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2009年1月12日 (月)

2009年にマーケティングで曙光を!

松の内は近来めずらしく晴天続き。自分のような低血圧人間にとっては、寒いけれども快適な正月だったが、世界経済の先行きは相変わらず不透明で、超優良企業だったはずのトヨタ自動車が予想もしなかった苦境に立たされ、製造業系の大企業が軒並み“派遣社員切り”に走るなど、日本経済も低迷・混迷の中に沈みこんでいる。
こんな時こそ、政官が力を発揮すべきと思うが、霞ヶ関方面からは何の抜本的改善案も聞こえて来ず、一時給付金などと言った小手先の愚策しか出てこない。米国では早くも、国ぐるみで速やかな改革を目指し、着手しているように見えるが、わが国でもそれは火急の要であるはずだ。

しかし、過去何回かの景気落ち込みのときもそうだったが、誰かが何かをやってくれるのを待っていてもダメで、こういうときには文句を言っているだけでなく、たとえ影響力は僅かでも、自分で考え発言し、自分ができる分野で自ら行動することが肝心。
そこで、引越しも一段落して久しぶりにチョッピリ心の余裕ができたこの正月の数日に思い立ったのが、自分が関係しているマーケティングという分野で、何か元気が出そうになる情報や意見を見つけ出せないものかということ。で、お餅の食べ過ぎでいささか緩んでしまったかも知れない精神状態に自ら鞭を入れ、手の届く範囲で年頭のオンライン・ビジネスマガジンを読み漁ってみた。

が、やたら範囲を広げても焦点がぼやけてしまうと思い、結局、米4誌に絞ることに。広告業界誌の「Advertising Age」、通信販売誌の「Catalog Success」、モバイル・マーケティング誌の「Mobile Marketer」、インターネット・マーケティング誌の「eMarketer」だ。
Advertising AgeとCatalog Successはどちらも、伝統的な業界の代表的なジャーナルだが、重要視していることに共通性がある反面、それを実現するための戦略というか政策が相反しているのが、それぞれの現況と将来を物語っているようで興味深かった。

Advertising Ageの注目記事は、同誌1月5日掲載の“デジタル化の波に揉まれながら「原点回帰」に集中しようとする各社マーケティング・トップたち”といった見出しで、Anderson Analyticsが昨年11月から12月にかけて、選ばれた大企業のマーケター1800人から成るMENG(Marketing Executive Networking Group)のメンバー634人に対し実施した調査の結果とそれに対する関係者のコメントをまとめたもの。
それによれば、ほとんどが異口同音に、2009年度は広告費を削減し雇用も縮小ないしは凍結しなければならないと答えているが、4分の3は革新を導き出すための研究開発への投資を据え置きかむしろ増額するとし、3分の2が、顧客をより良く理解するために市場調査費は減らさないとしている。

この調査から読み取ることができた全体的なトレンドが “基本に立ち戻る”という戦略だったからと思うが、それを裏付けるように、マーケティングの重要概念は何かという問いに対する彼らの答えの上位4項目は、「顧客満足」(79%)、「顧客維持」(76%)、「マーケティング投資効果」(65%)、「ブランド・ロイヤルティ」(61%)だった。
このこと自体はその通りで、一方的なマスメディア広告中心でやってきた彼らがよくぞそこに目覚めたと思うが、その半面“?”と思わせられたのは、Web2.0、ソーシャル・ネットワーキング、ソーシャル・メディア、ブログ、バイラル・マーケティング、モバイル・マーケティングといったデジタル時代のキーワードが、彼らにとっては飽き飽きするような流行語としてしか聞こえていなかったフシが、調査の結果に現れていたことだ。

これと対照的にCatalog Successはその1月6日号で、通信販売の専門家が“2009年は繋がりの年”というタイトルの下、顧客を商品・サービスそしてブランドに定着させるための重要なファクターとして、ソーシャル・メディアの強い効果について言及している。
企業が一方的に発信する広告のようなマーケティング活動だけでは今やどうすることもできなくなった、顧客に対するブランド・イメージのコントロールに、ブログやWOM(口コミ)やネットワーキング・サイトは多大な影響を及ぼすというのだ。

近年ますます全小売中に占める割合が高まっている通信販売の顧客・見込客は、購買を決定するのに可能な限りさまざまなチャネルで情報検索をするのが当たり前になっており、相対的に、ブランド側が発信する情報のインパクトはどんどん小さくなってきている。
彼らは、ブランド側の情報をそのまま受け入れるわけではなく、客として受けた印象・体験を仲間うちで伝え合い判断するから、そのプラス・マイナスの影響力には神経を使わなければならないし、Advertising Age上で言われているマーケティングの基本を守るにも、そこを等閑にするわけには行かないということである。

