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2008年5月26日 (月)

広告電通賞、新たに「ダイレクト広告賞」制定

先週は、広告電通賞選考会に明け暮れた感じ...と言ったらチョッと大げさか。毎日、何らかの種目の選考会が行われ、自分は月曜の「ダイレクト広告」と木曜の「SP広告」そして金曜の「最終選考委員総会」に出席した。
「ダイレクト広告」は、これまでなかったのが今年から新たに制定されたもの。期待していたことが実現したわけで、まずは喜ばしい。賞の制定が発表される前に、SPだけでなくダイレクトの選考委員も引き受けてくれるかという打診があったが、この賞は自分も提案していたことであり、喜んでお引き受けした。勉強にもなるし...。

ここで規定されている“ダイレクト広告”の概念は、“ダイレクトマーケティング”と必ずしもイコールではなく、「ダイレクトマーケティングの“一環”として制作された広告やコミュニケーションツール」ということで、具体的には、「資料・情報請求、試用(無料・有料トライアル、試乗等)の申込、商品やサービスの購入、登録・入会、コミュニティ参加、来店誘引、寄付など、“広告接触者のレスポンス行動”や“個人情報の提供を伴う関係構築”を目的とする広告」とされている。
“ダイレクトマーケティング”という概念だと、さまざまな目的を持った局面の連続・循環というマクロなプロセスになるが、ダイレクト広告はその中の“一環”と断ってあるので、そこにニュアンスの違いを汲み取るべきなのだろう。

選考のポイントは、①戦略アイディア(広告の目的・課題は何で、課題解決のために、どんなメディア/ターゲット/訴求方法などの戦略を立案したか)②クリエーティブアイディア(課題解決のために、どのようなクリエーティブの切り口や表現を実施したか)③レスポンス・成果(レスポンス数量、顧客データ獲得数、費用対効果、CPRの数値など、広告の成果)の3点。そのうち、クリエーティブのウエートが40%、戦略と成果はそれぞれ30%ずつのウエートで評価されることになっている。
日本における“ダイレクト”関連のアワードでは、この他に日本郵便が主宰する「日本DM大賞」があるが、あちらはメディアがダイレクトメールに限定されているので、応募企業や適用分野にどうしても広がりが乏しくなる嫌いがある。その点こちらは、応募規定から想像して、どんな企業と適用分野の広がりになるかと期待させられ、選考の前から楽しみでさえあった。

最初なので、もしかしたら応募数が少ないのではと懸念していたが、そんなこともなく、選考するのに必要十分な量ではあったと思う。選考にあたっては、全応募作品についての上記のポイント①(戦略)と③(成果)が記入された「企画概要」を前もって熟読し、その上で、当日の選考開場に提示されている上記②にあたる制作物(クロスメディア、ニューメディアの場合はそれらが視覚的にプレゼンテーションされたパネル)をつぶさに見させてもらったが、結果から言うと、自分が評価したものと、選考委員全員の投票によって選ばれたものの間には、かなりの違いがあった。おそらく、大部分の選考委員の方々と自分の、視点の差異によるものだろう。
自分は選考にあたって、“達成・解決すべき「目的・課題」を設定し、そのためにどんな「戦略」と「クリエーティブ」で、どういう「成果」を上げたか”というところが、首尾一貫して明確に設計・実現されていたかどうかを重視し、その意味では“戦略”と“成果”を合わせて60%のウエートを置いた。“クリエーティブ”は当然重視するにしても、あくまでも40%以上のウエートは置かなかったわけで、その辺りが見解の分かれ目だったのではないかと思う。そのことの是非については、いろいろな方の意見を伺いたいものだ。

