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2007年12月10日 (月)

ブログのマーケティング効果

早いものでこのブログも、あと1ヵ月足らずで3年目を迎える。タイトルの通り、感じたことや思い出したこと、考えついたことやこれはと思う情報などのメモ代わりのつもりで、誰に頼まれたわけでもなく自分のために書いているのだが、公開している手前、正直なところウケないよりはウケた方が嬉しいし、アクセス数も多いに越したことはないという気持ちはある。それ以上の色気は、別に何もないのだが。
世間には、個人のものでも月間アクセス何万、何十万という人気ブログが結構あるそうで、そうなるとメディア価値があると見なされて広告掲載などのターゲットにもなるらしいが、いくらアクセスが多くても半数以上(54.4%)はザッピングというデータ(米国Technorati)もあるし、よほどコンテンツと広告製品・サービスがマッチしていない限り、クリックはおろか注目効果すら発生しない可能性もある。

しかし、昨今インターネットがショッピングのための情報収集に多用されるようになってきて、構造的に検索エンジンと相性のいいブログはその露出度が高まり、いきおい、ブログから発信されるメッセージが、人々の購買行動に何らかの影響力を及ぼす可能性がある(特にインターネット上において)ということがわかってきた。
そこでこの特性を逆方向から辿って、企業が対象客を自社の主たるコミュニケーション・ステージに、あるいは望ましい購買ポイントに導くため、ブログというソーシャル・ネットワーク効果のある情報発信形式を、マーケティング目的を持って戦略的に利用するようになったのは当然の成り行きと言えるだろう。ご存知の方もいると思うが米国では、ゼネラルモーターズ、マイクロソフト、シスコ、サンマイクロシステムズ、デルコンピューター、ウェルズファーゴ、P&G、マリオットなどのグローバル企業が、社員・企業関係者・ファン・評論家・ジャーナリストなどから成るコミュニティ・ブログというかたちでの情報発信によって、広報や製品・サービスのブランディングなどに一定の成果を上げている。日本でも、若手起業家などのいわゆる“社長ブログ”が流行っているし、まだ事例は少ないけれども、日産自動車やシャープなどで“キャンペーン・ブログ”も試みられている。

ただ、2年ぐらい前だったか、ソニーの新製品の体験談ブログの書き手が実は雇われライターだったことがバレたり、ウォルマートの傘下店紀行ブログが契約PR会社の制作によるものだったと判明したりして、いわゆる“やらせ”ではないかと問題になったことがあった。似たようなことはこれまでにも、ブログに限らず他のメディアでもなかったわけではないが、ブログの場合はその内容がいかにも個人的体験談や感想に見え、しかも口コミ効果もあるところから、みんながだまされていたように感じて非難が捲き起こったのだと思う。
このようなやり方を“ステルス・マーケティング”などと名づけている向きもあるようだが、巧妙に見えていてこれは、企業の信用を一気に失墜させる危険もある手法で、とても“マーケティング”と呼べるような代物ではない。混同を避けるために言っておくならば、先に挙げたような米国企業のブログは、企業自身がオフィシャルに設けたオープン・ディスカッションの場で、当然“ステルス”などではない。

では、これこそが“マーケティング”かと問われれば、やはり首を捻らざるを得ない。今のところこのかたちは、“Corporate Blogging(企業ブログ)”という呼ばれ方をしているが、まあ、マーケティングがらみの効果が少しでもあれば、たちまちそのやり方が「○○マーケティング」と呼びそやされるようになるのは世の常で、米国では既に、「ブログ・マーケティング」という本も出版され、その分野の専門家、専門サービス会社も存在している。だが、ブログ・メッセージの発信とそれによって発生するビジネス成果の因果関係が、十分な検証事例に基づいて客観的・数値的に測定・評価・体系化されているわけでもない今のところは、そう称するのはいささか早計に過ぎるような気がする。むしろ今の段階は、企業のマーケティング目的を促進し効果を増幅するための“コミュニケーション手法・戦略”とでも言った方がいいのではなかろうか?
日本でもブログ・マーケティングという呼び方は、ある程度普及しているようで、人気ブログ上での製品やサービスの広告、企業が関わるブログを通じての企業広報、製品・サービス選択のための情報提供、ユーザー・サポートなどのことを指すとしているが、率直に言ってこの認識も、皮相的で先走りの感がある。

