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2009年5月18日 (月)

マルチチャネル・マーチャント

家を建て替えてからも、家具は以前からのものを使い続けてきたが、やはり家に合わせて一新した方が気分もいいカナということで、このところいろいろなものを買い替えたり買い足したりしている。気がつけばもう30年以上も経つという年代ものが家の中のアチコチにあったが、とりあえず、ダイニングチェア4脚とベッド1台を入れ替え、ダイニングルームには食器キャビネット、玄関にはベンチを、新たに入れることにした。でも、ダイニングテーブル(5人家族だったころのものなので超大型)やベッド(外国人サイズなのでシングルだがキングサイズ)1台はいまだ健在のため、そのまま使い続けることに。
元来、シンプルなデザインとナチュラルなフィーリングが好きなので、以前は大体のものをスウェーデンのI社製品で揃えていたのだが、いまは同社の巨大なストア内を歩きまわって品定めをするのが想像するだけでも億劫なので、それとどこかセンスが似通っているところがあるような気がする、R品K画社のM印R品の店で探すことにした。

最寄りの店としては、青葉台・溝口・港北などにあることを知っていたが、取引銀行やよく行く家電量販店などもある青葉台店がいちばん好都合だし、売り場面積も広いようなので、他の用事もあったついでに立ち寄って覗いてみたら、キャビネットなどは気に入ったものがすぐに見つかった。他のものも、その場にあれば全品一緒に注文しようと思っていたのだが、売り場にだけでなく店の倉庫にもないということだったので、その日はキャビネットだけ購入することを決め、あとは、そこでもらった総合カタログを再検討の上、現物が入庫したときに実物を確かめてから改めて発注ということにした。
ダイニングチェアは、本体だけは展示用として売り場にあったが、カバーの実物が1種類しか置いてなくて、それがどうも色・織とも気に入らず、しかもその実物とカタログ写真にあまりにも違いがあり過ぎたため、他の種類のものにしたいと思いながらも、カタログ上の写真だけでは決めかねたからである。

カタログを見ると、各店舗への電話・FAXでもオーダーできるが、実店舗とは別に「Mネット」というオンラインストアがあってネットショッピングもできるようなので、早速そのウエブサイトにアクセスし、ネット会員にもなった。だが、以前から家内が「Mカード」の会員でもあったので、それからというもの我が家には、Mカードからはハガキで家内宛てに、MネットからはEメールで自分宛てに、微妙に時期や条件の異なるショッピング情報が送られてくるようになり、いつ、どのチャネルで買ったらいいかの判断に、いささか混乱を来すことになった。
たとえば、“割引”とか“配送料サービス”とかいう条件つきキャンペーンに誘われて店に行くと、それはネットだけのサービスだったり、ならばネットで買おうかとウエブを開いてチェックすると、店とネットではサービス対象商品がマチマチだったり、キャンペーン期間が違っていたりという具合で、店舗販売の情報とネット販売の情報との間に脈絡や相互連携というものがないのだ。どうやら店とネットは別会社なので、それぞれの営業上の思惑はあっても、客に与える混乱や不便はあまり眼中にないらしい。

店について言えば、ダイニングチェアのカバー程度の小物は(せめてサンプル生地だけでも)、全種類常時在庫していても良かろうにと思うし、わざわざ店に足を運んでくれた客が買いたいと言っているものがそこになければ、在庫を確めるためにいちいち長時間待たせたり、再度来店することを余儀なくさせるという手間をかけるのではなく、倉庫や配送センターに直結する端末機器を売り場に置いて、即座に状況がわかるようにしておけばいいのにと思う。情報化のご時世なのだから。
扱い商品は、カタログを一見するとネットも店も共通に見えるが、実はそうではない。それぞれの取扱商品と販売条件というものがあって、その組み合わせも不統一ならば、配送料金もチャネルと対象商品と購入金額によって違う独自の複雑な設定になっていて、商品在庫のし方にも互換性や融通性がない。

店員は、接客態度も悪くないし決して不親切でもなく、その点では小売店としてなかなかだが、いかんせん、拠って立っている商品・販売管理のシステムと顔の向いている方向が、顧客中心になっていない。組織が別とはいえ同じブランドを扱っているのに、“ネットと店は営業方針が違うので...”と言って済ませているのも、客としては納得できない。
どうやら店員の頭の中は、何とかして客の要望に応えようとするよりも、先ずは会社の決まりやシステムに忠実でなければということで一杯になっているようだ。R社はMにブランドとしての人気が出てきたので、このやり方に自信を持ち、あえてそういう教育をしているのだろうか?何度も足を運ばされ、思うように買い物ができないという目に遭わされているうちにだんだんイラついてきて、そんなことも考えるようになっていた。

それでも、買おうとは決めていたから、何回目かでやっと現物を確認できたベンチ1基とダイニングチェア(本体およびカバー)4脚は、ともかくも注文して支払いも済ませた。この会社の事情(だか方針だか)で商品の種類によって倉庫が別々のためそれぞれに配送費がかかり結構な合計金額になるというので、店に在庫があったら自分の車で持ち帰ろうと思っていたが、そこには展示品の他にはチェア本体は1脚分しかないとのこと。
で、仕方がないから、カバーだけ4脚分とチェア本体1脚だけを持ち帰り、あとは、宅配を待つことに。だが、ヤレヤレこれでやっと一段落かと家に帰って寛いでいたら、レシートを眺めていた家内が、さっき買ったダイニングチェアの配送料の計算がどうもおかしい、1脚が525円と言っていたけれど、ここには商品点数1、合計金額2100円となっていると言う。見ると、確かにおかしい。宅送は3脚のはずだから、商品が1点というのもわけがわからないが、合計2100円というのも計算が合わない。

