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2008年2月11日 (月)

だから顧客が去って行く...

歳をとって気難しくなったのか(本人はそうも思っていないけれど)、それとも生来の気ままな性格のせいか、長年客として何かを購入したり利用したりしていた会社や店の対応の悪さが我慢できなくなって、大人気ないとは思いつつもつい腹を立ててしまうことが多くなった。この10年くらいを振り返ってみただけでも、そのサービスや接客の不適切さによって不快感を味わわされた経験は、1度や2度ではない。
思い出せるだけでも優に20を超える回数で、その中の何社か、および何店かとは、それっきりの縁となってしまった。また、決して不満がなくなったわけではないけれども、商品そのものには価値を認めざるを得ず、他に替え難い部分があったりするため、イライラをこらえながら仕方なく利用し関係を続けている会社や店もある。

どんな会社や店がそうなのかというと、たとえば

  • 預金するときには揉み手をして家まで出向いてくるくせに、それをちょっとでも動かそうとすると、とたんに手の平を返したようになり、手続きのために平気で何度でも店に足を運ばせ、そのうえ客を客とも思わぬ高ピーな態度をとる大手信託銀行。(本ブログ2006年9月14日参照)

  • 休みで予定があるのに車に不具合が発生して困っているとき、相談をしても何の親身なサポートもしてくれず、自分たちだけは早々と長期の夏休みに入って平然としている、技術志向の自動車メーカーとディーラー。(ウエブ・エッセー「中澤功のカウンターの片隅から―第4話」参照)

  • 客の面前ではいかにも行き届いた心遣いをするかのように見せているが、受付と売場以外には専門の顧客対応機関もなく、電話をすると受話器の向うから、仲間うちの当惑気な本音が聞こえる老舗百貨店。(「同上―第6話」参照)

...などなど。他にもいろいろあるが、こういった会社や店に共通して感じられることは、自分たちの暖簾や商品に自信があるのか、それにすっかりあぐらをかいてしまって、何様かの気分になっていること。顧客の側からものを考えることができず、自分たち(会社や店)中心の考え方しかできなくなっているのだ。
腹立ちまぎれに個人の感情だけでものを言っているわけではないけれども、こういう会社や店は、いまは一見安定しているかに見えても、実はきわめて危なっかしいバランスの上にあるのではないかと思う。いつの間にか、長年支えてくれていた顧客が少しずつ離れて行って、気がついたときには足元がグラグラになっていかねないからである。

1件を忘れたころにまた1件と、こんな思いをさせられることがいつまで経っても尽きないので、またかと思われてもときどき苦言を呈しておこうと、今回も思い立ったわけだったが、昨年中にクリッピングしておいた情報資料に改めて目を通しているうち、このテーマについての格好のコメントを見つけたので、要旨を紹介しておこうと思う。
データベース・マーケティングの専門家アーサー.M.ヒューズが昨2007年10月1日号の「Target Marketing」誌に寄せた、“Why Customers Leave...”と題する一文である。

「1人の新規顧客を獲得するためには、1人の既存顧客を維持するための5倍(10倍という説も)のコストがかかる」などとも言われているように、「既存顧客の維持」は今日の企業経営とマーケティングの重大な関心事だ。したがって、顧客は“何によって惹かれるのか”あるいは“なぜ離れてゆくのか”ということは常に議論の的だったが、これまでは、“より安い価格が重要”、いや“関係の構築こそが鍵”という2派に分かれていた。
そこで最近、コンサルティング会社「オリバー・ワイマン・グループ」が、ホテル・ガソリンスタンド・薬品店・食料品店といった業種の顧客に対し調査を行ったのだが、その結果、 “価格”すなわち商品をいつも安く提供しているかなどによってその会社や店に対する愛着が左右される顧客は全体のわずか15~30%で、70~85%の顧客のそれは、“関係”すなわち自分が客としてどう扱われるかによる、ということが判明した。また、“価格志向”の顧客が“関係志向”の顧客よりも利益性が低いのは自明の理だが、価格だけにポイントを置いたマーケティングを続けてゆくと、関係志向の顧客までもが次第に価格志向に染められ、顧客全体からの利益性も下がってくるということも、この調査でわかったそうだ。

ヒューズは、この調査や自分自身の長年の経験から、顧客が自分が愛着を持っていた会社から離れてゆく可能性のある理由として、①顧客自身の死亡、②価格についての不満、③商品についての不満、④顧客としての処遇についての不満――の4つを挙げ、経営者は常に②が最大の理由と勘違いしているが、④こそが最も普遍的な、顧客をそこまで走らせる要因であることが、数多の業界での調査によって示されていると言っている。
何故そうなのかといえば、顧客がある会社や店に心を惹かれ定着するのは、“価格”だけの問題ではなくて、「自分がどう、どれだけ認識されているか」「気持ちのいいサービスを受けているか」「情報が十分得られているか」「自分にとって有用性があるか」「従業員は友好的か」「明確なブランドの性格が打ち出されているか」そして「商品の品質と価格はどうか」というさまざまな面での関係性全体の問題だからであると彼は言う。

いろいろクレームを寄せてくる人々はまだいい方で、関係志向の顧客のほとんどは、会社や店が彼らを愛する気持ちと彼らが望み期待する遇し方を忘れたとたん、黙って購入・利用を止め、去って行くが、これを防ぐためにはどうしたら良いのだろう?
ちょうどここに、ヒューズが提言する「重要顧客の離反を低減する5つのアイディア」なるものがあるので、参考までに掲げておく。

  1. 顧客がどんな人かを熟知しておくべし:データベースに彼らのプロファイルと接触履歴を把握しておくこと。コールセンターや店舗などあらゆる顧客接点の従業員に、誰が重要顧客なのかを周知徹底し、その人々をそれに相応しく遇するよう教育する。

  2. コミュニケーションを絶やすな:関係を維持し続けるための特別な方策を講じ、実行すること。そしていつも、顧客に対する感謝の気持ちを忘れない。

  3. 重要顧客のためには熟練した顧客サービス係を配置せよ:そういう顧客からの電話は、「着信自動分配装置」(ACD)で自動的に識別して、直接その専任顧客サービス係につなぐ。

  4. 公平性を貫く:購入額が高ければ高いほど、また取引期間が長ければ長いほど、より多くの特典が受けられるようにし、簡単には離れ難い心理にさせる。

  5. 金銭的なことはあまり強調しない:沢山購入し支払ってもらったからといって、それに対する感謝の気持ちを金銭で表わそうとしてはならない。顧客は、そうではない、親しい隣人や友人に対するような心のこもった感謝の表現を望んでいるのだから。

米国人の感覚に基づく考え方だから、自分たち日本人には100パーセントはピンと来ないが、それでもうなずける部分はある。また、ここで言われていることは基本的にB-to-C(対個人消費者)マーケティングの話だが、B-to-B(対企業)の場合にも、それは当てはまる。

いまではすっかり個人消費者の立場になりきって、何かというと企業や店には物申してばかりいる自分だが、たまにはそんな巷の声にも耳を傾け自社・自店を見直してみようというところが出てきてくれたら、その会社や店のためにも喜ばしいとも思っている。

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