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2007年3月

2007年3月26日 (月)

買いたいものを探せない

なんだかんだ言っても、春分の日を過ぎるとやはり、春らしくなる。と、ブクブクに厚着をしていた寒がり小父(爺?)さんも、そろそろ衣替えでもしようかと、久しぶりに何か買う気になってくる。

この歳になると、色気はサッパリで(ホントです)、食い気は多少(選んで少量)というところだが、洒落っ気だけはまだまだ抜けなくて、季節が来ると、何か新しく着るものが欲しくなるのだ。あげく、いくら古いものを処分しても、自分のクローゼットだけではとても足りなくなって、巣立った子供の部屋のクローゼットまで侵食する始末。“新しいものを買うのはいいけれど、古いものはどんどん捨ててネ!”と、いつも注意を受けている。
スーツなどは、特定の数着以外はもうほとんど着る機会がないだろうから、後生大事に仕舞い込んでいても仕方がないのだが、我々世代はどうも、「捨てられない症候群」が身に染み込んでいるようで、困ったものである。...おっと失礼、本日はそういう話ではなくて、買いもののことだった。

買いたいものを、たとえばメンズ・ウェアに絞るとして、世の同世代諸氏は、その気になったとき、どういうプロセスで欲しいものを見つけるのだろう?多分、まず奥さんに相談すると、奥さんが新聞折込みチラシなどでデパートのセール情報を見つけてくれ、最寄りの店に同伴し、あれこれアドバイスし且つ決めてくれるというパターンが一番多いのではないだろうか?売り場で奥さんに“これにしなさいよ”などと言われて大人しくそれに従っているお父さんたちをよく見かけるから、おそらくそうだろうと思う。

自分のことを言っているのではないかって?イヤ、そういうときも確かにあるが、何を隠そう、本来自分の場合は、メンズ・ウェアなどの買い物に関しては主体的行動が認められているので、おおよそ次のどちらかのパターンになる。
①    あまり深く考えず気の向いたときに、行きつけの、売り場や品揃えなどもよくわかって
いる店(最近はもっぱらデパート)に足を運び、時に店員に尋ねたりしながらブラブラ見て回って、自分の求めているイメージや条件に合ったものが見つかったら買う。
②店にはこだわらず、求めているイメージと条件を表すキーワードであらかじめネット検索し、ピッタリではなくとも大体マッチしているものを置いてある店が見つかったら、そこに足を運んで、品物を現実に確認した上で買う。
①のパターンでは、ごく稀にドンピシャリ欲しかったものが見つかることもあるが、くたびれ儲けのことが圧倒的に多い。だから②のようなパターンを試みるわけだが、それらしきものを探し出せても、実際にそれがある場所はネットショップやネットオークションばかりで、まず、デパートなどの現実の店舗には行き当たらない。

自分も、書籍やCDやコンピューターおよび関連機器、ソフトウェア、ギフトなどの購入には、ネットショップをよく利用するが、ウェアに関しては、デザイン、サイズ、生地の色・風合いなどのデリケートな違いが着心地に大きく影響してくるので、どうしても実際に試してみないと気が済まず、これだけはネットショップで買う気にはなれない。
そこで、当てもないままとりあえずデパートなどへ足を運ぶわけだが、日本のデパートはなぜか売り場がブランドごとに区分されているので、徹底的に探そうとしたら、自分の足で、全ブランドをしらみ潰しに当たらなければならない。あるいは過日のブログにも書いたように、姉妹店や競合他店のハシゴをする破目にもなる。疲れるから、よほど執心しているときでもないと、とてもそんなことはしていられないが...。
そんなときは、自分の欲しいものをさまざまなキーワードで検索できる、店内全商品総合の、または少なくとも売り場ごとの、店内ポータルサイトでもあれば良いのにとつくづく思う。それに、個人のコンピューターからもアクセスできたら、もちろん申し分ない。

