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2009年6月22日 (月)

1本の国際電話から通信システムの40年を振り返った

数日前の夜半、自室に置いてある固定電話の子機の“トゥルルルル...”という音で眠りを破られた。ケータイは寝たままでも手を伸ばせば届くところにあるが、固定電話は仕事机の上なので起き上がってそこまで行かなければならない。一体こんな時間に、誰が何のために...良くない知らせでなければいいがと、少し胸騒ぎを覚えながら受話器を取り上げ耳に当てたら、“Is this Mr. Nakazawa?...”という若い外国人男性の声が聞えてきた。
我が家で寝ていたところに突然の英語なので状況が飲み込めず、一瞬とまどったが、何とかすぐに反射神経がよみがえり相手を質したら、自分が会員として所属しているDMA(全米ダイレクトマーケティング協会)の経理担当者とのこと(個人名も聞いたが朝になったら忘れてしまった)。10日ほど前に返事を出した年会費の支払いのことだった。請求書の返信用紙に、クレジットカードで支払う旨記入してカードナンバーを知らせたのだが、有効期限を書き忘れていたようだった。

そう言われても暗記しているわけではないので、不機嫌な(多分)声で“Just Moment...”と言って待たせ、机の引き出しの中のウォレットからカードを取り出して灯りにかざし、見えにくい数字を読み上げて事は済んだが、折角いい気持ちだったのにと、チョッピリ不快感が残った。しかし、よく考えてみたらDMAのオフィスはニューヨークにあり、その時間は丁度ランチタイムの後ぐらい。自国中心の平均的アメリカ人には、日本との時差などに考えが及ばなかったのだろうと解釈して忘れることにした。
それよりも、毎年この請求書を郵便で受け取る度に思うのだが、業務オンライン化の最先端を走っているような業界団体のはずのDMAで、いまどき年会費の支払いに関してネット上でのカード決済をオプションできるようになっていないのが信じられない。図書・文献や各種コンファレンスなどは、申し込みから支払いまでオンライン、オフラインのどちらでもオプションできるように早くからなっているのに、会費だけが相変わらず、請求書が郵送されてきて、同封の返信用封筒で小切手を送ることになっているのだ。何か特別な理由があるのかも知れないが、毎年いちいちカード番号と有効期限を知らせてやらなければならないのは、ほんとうに面倒だ。

もっとも、DMAからのコミュニケーションは、毎日届くニューズレターをはじめ、会員への一般的な通知・連絡・要請は完全にオンライン化されており、協会の人とはいつでも誰とでもEメールを送受信できるようになっているのだから、年1回の会費請求書(それから確か協会役員の信任投票用紙も)だけがわざわざ郵便封書で送られて来るのは、システムの不備というわけではないのだろう。もしかしたら不正防止の理由で、あえてそうしているのかも知れない。
とは言っても、毎回、同じ手間をとらなくてもいいように、一度カードのデータを登録したらそれを記憶して(更新は当然必要だが)以後はオンラインで決済できるようにしてくれないものかとは思う。その都度電話しようか、メールを出そうかとも思ってみるのだが、実現可能かどうかもわからないのにそれも面倒な気がして、未だに実行してはいない。

思い起こせばこのDMAも、1970年代、自分が初めて入会したころの国際コミュニケーション手段は、ほとんどが郵便、そしてときどき電話だった。そのころは国際電話料金がきわめて高額だったので、よほど緊急の場合を除いては、7~10日で着くエアメール(航空便)を利用するのが普通だったが、特に急を要しない通信物や小包などについては、1ヵ月近くかかるが最も料金の安いシーメール(船便)が使われることも少なくなかった。DMAだけでなく、どこの会社もそうだった。
電話を使わなければならないほどではないが航空便のやりとりではまだるっこい用件に関しては、テレックスなどというものも使っていた。電話回線にタイプライターを接続したようなもので、キーボード(アルファベットだけ)をたたいてメッセージを綴るとそれが相手先に送信されてロールペーパーにプリントされ、読んだ相手が同じようにして返信してくるという仕組みだが、利用料金は文字量に比例するので単語をフル・スペルで表さず、Pls(Please)、Mtg(Meeting)、Grp(Group)等々、独特の略語を多用していた。

