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2008年12月 8日 (月)

これでいいのか?インターネット広告

...と、大きく出てしまい、話しが簡単に終らなそうなのが目に見えているが、これは日ごろから頭の中でモヤモヤしていた素朴な疑問だったし、最近たて続けに気になる情報を目にしたこともあって、ともあれ一度、自問自答してみようと思っていた。

仕事柄、四六時中と言ったら大げさだが、二六時中(?)つまり一日の半分くらいは、パソコンにへばり付いている。その内訳は、三分の一が受信したメールや情報の目通しと必要なものへの返信、別の三分の一が原稿や資料などさまざまな文書の作成、そして残りの三分の一が他の人のブログや企業のウエブサイトの閲覧と調べものだ。
いくつかあるお気に入りのブログには、楽しみとして毎日のように訪問させていただいているし、新しい情報を求め、あるいは何かのテーマを追いかけては、さまざまなサイトを縦横無尽に検索しまくっている。

だから、何らかのかたちで広告が掲載されているウエブ・ページには相当の頻度で接し、目の片隅でその広告を見ているはずなのだが、自分の個人的興味でそこに立ち止まり、入り込むことは滅多にない。仕事として、いろいろな企業の活動状況や内情をチェックしウォッチするためにそれを開き、その先までフォローしてみる場合は別として。
つまり、自分がウエブに接触するときは、サイト・コンテンツ自体が関心の中心で、“バナー”であれ“検索連動型”であれ、広告には、よほどその絵や言葉が気にならない限り、ほとんど見向かないということだ。

自分のような年代・立場・興味のものは、オンライン市場の構成者としてはおそらく、極めて少数派だろうし、これらの広告のターゲットとしては別に“お呼びでない”だろうから、こんなことを言うのは大きなお世話かも知れないが、以前からその効果のほどが、業界の通説はともかく本当はどうなのかと、気になっていた。
というのも、オンライン広告を、伝統的な意味での広告の概念・目的で捉えている限り、インターネットというものの機能と特性を十分に生かしていることにはならないのではないかという疑問が、ずっと拭えなかったからだ。

事実、ページ上の掲載形態として、またはコピーやデザインとして目についた、かなりの数の企業のバナー広告を意識的にクリックしてみたが、その広告が多分狙ったはずの目的に最短距離で到達できたケースは、ごく稀にしかなかった。
バナーの表現を見ると、目的は割合単純に、絞り込まれているかのように見えるのだが、そこからリンクして行き着くページがややこしい。意図している最終目的地(キャンペーンページ、商品・サービスページなど)へとストレートにジャンプさせればいいものを、わざわざもう一度より複雑な出発地点(企業ポータル、トップページ)へと連れ戻し、要らぬ行き先まで示して、折角、特定の興味を持って立ち寄ってくれる広告の訪問者を混乱させ、手間をかけるようなことをしているのだ。これでは面倒になって、その訪問を途中で切り上げられても仕方がない。

また、マーケターとクリエーターの意思が通じ合っていないと想像させられるつくり方の広告も多い。ウエブ上で技術的にいろいろなことができるようになったのは結構なのだが、クリエーターがそれにのめり込み過ぎて、広告の本来の目的がなおざりにされている。
バナーからリンクした先が、動画仕立ての企業トップページだったりすると、画面が立ち上がるまでにかなりの時間がかかる上に、本題に入る前のどうでもいい映像を長々と見せ付けられて(一応スキップできるようになってはいるが)、イライラすることが少なくない。クリエーターがそれで企業イメージをアップできると思い込み、広告主がそれに満足しているとしたら、何だか大きな勘違いのような気がするが、そんな文句を言っているのは自分だけなのだろうか?