日本では、売り場構成だけでなくウエブサイトも、トップ・ページが本当は基本であるべきはずの商品ベースのポータルにはなっていないので、今のところそういう願いは見果てぬ夢なのだが、米国では、この夢に近いことを、「JCペニー」という老舗デパートが最近、現実化している。資料を見返していたら、ネット・ビジネスマガジン「マルチチャネル・マーチャント」に、昨年10月1日付でその事例が掲載されていた。
キーワードではなく、ジーンズとかドレスシャツとかいう一般的な商品名での検索のようだが、POSと連動した系列全店舗統合のシステムによって、どの店舗のどこの売り場からアクセスしても、あらゆるブランド・スタイル・サイズ・色・素材・価格などの商品が今どこにあるのかが、仔細にわたって、たちどころにわかる仕組みになっているようだ。
このシステムの基盤になっているPOSの統合商品データベースには、当然、個人のコンピューターからもアクセスでき、オンラインで注文した人は、宅送してもらえるだけでなく、最寄りの店に取り寄せてもらって自分で受取りに行くこともできる。またその逆に、店で買った人が宅送してもらえるのも当然のことになっている。

こういうことが可能になるのは、米国のデパート(だけでなく専門店も)が、来店客だろうと、ウエブサイトのビジターだろうと、カタログの読者だろうと、客であることに何の変りもないと、どのチャネルからの客にも基本的に共通の商品・サービス・情報を提供するという顧客本位のスタンスをとっているからで、その単純だが当然で重要なポリシーは、上記の「JCペニー」だけでなく、「メーシーズ」「ブルーミングデールス」など、他の大手デパートにも一貫しており、彼らのウエブサイトを見ると、そのことがよくわかる。
これが、流通小売業にとっての究極の戦略である、“ほんとのマルチチャネル・マーケティング”なのだが、その点、日本のデパートは何を考えているのだろうと首をかしげてしまう。その事業組織も、店内構成も、ウエブ・デザインも、未だに販売者(店あるいはブランド)の立場からしか考えられていなくて、自分が売りたいものを前面に押し出し、客が欲しいものを簡単には見つけ出せない仕組みをつくっている。
おまけに、ウエブサイトという最先端の情報発信システムを使い、カタログという絶好のブランディング・ツールを持ちながら、それらを店舗事業とは別扱いにして、商品も顧客も差別している。論より証拠、主だったデパートのウエブサイトを見ると、ネットでは、デパートの通信販売部門の商品は買えても、店舗のブランド品にはアクセスできないのだ。

ウエブサイトは、店舗だけでは物理的に限界のある商品情報を、より多く、そしてより早く、かつより安く伝えることのできる、そしてあらゆる流通の場所やチャネルを一つにリンクすることのできる、流通小売ビジネス最大・最適化のためのこの上ないシステムだ。正しい使い方で「JCペニー」のように生まれ変わって、事業を大飛躍させたら良いのにと思う自分はお節介なのだろうか?

いやはや、欲しいものをデパートでなかなか見つけられない腹立ち紛れに、つい大きな口を叩いてしまった。

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2007年3月19日 (月)

早春随想

今年もやっと、確定申告の手続きが済んだ。と言っても、書類作成に時間を費やし、届出のために税務署の窓口で長い行列に並んだのは専ら家内で、我々(自分とムッシュ)はその準備期間中は、ひたすら邪魔をしないよう、作業している家内を遠巻きにし、当日も、駐車した場所の近辺でウロウロしていただけなのだが...。
経理畑出身の家内にとって、この手の仕事は最も得意とするところの一つなので、それを良いことに任せっきりにしているが、さぞ大変だろうと思い、たまに“何か手伝おうか”と言ってはみる。だが、結局何の役に立つわけでもなく、そんなこんなで、もう30年以上。いつもほんとにご苦労さまでお蔭さまと、感謝するのみ。