元日に目に入った“2008年を振り返って”というMobile Marketerの記事の視点もそれに近い。コカコーラ、プレイボーイ、フォード、マクドナルドなどの大企業のプロモーション・キャンペーン、それにバラク・オバマの全米選挙キャンペーンなどの事例を取り上げ、いまやケータイは、伝統的なメディアにはないその独自の特性によって、より本格的に、マーケティング・チャネルミックスの不可欠な一部になったとしている。
ケータイは、最もパーソナルなコミュニケーション・メディアであり、PCよりもさらに特色あるネットワーキング機能を持っているので、それを活かしてこれまで到達できなかった市場にリーチし、そこで新たなアクションを惹き起こすことを可能にしたというのだ。

コカコーラも、プレイボーイも、マクドナルドも、他のチャネルを通じてはなかなか顕在化できていなかった年齢層のブランド接触を可能にするために、ケータイ専用のポータルサイトを設け、それにネットワーキング機能も複合させてバイラル効果を狙った。
大企業のマーケティング・スタンスとしては、Advertising Ageの記事に見る大勢とは印象を異にするが、これらの企業が他に比べて、より意欲的で先見性があるということではないのだろうか。

1月5日付けの“2009年を予測する”という記事でeMarketerは、さすがにマスマーケターとは対極的な見方をしている。伝統型メディア向けの2009年度の全体広告費は間違いなく削減され、雑誌・ラジオ・新聞は広告収入のさらなる激減に苦しむことになり、デジタル・メディアとリンクしネットワークして行かなければ存続自体さえも困難になるという指摘は他とほぼ同じだが、これまでは良好に推移してきたテレビ広告への投資も、2009年からいよいよ下落が始まる(初年度は5%)と大胆な予測をしている。
広告費の削減とともに、広告投資効果の測定・評価方法とそれに伴う料金支払システムについても伝統的メディアは変更を迫られ、それは最終的にメディア・ミックスにも影響を及ぼすとも同誌は予測している。

ただし、このような全面的な経済規模縮小の中でインターネット・マーケティングへの投資だけは、ペースダウンはありながらも増え続ける(成長率2007年25.6%、2008年11.3%に対して2009年は8.9%の予測)と同誌は読む。
オンライン広告の成長率が10%を下回るようになって、インターネットの栄光の日々は終ったなどという向きもあるが、それは誤りで、マスメディア広告で2桁の減少率が続いている中、依然インターネット広告だけがプラスの状態を続けていることを注目しなければならないと同誌は力説する。

より細かく見ると、効果測定のしやすいEメール広告とサーチ広告は、相変わらず伸びているようだ。特にサーチ広告は2009年度も15%の成長率が見込まれている。新たな注目領域であるオンライン・ビデオは、もっと急激な伸びを見せるだろうと目されている。
オンライン・ディスプレー広告は、昨年12月8日のブログでも取り上げたように、今のままだとここ2~3年マイナス成長を免れないだろうが、舞台裏で、他のオンライン広告との連繋戦略の開発、クリエーティブと効果測定の手法の革新などが業界ぐるみで進められているので、おそらく事態は改善されて行くだろうというのが、同誌の観測だ。

オンライン・コマースは、成長は続いているものの、その率は2008年の7.2%から2009年の4.1%(予測)と、やや頭打ちの感がある。が、これは、一般店頭小売の傾向と共通する景気後退による消費者の買い控えの影響で、本質的な現象ではないと考えられている。
興味を惹くのは、Mobile Marketerでもマクドナルドなどの事例として取り上げられていたネット上でのデジタル・クーポンの大流行。景気後退が始まって以降、87%の顧客は同じ買い物をするならクーポンをオファーする店を選ぶようになったと言い、買い物の際に以前にも増してクーポンを使うようになったという顧客も89%に達していると、同誌は報告している。

しかし、以上のような調査統計やその分析・予測はあくまでもデータであって、それらを超えてより重要なことは、“物事はいつかは良くなるものだ”ということを忘れないことだと、この記事をまとめたeMarketerの最高経営責任者Geoff Ramseyは言う。
彼は、2009年の末かそれより少し後には世界経済は冬眠から目覚め、そのときには以前に増して強固なものになっているはずとポジティブに言い切っている。楽観主義を単純に信ずるわけではないが、自分もぜひそうあって欲しいと願い、それに向かって自らを鼓舞しつつできる努力をしたいと思う。

米国ペンシルバニア州立大のGary Lilien教授も、いいことを言っている。

“SKILL(マーケティングの専門技術力)とWILL(タフな状況に立ち向かう精神力)とTILL(投資できる何らかの資源力)があれば、この困難な時期にも、目指す市場への道を切り開き、そこでのより強いブランド・ポジションを勝ち取ることができる。”――と。

マーケター諸氏、マーケティングで知恵をしぼり、2009年を何とか良い年にしようではありませんか!

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コメント

原点回帰+アルファですね。

投稿: 課長007 | 2009年1月18日 (日) 14時37分

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