多分、1脚持ち帰ったのに4脚分として配送料を計算してしまったのだろう、よくあるミスだからそう目くじらを立てほどのこともあるまい、簡単に済む話だと思って、夕食時だったが早速電話した。が、それが大誤算。何だかんだで1時間以上かかってしまった。
こちらからかけたのは最初の1回だけだが、店の方からは、その都度違う内容で、2度も3度も電話がかかってきた。要約すると次の通り。

  1. 注文時に応対した女性店員もレシートを入力した男性店員も不在(帰宅?)で、別の男性店員が電話に出たが、同じ商品を複数買いし一括配送を依頼すると全体で1点という扱いになり、梱包サイズも大きくなるためこのような料金になるという回答。そこで、複数商品の一括配送が、同数を個別に配送する場合よりも高料金になるのは理屈に合わないのでは?というと答えに窮し、調査・検討してから改めて回答するということに。
  2. しばらく時間が経過した後、同じ男性店員から電話があり、言われる通り計算ミスだったので過剰に領収した525円を現金書留で返送するという返事。それで了解、一件落着と思っていた。
  3. ところがまたしばらく経って、こんどは女性店員(先ほどの男性店員の上司か店の責任者らしい)から電話があり、男性店員が電話するのを傍で聞いていたが、あの回答は間違いで配送料金はレシートの額が正しく、複数買いだとそのうち1点が正規料金(?初耳で1050円だという)になり残りについてのみ半額割引料金(525円)が適用されて、1050円x1+525円x2=2100円ということになるのだと言ってきた。
    ますます訳が分からなくなり、同時に、あくまでも先方の立場からのみの話に、もはや金額の問題ではないとヘソが曲がってしまい、こちらはともかく最初に1脚の配送料が525円という話しか聞いていないから、そんな言い分は受け入れられないと突っぱねた。
  4. 結局数日後、店員の知識・説明不足で迷惑をかけたという詫び状と525円が送られてきたが、自分のM(R社)に対する、“顧客中心になっていない企業”という印象は、拭い去り難いものに。買う予定だったものはまだ、ベッドをはじめ他にもいろいろあるが、こんな思いをさせられるようでは、まず当分はMで買う気にはなれないと思った。

個人としてではなくマーケターとしてこのことを考えるとき、Mは小売業として、目先の細かい経費合理化や販売戦術にこだわるあまり、ビジネスの可能性拡大という大きな機会を潰していることになる。確か親会社は米国企業とも提携して、流通小売業の最先端を走っているはずだが、いまの世界的な小売の潮流について教わっていないのだろうか?
自分もこれまでにあちこちで話したり書いたりしていることだが、今日どんな企業でも、ビジネスの成果を最大化するためには、コミュニケーションと流通のチャネルを複線化(店舗・カタログ・インターネットなどを複合)し、チャネルにかかわらず客に“共通の商品”“共通のサービス”“共通の情報”を提供して、客がその時々の都合によってどれでも好きなチャネルを選べるようにしなければならない。それが客に対してより親切であることになり、販売の機会も場所も領域もより広がって、チャネル間には相乗効果が発生し、顧客の満足度もよりアップするからだ。

もっとわかり易く言えば、店舗であれ通販であれ、客がある小売業者から何かを買おうとしているときには、基本的に一元的・共通の品揃えの中から、“ネット(カタログ)で探して店で確かめる”、 “店へ行けないからネット(カタログ)で注文し宅送してもらう”、“ネットで注文して店で受け取る”といったことができるようにするということだ。もちろん品揃えに関しては、スペースに物理的な制限のある店舗・カタログと無制限のネットで差が出てくるのは止むを得ない。
これが「マルチチャネル・マーケティング」で、顧客中心の発想に立てば当然そういう結論に達するわけだが、米国などではあらゆる伝統的GMS・専門店チェーンおよび通信販売会社の常識的戦略になっており、いまでは彼らは、自らを「マルチチャネル・マーチャント」と呼称している。

日本ではどうかと、限られた範囲ではあるが、自分も直接店舗小売業者や通販会社に電話をして独自のリサーチを試みてみたが、店舗販売とネット(およびカタログ)通販を併行展開しているとは言っても上記のような真の意味でのマルチチャネル・マーチャントは、家具・インテリア小売業のN、化粧品・健康食品通販業のF、アウトドア・ギア小売業のLや輸入・加工食品販売業のDといった米資系企業など、極めて限られており、本店が新宿のIやM、日本橋のTやM、渋谷のTなどのデパートは、単にネットおよびカタログ通販も行っているというだけで、本来のマルチチャネルとは異質のものだった。
ここに引き合いに出したMは...もう散々言及したから、これ以上言うまでもないだろう。マルチチャネル・マーチャントを目指したフシが窺えないでもなく、一見そうかと思えるところもなかったわけではないが、事業経営における立ち位置と視点が違っているために、そうなりきれていない。

社名やブランド名に偽りはなく、商品に問題があるわけではないのだから、事業戦略を再慮して、顧客本位に考える企業に変貌して欲しいと思っているのは、自分だけだろうか?

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