例年、この届出をする時期は、戻ってくる家内を車外で待っている間、背中にポカポカと暖かい春の陽射しを感じていたものだが、今年はそうではなかった。何週間か前に一度、早々と春の到来を思わせるような日々が続いたが、このところまた、朝夕は身を切るような寒さで、日中も寒風が吹き荒び一向に気温が上がらず、冬に逆戻りした感さえある。2~3日前の朝などは、雪がチラついていた。
昨年の備忘ログを読み返してみると、ちょうど今頃は、庭の豊後梅・白木蓮・沈丁花などもまだ五分咲きで、春の来るのがいつもよりやや遅いかなという感じだったが、今年は早く来たかのような思わせぶりに誘われて、梅はだいぶ前に咲いて散り、木蓮と沈丁花も満開のピークを過ぎた。いつもは四月になってから開花するカリンやブルーベリーも、今にも咲き出しそうに花芽が膨れ上がったが、このところの寒さでそのまんま。

ムッシュと散歩に出かけるときも、もう春仕度でいいかと一時は思わせられて、気が早く衣替えをしたら、とんでもなかった。寒さのぶり返しで、一度は仕舞いこんだ冬物をまた取り出して着なおす破目に。家の中でも、もう暖房はあまり使わないで済むかと思っていたら、そうは行かなかった。近年とみに寒がりになった自分は、いまだに、起床・就寝時の着替えには暖房のスイッチを入れずにはいられないし、机に座って仕事をしているときは足温器を離せない。
やたらと鼻がムズムズしクシャミが出るが、これも、必ずしも花粉症のせいだけではなく、もしかしたらUターンしてきた寒さのためもあるかも知れない。どっちにしても、早く終わって欲しいものだが。

気象庁も、何を早まって、例年よりもだいぶ早い桜の開花日を宣言してしまったのだろう。そのせいで、桜祭りや花見などのイベントの計画が狂ってしまい、経済的にも思わぬ影響を蒙る商売や人々が出現しそうになったが、あの話は、その後どうなったのだろうか?この季節の足踏みで、結果オーライということになったのか?気象庁はミスでしたと頭を下げていたが、それにしても、とんだ人騒がせで罪作りなことだった。

ところで3月という月は、季節の変わり目だけではなくビジネスの変わり目でもあり、多くの企業で、新しい方針が打ち出され、それに伴って組織が変り、人事異動がある。もう自分自身は疾うに、それによって直接左右されることはなくなったが、関わりのある人々の消息を聞いて何がしかの感慨を覚えるのも、この時期の常だ。
今の自分自身にとっても3月は、12月とはまた違った意味で、年間の節目になっている。外部との関わりにおいて、何かが改まったり、始まったりすることが、間々あるからだろう。自分の1年は、2つのサイクルが少しずつズレて重なり合いながら進んでゆく。

話は変って、今春の新卒者は売り手市場とか、就職活動には苦労がなかったらしいが、長女が卒業した時は史上最悪の就職氷河期で、ずいぶん辛い思いをさせた記憶がある。現在、本人が幸せなら、それでいいのだが、昨今の景気のいい話を聞くと、今更言ってみてもどうしようもないけれども、その頃のことをフト思い出してしまう。
長男・次男も、会社の中では紛れもなく中堅といわれる年齢にさしかかっており、好まずとも、春を迎えるごとに、よりハードな役割に取り組むことを強いられる立場になっているのだろうが、それに押し流されず、一年一年を強く乗りきって行って欲しいと思う。健康にだけはくれぐれも留意して。自分も通ってきた道だけに、この時期になると、ひとしお、そんなことを思う。

ムッシュも、我が家に来てちょうど2年になる。年齢も6歳半ばになって、今や長男・次男に続く三男坊のような存在。すっかり言葉も通じるようになり信頼関係もでき、家内にも慈しまれて、まことに平穏な日々を送っているが、散歩の途中に街角で、ときどきフッと立ち止まり、心なしか遠くを見るような感じになることがある。
そんなときは、もしかしたら4歳まで育った街や以前可愛がってくれた人を思い出しているのかも知れないと、犬ながらいじらしくて、そっと見守ることにしている。“人生いろいろ”だが、“犬生”もいろいろ。我が街、我が家で、ズッと幸せに暮らして欲しい。

