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2008年9月22日 (月)

私的・ちょっといい話(副題「一本のリード」)

一難去ってまた一難。幸い大過をもたらさず週末に東海上に去ったかと思っていた大雨と雷の一団は、すかさず次がやって来た。スッキリとした秋晴れはいつになるのだろう。
横浜で自宅の全面建替え工事を進行中なのは既報の通りだが、実はこちら山荘でも、7月下旬から始まったポーチの付け替え工事が同時進行している。が、節目節目で雨に祟られてきたためなかなか完成せず、横浜の方もそんなだと困ってしまうとヤキモキしている。

今月は、毎週のように仕事で東京に出た。先週末も新宿の顧問先に顔を出したが、ついでに私用も済まそうと、それに先立ってあざみ野に向い、かかりつけの歯医者さんに寄り、その足で自宅の工事現場もチェックしてきた。基礎のコンクリート打設が終わり、いわゆる“養生”中のようで、ほとんど全面がシートで覆われ、工事の人は誰もいなかった。
平日の午前中とあって、近隣にはロクに人影もなかったが、帰りがけに偶然、道向いのマンションに住むムッシュのお友達、ボストン・テリアの蘭丸君とそのママに出会って、2ヵ月ぶりの挨拶を交わした。

当日の東京・横浜は、まだまだ秋とは言い難い気温だったが、小雨が降ったり止んだりで、帰りのハイウエイバスも甲府を過ぎるあたりまではそんな状況。この分なら何とか家に帰り着くまでそのまま保つかと思っていたら、小休止のため双葉SAに寄ったところで、本降りになってきた。
そんなわけで、家内とムッシュが待っていた長坂は今日も雨だった。と、くだらないオヤジ・ギャグが出るほど、なぜか、長崎...じゃあなかった長坂からバスに乗って東京に出た日は雨に祟られる。この日を含めて、実に8割という有難くない高確率だが、たまたま台風と熱帯低気圧のハイシーズンだからだろうか。

先月末は家内が、引越し以来はじめての健診のため、バスで東京・横浜に出かけた。最初は自分でドライブして行くと言っていたが、ストレスがかかった状態で診てもらうのでは何もならないからとバスで行くことを薦め、いつもとは逆に、自分が長坂まで送迎した。
その夕刻、出迎えのためムッシュを後部座席に乗せて山の家を出たときは、まったく降る気配がなく、高原大橋に差しかかるころも、薄暮の中にまだ八ヶ岳も南アルプスもシルエットを見せていて、シメシメ今日は大丈夫だと思っていたら、長坂インターの傍まで来たらあたりが一気に暗くなり、やっぱり降り出してきた。

家内と待ち合わせていたのがショッピングモールの入口だったので、車を駐めてからそこまでチョッと歩いたが、ムッシュは、濡れては可哀そうとブルゾンの中に入れて、首だけ出したダッコで連れて行った。
幸い家内とはすぐに会えたので、何はともあれ早く家に帰ろうと、手一杯の荷物を受け取って車まで運び、バックドアを開けトランクに積み込み、ムッシュを懐中から後部座席に抱き下ろしたが、できるだけ雨に濡れまいと片手で傘を差しながらだったこともあって、そのときは、ムッシュの体に装着したハーネス(胴輪)から外したリード(引綱)を、いつものようにキチンと彼のお散歩バッグにしまわなかった。

そして翌日、散歩の時間になってそれを取り出そうとしたが、車中のどこにも見当たらない。後部座席の足下やシートとドアの間はもちろん、前部の助手席も運転席もトランクも、隈なく探したが見つからない。無意識にしまいこんではいなかったかと、お散歩バッグの中も底まで確かめたし、もしかして勘違いだったかと、家の中も再点検した。
しかし、やっぱり見つからないので、どうやら、雨中でのムッシュ乗降の際に、駐めていた車の周りのどこかに、落としたと思わざるを得なくなった。かけがえのない思い出が詰まっていたというほどのものでは、まだなかったし、色は少し違うがとりあえず代りに使えるものもあったから、当座は困るわけではなかったが、ムッシュや家内の手前、何となく面目なく、いつまでも心の中にわだかまるものがあった。

それからしばらく、自分はそのショッピングモールまで行く機会がなく、そこに買い物に出かけた家内が、落し物として届出がなかったかどうかサービスデスクに尋ねたりもしたが、心当たりは得られず、日が経つに連れて、自分の中のわだかまりも薄れていった。
そうこうしているうちに10日あまりが過ぎ、また仕事で東京に出る日が来た。先々週の週末のことだが、その日の帰りは珍しく雨に遭わなかったので、迎えに来てくれた家内がついでの買い物をしている間、ムッシュを遊ばせながら、前回の駐車場所の近くまで行ってみた。“なくてもともと。でも、もしや...”という一縷の望みを胸にして。すると...

遠目だから最初はハッキリとはわからなかったが、パーキングスペースと建物の間を仕切るアルミパイプのフェンスの下の方に、何かが引っかかっている...というよりも、キチンと置いてあるではないか。
“エーッ!ヒョッとしたらあれは...”と、足早にそこに近づくと、何と、ありました!そこに!あのほとんど諦めかけていたリードが!しかも、濡れてもおらず、泥んこにも皺くちゃにもならず、きれいに折りたたまれ束ねられた状態で...。大げさかも知れないが、自分にはそれが、まさに奇跡のように思えた。

大金を入れたまま落とした財布が無事戻ってきたわけでもないのだが、そのときは何とも言えず嬉しくて、いい歳をして人目もはばからず、思わず“あったー!”と叫んでしまった。そのときの表情は多分、グチャグチャに崩れた泣き笑いだったと思う。
どこのどなたがそこまで気遣ってくださったか想像もつかないが、多分、ご自分も愛犬を飼っておられる方が、リードを失くした飼い主の気持ちを察してくださったのだろう。そのお気持ちには、本当に心温まる思いがし、もし同じような状況に出会ったら自分も必ずそうしようと、固く心に誓った。

モールのサービスデスクに家内がそのことを報告しに行ったら、“良かったですネー”と我がことのように喜んでくれたそうな。
また一つ、このあたりに住む人々の何気ない優しさに触れて、八ヶ岳山麓の暮らしが一層好きになった。

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