率直な感想と提言が1~2ある。全体的を通じての印象として、“これはどう見てもSP(セールスプロモーション)キャンペーンではないのか?”と思わせられるようなものが相当数あった。戦略・クリエーティブはともあれ、成果を“ダイレクト広告的”に捉えていないのだ。つまり、広告の発信量と直接関連付けたレスポンス率として、またはそのための投資額に対する収益率あるいは損益レベルとして算出していないということである。
また、通信販売広告でありながら、損益がどうだったか、それまでの標準戦略(コントロール、ダイレクトマーケティングを知っている方ならご承知のはず)と比較してレスポンス率または利益率に改善があったかどうかに言及していないものも見受けられた。

これはどちらも、失礼ながら、応募広告主の“ダイレクト広告の場合の成果をどう把握すべきか”ということについての理解・認識不足のためかも知れないし、あるいは応募規定での“成果に関する記入必要事項”についての要求不足によるものかも知れない。
自分は、ダイレクト広告の成果というものは、単なるレスポンスまたは獲得顧客データの絶対数ではなくて“広告発信量に対するレスポンス率”で表わされ、“CPRは採算点のそれに対してどうなのか”ということがわからなければ、そしてそれらもROIも“コントロール”(現在の標準値)に対してまたは“設定目標値”に対しての“改善度”または“達成度”を見なければ、評価のしようがないと思っているので、あえてこういう指摘をしている。

広告主の事情や意向によって具体的な数値を公開できないこともあろうが、そういう場合でも、レスポンス率やROIやCPRが、基準(現在標準または目標)値に対する改善度が“顕著だった”とか“まずまず”だったとかぐらいの表現をしてもらうことはできないものだろうか。せめて、投資に対して十分採算がとれたとか、そこそこの採算度だったとかいうぐらいの表現でもいい。
今後、広告主サイドにおいて、あるいは本賞の事務局において検討してみていただければ幸いと思う。

もう一つ、“部門”の分け方について。作品現物を見て比較評価する際の印象に形式から生じる差があってはとの配慮からか、「グラフィック」「ダイレクトツール」「テレビ・ラジオ」「クロスメディア・ニューメディア」という“メディアタイプ別”になっているが、「SP広告賞」が昨年から変ったように、“目的別”を考えてはいかがなものだろうか?たとえば「商品・サービスの購入、登録・入会、寄付」「資料・情報請求、試用」「コミュニティ・イベント参加」「来店誘引」「その他・複合目的」などというように。
メディアやクリエーティブはその目的を達成するための戦略だから、成果を生み出すことができさえすれれば、表現もかたちも予算の投入し方も、いろいろあって構わないのではないかと思うのだが。

などと、うるさいことばかり言っているが、素直にポジティブな印象を持ち、意を強くした面もある。一つは、予想以上にウエブ、モバイルというニューメディアがよく使いこなされ、バイラルやブログなどソーシャル・ネットワーキングの手法も活用されていたこと。また、伝統的なマスマーケターだった企業が、意欲的に“ダイレクト広告”への取り組みを開始し始めたと実感できたこと。そしてその一方で、長く通信販売に取り組んできた伝統的なダイレクトマーケターは、さすがに明確な戦略構築力と、それに対するキチンとした成果の把握・分析力を体得しているなと、改めて感じさせられたこと、等々。

木曜日の「SP広告」の最終選考会でも、従来のSPの常識からすれば意外な業種・商品の広告主が、伝統的な手法だけにこだわらない柔軟・新鮮な戦略発想とそれによる顕著な成果で最高得点を獲得し、選考委員一同から思わず、複雑な気持ちのこもった感嘆の声が上がった。
応募企画全体を通して見ても、ダイレクト広告の場合同様、クロスメディア戦略の中へのデジタルメディアの取込み方と、それ独自の手法の活用の仕方が、年々進化してきているのを痛感する。ダイレクト部門やSP部門への応募は、今や“広告”というワクで括るのは難しくなっているのではなかろうか?

基本的に“メディア別広告”の部門分けで始まり、続けられてきた広告電通賞だが、この異色の2部門が、今後はどんなダイナミックな進化・変容を遂げてゆくか楽しみだ。

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