春を迎えるという時節柄か、これから花も咲き実も生る人たち(犬一匹を含む)のことを、あれこれ想ってしまった

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2007年3月12日 (月)

友の絵画展

昨年の秋ごろ、自宅の最寄り駅、東急田園都市線「あざみ野」の近くに、白い大きなビルが建った。ホームドクターのクリニックに行く途中にあるので、建築中から一体何ができるのだろうかと関心を持っていたが、思わぬことからそれが判った。

過日、例の大森の店で友人たちとの“お歌の集い”があったとき、政治・経済・スポーツ・健康などから趣味・美術まで話題が発展して(四六時中唄ってばかりいるというわけではないのだ)、その店のママさんの自作という店内の造花や絵に感心しているうちに、自分と同じ横浜市内に住むNiから、“実は最近絵画クラブに入って絵を描いているのだが、会員展をやるので良かったら見に来ないか”という話が出た。
場所はあざみ野駅近くの横浜市の施設だと言っていたので、もしやと思い、後日届いた案内状の地図を見ると、やはりあの白い建物がそうで、「横浜市民ギャラリーあざみ野」だったことが判明した。家からも遠くないし、彼の絵にはもちろん、その建物にも興味があったので、先日さっそく足を運んでみた。

市民ギャラリーは、モダンだが落ち着いたインテリアで、あまり自治体施設臭のない簡素な感じに好感が持てたが、館内はかなり広く天井も高く、Niの所属するクラブ以外のグループも含めて、いくつもの絵画展が同時に開催されていた。館の案内資料を見てみると、市民の各種創作活動のための展示スペースをはじめ、アトリエや、ワークショップ用の会議室もあり、ちょっとしたコンサートもできるサロンまであるという。今まで知らなかったが、市民なら気軽に借りられるらしいので、こんど何かに利用しようと思う。

それはさておき、Niのグループの絵画展は、予想以上に楽しめた。フォルムと色彩に特徴のある建築物をポイントにした風景をペンで線描したものに、透明水彩で彩色し、塗り残し部分を効果的に活かして光と影のコントラストを生み出している、透明感にあふれた作品群は、画法は異なるが、どこかユトリロを思わせる味わいがあった。
重厚な油彩にはむろん、ズシリとくる迫力があるが、歳のせいか、“ペン彩”と呼ばれるらしいこの画法の作品の方が、見ていて疲れず、目と心の癒しになるような気がした。

Niと一緒に会場に見えていた奥さんが、“やっと部屋に飾っておける絵になりました”と謙遜していたが、どうしてどうして、もう立派なもの。Niにあれだけの画才が潜在していたことを、迂闊にもわれわれ仲間は、今まで全然気付いていなかった。

張り合うわけではないが、こう見えて、実は自分も、小さい頃から絵を描くのが好きで、高校でも2年までは、野球部と美術部を掛け持ちしていた。美術の主任教師には、3年になっても美術部に残って本格的に取り組むよう勧められたが、何だか理由は忘れてしまったけれども単純なことで野球部の方を選んだような気がする。
また、いろいろと職を替えた末、晩年になってやっと少しだけ認められるようになった田舎画家だった父親も、息子にはそんな生活不安定な道に進むことを望まず、堅い月給取りになることを期待していたので、自分もそれに格別抵抗感を持たず(そういう時代だった)大学・就職と進み、以来ほとんど、絵筆をとることは忘れていた。

その代わりにと意識してのことではないが、美術館にはよく足を運んでいる。国内よりも海外の方が多いかも知れない。行きたいと思っていながらまだ機会のないところも沢山あるが、これまでに訪ねた主だったところだけでも、ニューヨークのメトロポリタン美術館、MoMA(ニューヨーク近代美術館)、グッゲンハイム美術館、ブルックリン美術館、フリック・コレクション、ボストンのボストン美術館、サンフランシスコのSFMOMA(サンフランシスコ現代美術館)、ハワイ・オアフ島のホノルル美術館、パリのルーブル美術館、アムステルダムのゴッホ美術館とレンブラント美術館などがある。
国内でも、倉敷の大原美術館、甲府の山梨県立美術館、同じ山梨県長坂の清春白樺美術館、箱根の彫刻の森美術館などを訪ねており、上野の東京都美術館には、家内の同窓ということで夫婦ぐるみの親しいお付き合いをさせていただいている「日展」「示現会展」の重鎮、成田禎介画伯からのご招待で、毎年足を運んでいる。

