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2009年6月 1日 (月)

広告はいま...電通賞選考会を終えて

約1ヵ月半にわたって行われてきた2009年度「広告電通賞」の選考会――自分は「ダイレクト広告」と「SP(セールスプロモーション)広告」だけの担当だったけれども――が、先月末でひと先ず終わった。受賞作品・企画も決定し、7月の初めに贈賞式が行われる。
この役目を引き受けてもう何年になるだろう?いつが初めてだったか正確には記憶していないが、かれこれ十数年になるはず。その間、選考委員の顔ぶれもずいぶん変わり、見渡したところではどうも、自分よりも年かさの方を見つけるのが難しくなってしまったような気がする。事務局スタッフも入れ替わって何代目かになるが、こんな自分でも覚えてくださっている受付嬢もいて、ここ何年かは顔を見ただけで、自分の名前の入っているバッジを渡してもらえるようになった。

知り合いの業界人や大学の先生たちに久し振りに会えるのも、こういう場の楽しみの一つ。何段階にもわたって行う選考の合間に、今年の応募作品の傾向などについて意見を交換するのはもちろんだが、お互いの近況や共通の知人の消息、ブログやペット談義にも話が弾む。このごろあまり学会とか業界団体の会合や活動に顔を出さなくなってしまった自分にとっては、世の中の空気を呼吸するいい機会だ。
世の中といえば、昨2008年は景気後退の影響をモロに受けて、日本の総広告費が5年ぶりに前年割れ(マイナス4.7%だそうだ)し、本年もその傾向は続くと言われている。広告は景気動向を映す鏡のようなものだから、扱い高がそうなるのは止むを得ないが、それが広告の内容や形態にどう関わってきているかにも、今年は興味があった。そのようにこの選考会からは、“広告のいま”を通じて、沢山のいろいろな企業の動向をまとめて知ることができるので、自分のような仕事をしているものにとってはたいへん有難い。

さて、選考を終えて感じたことを今年も備忘ログしておこう。後日、自分としても何かと参考になるから...。
2006年、2007年、2008年と、ここ3回で指摘してきたことと基本的に共通する部分もあるが、本年、特に強く感じたのは、応募のあった「SP広告」も「ダイレクト広告」も、実態として、達成すべき“目的”も使用している“メディア”も複合化し、限りなく、「総合プロモーション・キャンペーン」的な性格のものに近づいてきたこと。

本来的にいえばSP広告とは、“限定された期間において購買地点に消費者を誘導し、直接的に購買を動機づけることを目的とする、非反復的な広告”とされ、そのためには、「新聞折込」「ポスティング」「看板」「店頭ツール」や、「イベント」「サンプル配布」「景品・懸賞」など、SP独自のメディアや手法が中心的に使われるのが定石だった。
しかし、この部門への昨今の応募企画には、“関心喚起・話題づくり”、“認知・ブランドイメージ形成”という本来「マス広告」の目的だったものまでをも含むものが目立つようになり、そのためのメディアも、テレビ・ラジオや新聞・雑誌などのマスメディア、およびインターネットのようなインタラクティブ・メディアが、当然のごとく主体的に使用されるようになってきた。

ダイレクト広告についても同様のことが言える。いまは“広告接触者から何らかのかたちでのレスポンス・行動を発生させ、関係構築のためにその個人情報を顕在化させることを目的とする”と概念規定されていることからもわかるように、かつての単純な“通信販売のための広告”や“ダイレクトメールというかたちの広告”に止まらない、“双方向性”と“情報化”というその原理とシステムが取り入れられた“多目的・多メディア化したコミュニケーション”に必然的に進化しているのだ。
そして、個人情報顕在化のためには幅広い市場との接触が可能なマスメディアや情報をデジタル化して取り込むことのできるインターネットに拠ることが必須だし、広告接触者との関係構築こそがブランドイメージ形成に不可欠であることからすれば、ダイレクト広告もまた大局的には、SP広告と同じような方向に向かっているように見える。