自分がブログ・マーケティングと言われているものについて感じている問題点は、ここで7月2日に書いた「ソーシャル・メディアでマーケティングが変るのか?――DM DAYS NEW YORK 07から」(よかったらそちらも読み返していただきたい)の中でも指摘している“効果測定”のこと。今回あらためて、いろいろな資料・情報に当たってみたが、誰も明確に言及していない。手法・戦略としての適用体系が確立されていないのだから、効果測定についての考え方が定まっていないのも当たり前といえば当たり前だが...。
なぜそこにこだわるかと言えば、もしそれを“マーケティング”と言うのなら、これがその基本中の基本になるはずだからだ。自分がダイレクトマーケティングに魅かれたのも、その部分の考え方と方法論が実に明快だから(興味のある方は拙著「体系ダイレクトマーケティング」のその項をご参照あれ)で、つい先日も、顧問を引き受けている会社のダイレクトマーケティング勉強会で、若い人たちにそのことを力説してきた。

ところで、“ブログのマーケティング効果”とは何だろう?“マーケティング”という概念をどう捉えるかによって違ってくるが、「販売」「広告」「PR」など諸説ある。しかし、成功とされている事例に共通しているのは、どうやら、「ブログには、企業の販売拠点や顧客接点で、成果の下支え・底上げ効果を発揮する力がある」ということのようだ。
自分も上記のブログで、「企業には、その業種・業態・客層によって、成果を発生させるために本来最も適切なコミュニケーションと流通のチャネルがあり、ソーシャル・メディアは、もともと理由があって使われ続けてきたそのチャネルをあくまでも中心に置いた上で、その成果を支援・増幅(サポート)するためのものと位置づけ、コンテンツとタイミングを連動させて使うのが最も有効なのではないか?」という仮説を提唱しているが、今回調べてみて、たまたまその仮説と一致している実際の成果もあることがわかった。だがこれだけではまだ、立論するにはサンプル数も十分とは思えないので、今後ともより多くのケースをウォッチして、検証して行く必要があると思っている。

ところで、もしそういう考え方に立つならば、“ブログのマーケティング効果測定”とは、それとの連動を図った時期において本来のチャネルで発生した成果を数値的に把握、それをブログ非掲出の時期の成果数値と対比させて差値を求め“サポート効果”として認識し、さらに、それとその時期のブログの露出度を表わす数値(掲出時間・期間、アップ本数など、ページビューやインプレッションとも意味が違うと思うが何と言えばよいのか)との相関関係を数値的に見出すこと――になるのではないかと考えるが、どうだろう?
ブログの露出度、テーマ、テキスト、デザイン、ライターなどの違いによって、当然その相関数値も違ってくるはずで、そういった様々なテスト・ケースを重ねることによって、ブログを使ってマーケティング効果を生み出すための戦略体系も見えてくるはずだ。もちろん、個人ブログだろうと企業ブログだろうと、根本的にそれ自体に魅力(カリスマ性というのか?)があってアクセス数が多くなければ、そのマーケティング効果の測定もへったくれもないわけで、効果測定の理屈をこねる以前に、多くの人が読みたくなる人気ブログにならなければどうしようもない。

よくわけもわからずに始めたが、ようやくこの頃、個人的にもマーケティング的にもブログが面白くなってきた。と言っても、技術的なことはほとんどわからないのだから大きなことは言えないが...。
ともあれ、ブログ・マーケティングについては、もっとよく勉強してから、またの機会にジックリと論じさせてもらうことにして、この自分のブログではこれからも、余計なことは考えず、心に映りゆく由無し言(徒然草か!)を気ままに綴り続けて行こうと思っている。宜しかったら引き続きご愛読のほどを。

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コメント

自分がやっているブログでも、ときどき
「昨日紹介されていた物を買いました」といった報告を聞きます。
アフィリエイトをやっていないので儲かるわけではないのですが、
自分が「いい」と言った翌日に買う段階まで行く人がいることに驚きました。

車や住宅のような物はそうもいかないでしょうが、
文房具やお菓子のような物ならその程度でも購入まで至るケースが多いようです。
特に「知っていれば絶対買っていたが、たまたま知らなかった」という人が多く、
いかに企業のメッセージが消費者に届いていないか、身にしみてわかりました。

上でもやらせ問題を取り上げられていますが、
やはり信頼性がいちばんなのかな、と思います。
その次は志向性、でしょうか。
趣味が合う人がすすめるなら間違いない、という空気はあるように思います。

投稿: RJ | 2007年12月10日 (月) 14時24分

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