだからといって、それで永遠のパーミションを獲得した積りになって、後は配信の“頻度”も“内容”も送り手の好き放題というカン違いもNGだ。それもまた、受け手が選択できる要件になっていなければ...。

これまでのEメール・マーケティング(実態としてメルマガ)では恐らく、ある程度ダイレクトマーケティングを知っている限られた企業の場合を除いては、早くて、安くて、簡単なのを良いことに、何の成果改善の必要も感じられないまま、“マーケティング”と言えるほどのことがなされて来なかったのではないだろうか?自分がここ数年の間に受け取っているメルマガの配信状況や内容を見ていても、それは容易に想像がつく。
というわけで、“課題”は見えて来たが、肝心なのは“ではどうすればいいのか”ということ。で、早速それに対する提案を詳述すべきところだが、ブログとしてはここまでだけでも長くなり過ぎたので、勝手ながら別の機会に譲らせていただき、ほんの要点だけでご容赦願うことにする。問題提起とヒントとでも受け止めていただけると幸いだ。

・まず、メール配信先(顧客・見込客)データベースに基づき、配信内容を対象に合わせて「ターゲティング」すること。そうすることによって必然的に、個人当たりの配信頻度が下がり、相対的に抵抗感も薄れる。月1回、多くて2回くらいが、かえって目立つ。
・「パーソナライゼーション」も、ぜひした方がいい。本当のパーソナライゼーションとは
関係履歴に基づいてメッセージを受け手個人にカスタマイズすることだが、せめて個有名で呼びかけることだけでもすれば、間違いなくレスポンス率が何割かアップする。
・配信頻度だけでなく、「コンテンツ」の“ボリューム”も減らすべきだ。初め、現在のコンテンツを優先度の高いものだけに絞って半減し、さらに、そのコピー量を半分に要約するくらいの思いきったことができれば、最後まで目を通してもらえるだろう。
・“変える”ことをためらうなと言いたい。常に“改善”を目指し、そのために「テスト」を定例化すること。Eメールはそれ自体で、またはウエブサイトにリンクして、最もテストがし易いメディア。ここで提案している“頻度”も“コンテンツ”も“パーソナライゼーション”も、自分がこれと思う“コピー”や“ディザイン”や“オファー”のアイディアも、現行基準と比較してテストしてみるべき。簡単にできて効果が歴然と表れるのは、“件名欄”や“返信手段・手法”などのテストであることも知っていて損はない。Eメールに限らず、“テストこそマーケティングの鍵”だ。 

今回は、長々しい割には竜頭蛇尾の内容になってしまい、恐縮の行ったり来たり。(汗、)

|

« 単純な気分転換 | トップページ | 深け行く秋 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Eメール・マーケティングを考える:

« 単純な気分転換 | トップページ | 深け行く秋 »