« 上棟の日 | トップページ | 不況とマーケティング »

2008年11月 3日 (月)

犬はかすがい

エー、昔の人は“子はかすがい”などと申しましたが、当節は“犬はかすがい”と言った方が当っておりますようで...。

確かにその通り。“夫婦喧嘩は犬も食わない”という諺もあるが、それが起こらないように、また何とか収まるようにしてくれるのも犬だ。同じペットでも、猫ではそうは行かない。
夫婦の関係などというものは、長年連れ添った間柄ではあっても、いつも平穏無事というわけには行かず、我が家でもときに(大方自分のせいだが)、かなり難しい状況になることがある。気まずく長い沈黙の時間が流れて、単純で不器用な自分には、何が問題なのか、どうしたらいいかがわからず、途方に暮れることも再々。だが、そんなとき、ムッシュのお蔭で救われたことが、これまでどれだけあったかわからない。

ムッシュ ムッシュは、ママとパパの間がどうも微妙な雰囲気になってきたなと感じると、初めはやや引いて、しかし心配そうにその様子を見ているが、やがて2人の間に会話がなくなり、もはや一触即発という空気が立ち込めてくると、そこに絶妙なタイミングで、遠慮がちにトコトコと割って入ってくる。
そして最初はママのところへ行き、膝に手をかけて“どうしたの?”とでもいうような仕草で見上げるので、ママは仕方なしに口を開き、パパに対する鬱憤をムッシュに聞いてもらうというかたちで語り出し、パパもそれが耳に入ってやっと、問題の核心を理解する。

ムッシュ自身がどれほど理解しているのか本当のところはわからないが、ひとしきりママの話を聞くと、彼は今度はパパのところへやって来て、“パパ、またドジったの?ダメだなあ、いつもいつも...”といった眼差しで、じっとパパを見つめる。
そこでパパは、よくぞ来てくれたと藁にもすがる気持ちで、ムッシュに対する独白のかたちで自責と反省の気持ちを述べるわけだが、直接にでは言い訳じみて取り合ってもらえないことも、ムッシュを介したかたちでママの耳にも伝わることになる。

いい歳をした人間の、そんな世話の焼けるプロセスに、しょっちゅう付き合わされているムッシュこそ、実にいい迷惑だと思うが、日頃可愛がってもらっている恩義を感じてくれているのか、彼は二人の間を交互に行ったり来たりして、こちらが話をしている間は、それぞれの前にじっと座り、小首をしきりに傾げながら一生懸命に聞いてくれる。
そうやってムッシュは、いつもと違うパパとママに、懸命に気を遣う様子を見せるので、可愛らしくていじらしくて、やがて二人とも、ツイ、“ムーちゃん、ごめんね。心配をかけて...”と、期せずして同じような言葉を発してしまう。

そうなると、いくら何でも、お互いに対することよりムッシュのことが先に立ち、こんな小さな子にそこまで気を遣わせてはいけないな...と、二人とも親の気持ちに帰らざるを得なくなって、事態が治まるのは時間の問題となる。そしていつの間にか、話題の中心はなし崩しにムッシュに移り、ムッシュもそこでやっと安心して、自分の定位置の座布団の上でリラックスの体勢に入る。
こんなしょうもないことを、いったい何度、そしていつまで繰り返していることか...。でも、ムッシュがいるお蔭で、今日も家の中には、共通の話題があり、穏やかな空気が流れている。まことに、“犬はかすがい”と感謝するほかはない。

ところで本日、11月3日はムッシュの誕生日。猫よりも柄が小さいので、散歩中に会う初めての方からは“何ヵ月ですか?”などと子犬と間違えられるが、満8歳になった。我が家に来たのは2005年3月(その経緯については2006年2月27日を参照)で、それからまだ3年半しか経っていない勘定だが、子犬のときから一緒にいるような気がする。
4歳半まで目黒にいたし、そのあとの3年半も横浜だから、チャキチャキの都会っ子なのだが、この夏から3ヵ月あまりこちらにステイしているうちに、すっかり山の子になってしまった。もともと好奇心が旺盛なので、縦横に走る変化の多い森の中の路は面白くてたまらないようで、散歩に出る度に、いくつかある好みのコースのどれかを、アップダウンなどものともせずに遠出する。

散歩中のムッシュと口に入れて運んできたドングリ 秋の路上は落ち葉だらけで、何とも言えない芳香が発生しているらしく、ムッシュは散歩中に、チリチリに丸まった広葉樹の葉はもちろん、細く尖ったカラマツの葉まで口に入れようとする。あとでゲツ!ゲツ!となって苦しそうだから、やかましく制止するのだが、ときに見逃してしまい、家に帰ってきてから、鼻や口のまわりに葉っぱの切れ端を付けているのを見て、驚くことがある。
傑作なのは、ドングリのコレクション。散歩の帰り道、急に首を立て、わき目も振らず前方を見据えて歩調が早くなるので、どうしたことかと思っていると、家に着いたとたん、ポーチのタイルの上に“ポトリ!”と何かを吐き出す。途中で拾ったドングリを口に入れて運んできたのだ。殻は固いし味もエグいだろうから、食べてお腹でもこわしたら大変だと、折角ながらいつもそこで、“ハイご苦労さん!”となるが、何度取り上げられても懲りず飽きもせずに持ち帰ってくる。そんなドングリが、15個貯まった。干からび始めたが、あまりに可愛いので、記念にと、まだとり置いてある。

森も11月に入り、最後の彩りを留めているモミジやドウダンツツジの他あらかたの木々は、ほとんど葉を落として妙に見通しが良くなり、ムッシュと散歩をしていても一際寒さが身に沁みるようになってきた。このところ毎朝、ダイニングルームの窓の先のアカマツの高枝に、子リスが松の実を食べにやって来るが、そろそろ冬篭りの仕度なのだろうか。
横浜の家の工事も、これからいよいよ佳境に入り、何かと細かくチェックしなければならないことも多くなって、もうノンビリばかりはしていられなくなるが、なんとか家族3人、何事もなく年末まで持ち応えたいものだ。

|

« 上棟の日 | トップページ | 不況とマーケティング »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 犬はかすがい:

« 上棟の日 | トップページ | 不況とマーケティング »