いまは家電分野にまで裾野を拡げているファックスだが、事務機器としてたいていのオフィスに装備されるようになったのはいつごろからだったろうか?最初からEメールが使えているいまどきの若いビジネスマンに話せば“ヘー...そんなものですかネ”ということにしかならないだろうが、郵送するレターに匹敵するメッセージ・コンテンツを、テレックスと同じように一夜の間に海を隔ててやりとりできるファックスの出現は、当時としてはまことに画期的なものだった。
が、パーソナル化されるところまでは行っていなかったから、休日などに送信の必要が生じたときは、最寄りの文房具屋さんへ走ったり、そのためだけにわざわざオフィスに出かけたこともある。かつての主役エアメールは、いつの間にかファックスにその座を奪われ、日常のビジネス・コミュニケーションの場ではすっかり影が薄くなっていた。

いまでこそ、こんな自分でさえも、パソコンという道具なしでは、またEメールという通信手段がなければ、仕事にならないが、“インターネット”という言葉をチラホラと耳にするようになったのは15年ほど前、1990年代の初めごろ。恥ずかしながら、パソコンに関係があるらしいということ以外には何もわからなかった。そのころは、パソコン自体も覚えたてで、ワープロ機能しか使えなかった(いまも大して進歩していないが)。
80年代の米国では、オフィスで一人一台のパソコンは当たり前になっていたが、日本では90年代に入っても、特に小規模な企業などではなかなかそういうわけにもゆかず、自分は長男の“お下がり”のマック・パワーブックを自分の事務所に持ち込んで使っていた。と言っても、難しいことは国産N社のデスクトップ型を駆使していた秘書任せ。“最近はパソコンでスライドが作れるらしい”とか、“パソコンからパソコンへなら通信ができる”という話しを耳にしてはいたが、自分では何をどうすればいいのかサッパリわからず、仕事上のデータや原稿の送付は、相変わらず、プリントアウトしてファックスで送るという方法によっていた。

パソコンのことがもう少しはわかり、ときどき若い人に助けてもらいながらも何とか時代の情報環境について行けるようになったのは、90年代も後半に入った還暦も間近のころ。教育産業の大手B社に縁があって、その子会社の社内にオフィスを置かせてもらい、そこの情報システムを利用できるようになったお蔭で、社内外とのコミュニケーションには専らEメールを、そしてプレゼンテーションにはパワーポイントを使えるようになり、自分で言うのもなんだが、ワープロ能力もけっこうアップした。
やっとそういう土台ができたところにその後も周囲の人々の薦めや協力があって、いまも情報の獲得と発信のため、インターネット・チャネルを自分なりに目いっぱい使い、こうしてブログの世界にまで首を突っ込んでいる。自画自賛するわけではないけれど、齢の割には上出来ではないかと思っているのだが、まださすがに、mixiやTwitterというところまでは入って行けていない...。

それよりも、もっと身近なところでいま自分が遅れていると思うのはケータイ。限りなくパソコンに近づいているワンセグ・タイプどころか、それ以前のタイプすら十分に使いこなしていない。というよりも、ほとんど電話機能しか使っていないと言った方が正しい。持っているのが何年も前の超クラシックなモデルだから言うわけではないが、ケータイにテレビなんかついてなくていいし、音楽はiPodできけばいいと思っている。カメラはあって悪くないし、メールも使ってみたいと思うが、なかなか、そうしたくなるシチュエーションもなければ、指も動かない。
ただ、仕事がらみで考えると、次の注目分野はモバイル・マーケティングだろうから、少なくとも、まだまだ使いこなしているとは言えないパソコン程度には使えるようにならなければ、今後わかったようなことは言えなくなるだろうという自覚はある。ので、何とかマスターしようとは思っているが、小さな文字が見えにくくなった視力、うまくキーボードを押せなくなった指先など、この齢になると身体的ハンデが大きい。

DMAからの電話がきっかけで、思わず過去を懐かしむように、自分がこの40年の間に通ってきたビジネス・コミュニケーションの道を振り返ってしまった。郵便と電話から、テレックス、ファックスを経てインターネット、モバイルまで、ちょうど自分の仕事人生と重なるかたちで通信技術システムは劇的に進化し、自分もその影響と恩恵をまともに蒙りながらここまで生きて来た。
誰に強制されているわけでもないのだから、せめて老後ぐらいはそれに左右されず気楽に過ごそうと思えばできるのに、何の因果か未だにそこから抜け切れず、苦労承知で進化について行こうとする物好きな自分がここに居る。

そうやって一生懸命に目を凝らし、指先を動かし続けることが、せめてボケ防止に役立ってくれるといいのだが...。

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