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2007年3月 5日 (月)

話が長いと伝わらない

先月末、東京八重洲ホールで開かれた「日本ダイレクトマーケティング学会」「DMフォーラム」に参加、P&Gジャパンの黒木昭彦マーケティング・ディレクターと明治大学大学院の上原征彦教授ら2講師の話を聴いてきた。

「日本ダイレクトマーケティング学会」とは、国内で自分が所属している唯一のダイレクトマーケティング関連団体で、「日本通信販売協会」「日本ダイレクトメール協会」「日本テレマーケティング協会」といった特定のフィールドのみを代表する業界団体とは異なり、ダイレクトマーケティングに関する包括的な視野・目的を持ち、したがって入会資格を希望者の活動分野によって制約したりしていない、業界横断的な相互研鑽組織だ。
6年前の2001年に設立され、“学会”といっても学者だけで構成されているわけではなく、正会員は“学識経験者”ということになっているけれども、広く若手の実務家にも門戸を開き、大学生・大学院生の次世代ダイレクトマーケターの育成にも力を入れている。

主たる事業として、年次の「研究発表大会」を初めとする会員によるプレゼンテーション、会員同士のワークショップ、会員またはゲスト・スピーカーによる講演会・セミナーなど、学会全体としての、またその中の各分科会ごとの学習研究活動が盛んに行われているが、「DMフォーラム」(先日郵政公社の主催で行われた「ダイレクトマーケティング・フォーラム」と紛らわしいがそれとは別)とは、「研究発表大会」と共にその中心的な定例イベントで、今回で19回目になる。
自分も2005年6月の第12回で、「体系ダイレクトマーケティング」の出版記念講演をしたが、今回は一受講者の立場で参加した。

ビジネスの第一線から引退して久しく、今はどこの業界団体にも属さず束縛されず、自由気ままにものを言い、また振る舞わせてもらっているが、やはり、自分の専門分野に関する勉強と人間関係は常に継続している必要があり、そのための交流・情報交換の場として、国内・海外に関わらずこういう場には、話す立場であれ聞く立場であれ、できるだけ参加しようと思っている。
ここ何回かのフォーラムには、テーマ的にそれほど興味を持てなかったのだが、今回の“メーカーのダイレクトマーケティング”というテーマは、ダイレクトマーケティングというものを“単なる通信販売ではなくて汎業種・業態的な統合ビジネスシステム”として巨視的に把握・解釈することを提唱している自分には、たいへん関心の持てるものであり、また、そういう自論が講師のお二人の話とどう重なり合うか、あるいは合わないかにも興味があったので、大きな期待を持って参加した。
それに、いつもほとんど話す側にばかりいるためなかなか気がつかないでいる自分の講演の至らぬ点についての改善のヒントを、お二人のスピーチから学び取りたいとも思った。

黒木氏のプレゼンテーションは、大筋として、インターネットの出現後、消費者のメディア環境が変化して、ブランド〈商品〉によっては必ずしもテレビCMが有効に作用しなくなり、消費者が自分のライフスタイルに合わせて情報収集できるコミュニケーション・メディアが受け入れられるようになってきて、したがってマーケティング目的を達するためには、消費者のタイプによってメディアを選ばなければならなくなったという話。
そしてその事例として、同社が市場を共有する別業種企業数社とコラボレーションし、“WOMAMA”(WOMAN+MAMAを意味する造語)という新しい顧客像を想定、インターネットのウエブサイトを通じてそれを顕在組織化して、メルマガによって継続的情報提供と関係強化を実現した結果、同社のこの客層向けのブランド(赤ちゃん用品)に対する注目度が著しく高まったというケースが紹介された。

これは自分にとっては、米欧ですでにそうであるように、日本でも今まさに、消費財メーカーに代表されるマスマーケターがダイレクトマーケティングの原理と機能を導入して顧客の顕在・固定化と直接関係の構築・強化に向かっているという話に聞こえたのだが、同氏は、意図してか意図せずしてかはわからないが、あえてダイレクトマーケティングという言葉は使わず、PR活動の成功事例としてこれをとらえているという見解を示した。
質疑の時間に、同社の「リレーションシップ・マーケティング」の実態に対する興味から、P&Gジャパン全体としての顧客・見込客データベース保有・利用状況について尋ねたが、明確な答えは得られなかった。米国本社にくらべてジャパンがまだ、かなり遅れた状態にあるのかも知れないし、あるいは単に、同氏がこれまでベビーケア・ブランドの専任だったため全体を把握していないだけのことなのかも知れない。今後、機会を改めて話を聞かせてもらうことにしよう。

上原先生は、この半世紀のメーカーの流通戦略の推移から、マーケティングは“つくったものを売る”という時代から“売れるものをつくる”という時代を経て、今は“まずリレーションシップを構築し、そのプロセスの中でモノやサービスが売れてゆくことを予定する(需要を見つけ出す)”時代になっていると見ることができる、という話だった。
そして、今や消費者は、企業が一方的に提供する情報の単なる受信者ではなくて、自分で集めた情報の中から自分の満足を導き出してゆく“情報検索者”であるから、“情報をダイレクトに獲得することのできるダイレクトな関係”を構築することが必要であり、それがこれからのダイレクトマーケティングなのだと結論づけていた。

また先生は、最近不祥事を引き起こしているメーカー企業を例にあげて、彼らがいかに“売り手中心”の観念に凝り固まって、“顧客中心”に頭を切り替えられないでいるかを、体験的に語っていたが、自分もそのことについては、いろいろな場所で同様なニュアンスの話をしたり書いたりしているので、大いに共感するところがあった。

ところで先生の話は、程よい(少なめの)量の中身と、絶妙な語り口が、たいへん参考になった。“つかみ”といい、“間”のとり方といい、“振り”といい、さすがに上手い!
失礼な言い方かも知れないが、あれは、学生というわがままな聴衆を相手に永年“しゃべり”で商売されている方の、みごとな“芸”の境地といっても良いのではないだろうか。

自分もこれまで永い間、ビジネスマン相手の講演は数え切れないほどこなし、3年間という短期間ながら大学生相手に講義する機会もあって、いっぱしのプロ・スピーカーを自認していたが、先生の“話芸”に接して、まだまだ修行が足りなかったことを悟らされた。
思い返してみると、有益な情報をできるだけ多く提供しようという気持ちが先走り、エンタテインメント性が二の次になって、消化不良を招いていたこともあったかも知れない。
自分でも「広告クリエーティブ論」の講演の中で、“あれもこれも伝えようとすると、かえって重要なことが伝わりにくくなる” などと言っているのに...。言行不一致を深く反省。

...と言いつつ、このブログもまた、長くなってしまったんですから~  残念!!

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コメント

大学の先生も、キナ臭い専攻の先生の方が面白かったりするのはなぜでしょう?^^;

そんな方々に共通してるのは、1スライド1メッセージ。
見事に1センテンスしか書いてない先生の時は、メモとる方も必死です。

投稿: 課長007 | 2007年3月12日 (月) 02時33分

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