ここに至ると、広告は“ブランド認知と好感度を形成”し、SPが“購買地点で動機づけのプッシュ”をし、ダイレクトが“継続的な直接コンタクト”を行うという、マーケティング・コミュニケーションにおける従来の役割分担の考え方が、どうも実態に副わない旧論のように思えてくる。
いま、この時代のマーケティング・コミュニケーションにおいて現実に必要とされているのは、そのようなまだるっこい“足し算”的なやり方ではなく、メディアを複合・連関させて、総合的な目的を一気に達成できるようにする“掛け算”的なやり方で、それは従来のどんな種類の広告という概念ワクにも収まり切れるものではないが、たまたま今回の応募企画では現実が理屈を越え、SP広告やダイレクト広告という姿を借りて出現したということなのだろう。

このことは、SP広告やダイレクト広告の中に、現在の市場の変化と情報技術の進化に対応する“追求目的”や“コミュニケーションのシステム”が内蔵されていることによる、ある意味での必然なのだが、だからといって自分はここで、SPやダイレクトこそが今後の主流になるとまで極言するつもりはない。
ただ、言いたいのは、マーケティング・コミュニケーションにおいて「広告」「セールスプロモーション」「ダイレクトマーケティン」というものを従来のように区別して考えることは、もはやあまり意味がなくなってしまっているのではないかということ。それぞれは、繋がったかたちで全体プロセスの中の一部を構成しているわけではなく、重層して複合的に全体をかたちづくっていると考えられるからだ。

その全体をそれでは何と呼んだらいいかは難しい問題で、もちろんダイレクトマーケティングともSPとも言えないけれども、広告という言葉で一括りにしてしまうのも、いささか大雑把に過ぎる。が、この言葉がやはり一番近く、“進化型広告”とか“多目的広告”とか“複合型広告”とでも言ったら多少ニュアンスを表したことになるかも知れない。
その意味ではこの広告電通賞も、賞そのものの呼び名はそのままでいいとして、そろそろ応募作品・企画の部門区分の見直しをしても悪くはない時期に差し掛かっているような気がする。自分だけの個人的な受け止め方かも知れないが、現在のような、新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・ポスター・インターネットという“メディア”を基準にした部門とSP・ダイレクト(公共もそうだが)という“目的”を基準にした部門が同一基盤上に並んでいることに、“不整合性”を感じてしまうからだ。

では、“整合性”のある部門区分とはどういうことかと言えば、2つの考え方がある。一つは、広告というものはそれを発信する“メディアのタイプ”によって異なってくると考え、上記のような6つのメディアとそれにプラスしたそれらの複合としての「クロスメディア」によって区分する考え方で、もう一つは、広告はそれによって“達成すべき目的”によって異なったものになると考える、「告知・広報」「ブランドイメージ・認知形成」「関心・反応開発」「購買勧誘・動機づけ」「受注・販売・契約・登録」「個人情報獲得」「関係構築」そしてそれらの複合としての「マルチ・パーパス(多重目的)」といった区分のし方だ。
細かいことにこだわっているように思われるかも知れないが、このように部門区分基準を整合させることによって、応募する方は、すべき部門がより明確になり、選考させてもらう方は、比較評価のポイントがより明確になって、結果、“広告のいま”がより一層クッキリと浮き彫りされてくるのではないかと考える。

今回は、広告の“かたち”と“目的”のあり方が、従来の基準では単純に括れなくなったということを上手く言えなくて、面白くもない自論を長々と展開してしまったが、要は、市場が変わり、技術システムが進化し、マーケティング・コミュニケーションが達成すべき目的・課題も複雑・多岐化する中で、広告というものが実態としてかつてとは異なる性格のものになってきたわけだから、そろそろこの伝統ある広告賞も、いろいろな角度から見直し、規定し直す時期に来ているのではないだろうか――と言いたかったわけだ。

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コメント

ROIやKPIという用語がこれだけ一般化してきたわけですから、とりあえず“目的別”にして同一コンテンツで複数部門のエントリーもあり、という形態が一番しっくりくるのかもです。
そうすると「数値指標の仮説と検証結果の誤差の小ささ」なども選考基準に加えられたりして、広告主も代理店も制作会社も、実力が試される修練の場に昇華できそうな。。。

投稿: 課長007 | 2009年6月 7日 (日) 17時13分

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