そう言えば自宅も山荘も、成田画伯を始め、子供たちや、折りにふれて買い求めてきた有名・無名の画家たちの絵でいっぱい。考えてみるとやっぱり、絵が好きなのかと思う。
結婚してから知ったのだが、岳父も絵心のあった人で、家内もファッション画を描き、特に奨めたわけでもないのに子供たちは皆、やはり絵が好きで得意になった。次男などはとうとうそれが職業になり、今はグラフィック・デザイナーとして活躍している。

さて、自分はと言えば、密かに“そのうちに...”と思い、数年前にお絵描きセット一式を揃えたが、“忙しくて描いている時間がない”と言い訳しつつ、その道具を山荘の収納庫に眠らせたまま。そういう時間は自然にできるものではなくて、自分でつくらなければできないことはわかっているのだが...。

Niの作品展を見て、“よーし、自分も”という気に、また少しなってきた。これをきっかけに、「昔とった杵柄」と行ってみるか。

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2007年3月 5日 (月)

話が長いと伝わらない

先月末、東京八重洲ホールで開かれた「日本ダイレクトマーケティング学会」「DMフォーラム」に参加、P&Gジャパンの黒木昭彦マーケティング・ディレクターと明治大学大学院の上原征彦教授ら2講師の話を聴いてきた。

「日本ダイレクトマーケティング学会」とは、国内で自分が所属している唯一のダイレクトマーケティング関連団体で、「日本通信販売協会」「日本ダイレクトメール協会」「日本テレマーケティング協会」といった特定のフィールドのみを代表する業界団体とは異なり、ダイレクトマーケティングに関する包括的な視野・目的を持ち、したがって入会資格を希望者の活動分野によって制約したりしていない、業界横断的な相互研鑽組織だ。
6年前の2001年に設立され、“学会”といっても学者だけで構成されているわけではなく、正会員は“学識経験者”ということになっているけれども、広く若手の実務家にも門戸を開き、大学生・大学院生の次世代ダイレクトマーケターの育成にも力を入れている。

主たる事業として、年次の「研究発表大会」を初めとする会員によるプレゼンテーション、会員同士のワークショップ、会員またはゲスト・スピーカーによる講演会・セミナーなど、学会全体としての、またその中の各分科会ごとの学習研究活動が盛んに行われているが、「DMフォーラム」(先日郵政公社の主催で行われた「ダイレクトマーケティング・フォーラム」と紛らわしいがそれとは別)とは、「研究発表大会」と共にその中心的な定例イベントで、今回で19回目になる。
自分も2005年6月の第12回で、「体系ダイレクトマーケティング」の出版記念講演をしたが、今回は一受講者の立場で参加した。

ビジネスの第一線から引退して久しく、今はどこの業界団体にも属さず束縛されず、自由気ままにものを言い、また振る舞わせてもらっているが、やはり、自分の専門分野に関する勉強と人間関係は常に継続している必要があり、そのための交流・情報交換の場として、国内・海外に関わらずこういう場には、話す立場であれ聞く立場であれ、できるだけ参加しようと思っている。
ここ何回かのフォーラムには、テーマ的にそれほど興味を持てなかったのだが、今回の“メーカーのダイレクトマーケティング”というテーマは、ダイレクトマーケティングというものを“単なる通信販売ではなくて汎業種・業態的な統合ビジネスシステム”として巨視的に把握・解釈することを提唱している自分には、たいへん関心の持てるものであり、また、そういう自論が講師のお二人の話とどう重なり合うか、あるいは合わないかにも興味があったので、大きな期待を持って参加した。
それに、いつもほとんど話す側にばかりいるためなかなか気がつかないでいる自分の講演の至らぬ点についての改善のヒントを、お二人のスピーチから学び取りたいとも思った。