マーケティング実務家の自分としては、インターネットを単に、伝統的なマスメディア広告戦略の延長線上にある一つのメディアと見做し、認知や好感の獲得までの目的を達成するための広告ミックスの一環としてしか考えず、“ネット視聴率”なるものを効果の評価基準としてROI(費用対効果)を問わずにいる、インターネット広告業界の考え方にも納得が行かなかった。
その先に行動喚起と顧客形成までを視野に入れて、あくまで実績・ROIを評価基準とする“ダイレクトレスポンス”や“オンライン・コマース”のような考え方、インターネットの使い方をするのなら、意味があると思えるのだが。

そんなことを、あまり口には出さなかったが心の中で思っているうちに、この経済危機が引き金となって、懸念していたことが少しずつ、表に出始めてきた。
インターネット業界情報提供ブログ「TechCrunch」の共同編集者の一人Erick Schonfeldが、本年6月に“インターネット・ディスプレイ広告(注)出稿は鈍化傾向”という見出しで同ブログに書いていたことだが、TNS Media Intelligenceの調査によれば、検索連動型広告も含むインターネット広告全体としての出稿予算は、やや鈍化はしながらも相変わらず他のメディアとくらべて高い成長率を維持しているが、その中のディスプレイ広告は、今年の前半で見ると、昨年比で半分の成長率(16.7%→8.5%)に下がったという。

(注)本来は、オフラインかオンラインかにかかわらず、編集的コンテンツと同一または隣接するページに掲載される、グラフィックな “場所貸し”型広告を意味していたが、現在は、ウエブページ上の、文字・映像・音声などの要素も含むさまざまな形態と機能の「バナー広告」を表わす用語として使われている(したがって「検索連動型広告」は含まない)。

また10月にも、デジタルビジネス情報サイト「Silicon Alley Insider」の編集長Henry Blodgetが同サイトのブログで、“大変だ!2009年にはネット上のディスプレイ広告が急減する”という見出しで、インターネット広告業界に対し警鐘を鳴らしている。
2003年以降急成長を続けていたオンライン・ディスプレイ広告の出稿額は、景気後退により2009年には前年比約10%減少し、2010年以降もしばらくは同様の現象が続く可能性があり、YahooやCNETやAOLといったディスプレイ広告依存の大手も深刻な打撃を受けるだろうというのだ。

そしてつい先日、11月の末には、広告業界誌「ADWEEK」のウエブサイトに、 “ディスプレイ広告の終焉は近いか?”というセンセーショナルな見出しで、Mediaweekの編集主幹Mike Shieldsの記事が掲載された。
これまで“ブランディング”という大義のもとに、合理的な効果測定規準も設けられず、採算性の面での価値も問われずにいたオンライン・ディスプレイ広告が、そのかつてのメリットを逆手にとられて、現在の深刻な経済危機の中で真っ先に、広告主のマーケティング予算再カットの槍玉に挙がっているという情報が、多くの業界関係者の談話として紹介されているが、これまでは潜在していた疑問や不満が、ちょうどいい機会とばかり一気に噴出し、新しいトレンドにさえなりつつあるようだ。

曰く、“サイズが小さくて目立たないから、実は、広告としてのインパクトも低く、思っているほどの効力はない”とか、“料金体系は、インプレッション単価(CPM)ベース、つまりリーチ&フリクエンシー基準では不合理で、クリック単価(CPC)ベース、すなわち実績基準にすべき”等々。
ブランディングを目的とする広告としてはインターネットがそんなに大きな影響力を発揮できるわけがないなどということは、前々から囁かれていたし、CPCベースの料金体系も特に新しい発想ではなく、ダイレクトレスポンス広告では当たり前のことだったが、それが表立って言われるようになってきたのは、この厳しい事態に直面して、やっと広告主も、ROIやインターネット広告の評価の仕方に目覚めたということなのだろう。

まあ、業界の動きはともかく、ここで、自分の持ち出した疑問に対する自分なりの答えをまとめるとしたら、とりあえず戦略的には、“インターネットは単なる広告メディアではないから、ブランドの認知と好感獲得までに止まらず、その先の行動喚起と顧客形成という目的までを視野に入れて活用すべき”と、そして戦術的には、“広告からマーケティングの最終目的に向けてランディングさせるまでのプロセスを、もっとシンプルでストレートなものにすべき”とだけ言っておきたい。
お気付きかも知れないが、これは取りも直さず、ダイレクトレスポンス広告の本質だ。誤解・短絡してもらいたくないのであえて断わっておくが、もちろん、そのままオンライン・コマースのことを意味しているわけではなく、伝統的な流通のサポートためにもそういう考え方を適用すべきということである。

あらかじめ自ら危惧していたように、やっぱり長い話になってしまったので結論を急いだが、もしかしたら無意識の飛躍や過不足があるかも知れない。ので、いずれ別の機会に、お読みくださった方との掘り下げた意見交換をしてみたいと思っている。

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