黒木氏のプレゼンテーションは、大筋として、インターネットの出現後、消費者のメディア環境が変化して、ブランド〈商品〉によっては必ずしもテレビCMが有効に作用しなくなり、消費者が自分のライフスタイルに合わせて情報収集できるコミュニケーション・メディアが受け入れられるようになってきて、したがってマーケティング目的を達するためには、消費者のタイプによってメディアを選ばなければならなくなったという話。
そしてその事例として、同社が市場を共有する別業種企業数社とコラボレーションし、“WOMAMA”(WOMAN+MAMAを意味する造語)という新しい顧客像を想定、インターネットのウエブサイトを通じてそれを顕在組織化して、メルマガによって継続的情報提供と関係強化を実現した結果、同社のこの客層向けのブランド(赤ちゃん用品)に対する注目度が著しく高まったというケースが紹介された。

これは自分にとっては、米欧ですでにそうであるように、日本でも今まさに、消費財メーカーに代表されるマスマーケターがダイレクトマーケティングの原理と機能を導入して顧客の顕在・固定化と直接関係の構築・強化に向かっているという話に聞こえたのだが、同氏は、意図してか意図せずしてかはわからないが、あえてダイレクトマーケティングという言葉は使わず、PR活動の成功事例としてこれをとらえているという見解を示した。
質疑の時間に、同社の「リレーションシップ・マーケティング」の実態に対する興味から、P&Gジャパン全体としての顧客・見込客データベース保有・利用状況について尋ねたが、明確な答えは得られなかった。米国本社にくらべてジャパンがまだ、かなり遅れた状態にあるのかも知れないし、あるいは単に、同氏がこれまでベビーケア・ブランドの専任だったため全体を把握していないだけのことなのかも知れない。今後、機会を改めて話を聞かせてもらうことにしよう。

上原先生は、この半世紀のメーカーの流通戦略の推移から、マーケティングは“つくったものを売る”という時代から“売れるものをつくる”という時代を経て、今は“まずリレーションシップを構築し、そのプロセスの中でモノやサービスが売れてゆくことを予定する(需要を見つけ出す)”時代になっていると見ることができる、という話だった。
そして、今や消費者は、企業が一方的に提供する情報の単なる受信者ではなくて、自分で集めた情報の中から自分の満足を導き出してゆく“情報検索者”であるから、“情報をダイレクトに獲得することのできるダイレクトな関係”を構築することが必要であり、それがこれからのダイレクトマーケティングなのだと結論づけていた。

また先生は、最近不祥事を引き起こしているメーカー企業を例にあげて、彼らがいかに“売り手中心”の観念に凝り固まって、“顧客中心”に頭を切り替えられないでいるかを、体験的に語っていたが、自分もそのことについては、いろいろな場所で同様なニュアンスの話をしたり書いたりしているので、大いに共感するところがあった。

ところで先生の話は、程よい(少なめの)量の中身と、絶妙な語り口が、たいへん参考になった。“つかみ”といい、“間”のとり方といい、“振り”といい、さすがに上手い!
失礼な言い方かも知れないが、あれは、学生というわがままな聴衆を相手に永年“しゃべり”で商売されている方の、みごとな“芸”の境地といっても良いのではないだろうか。

自分もこれまで永い間、ビジネスマン相手の講演は数え切れないほどこなし、3年間という短期間ながら大学生相手に講義する機会もあって、いっぱしのプロ・スピーカーを自認していたが、先生の“話芸”に接して、まだまだ修行が足りなかったことを悟らされた。
思い返してみると、有益な情報をできるだけ多く提供しようという気持ちが先走り、エンタテインメント性が二の次になって、消化不良を招いていたこともあったかも知れない。
自分でも「広告クリエーティブ論」の講演の中で、“あれもこれも伝えようとすると、かえって重要なことが伝わりにくくなる” などと言っているのに...。言行不一致を深く反省。

...と言いつつ、このブログもまた、長くなってしまったんですから~  残念!!

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