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2006年12月18日 (月)

伝統型広告とメディアの今後

仕事柄、マーケティング関連の最新情報を得るため、米欧の主だったナショナル・メディアと業界・専門メディアのオンライン版をチェックすることが、ほぼ毎日の日課になっている。そこで目ぼしいタイトルを見つけると、ザッと目を通し、また資料としてプリントアウトしておき、後でまとめて仕分けをしながら再チェックすることにしている。

その資料のここ数か月分を見直していたら、「Advertising Age」2006年7月10日号の刺激的なタイトルが目についた。それは、「The End of Advertising and Media as We Have Known It」(広告とメディアの終焉――それはわかっていた)というもの。今や世界の広告業界の一大勢力にのし上がったWPPグループの総帥マーチン・ソレル氏が最近英紙「タイムズ」に寄せた“デジタル革命”についての意見に対する、米国Tacoda Systems(オンライン広告における“行動分析型ターゲティング”の技術システムで知られている)の最高経営責任者デービッド・モーガン氏の、真っ向から反論だ。

ソレル氏の意見とは、インターネットの出現とメディアのデジタル化の嵐が伝統的な広告業界に与えている言い知れない恐怖を鎮静させようとの狙いによるもので、おおよそ『今日我々が経験しているデジタル革命とは、我々の業界が50年前に経験したテレビの出現期における動きとあまり変わらない。インターネットは、たかがもう一つ、新しいメディアが出現したというだけのことで、一時的には業界が紛糾するかも知れないが、すぐにその嵐はおさまって、業界の本質はこれまでのままに維持されるはずだ。インターネットが他のどのメディアかに取って代わるというようなことはなく、これまでのメディアと並ぶもう一つのメディアということに落ち着くだろう。テレビがそうだった。』というもの。

これに対してモーガン氏が展開している反論は、要約すると次のようになる。
まず彼は、『ソレル氏は、あまり気休めみたいなことを言わない方が良いし、業界の人々も、それを信じない方が良い。もちろん、広告メディアとしてのインターネットのパワーは、その到達度が今やテレビに迫る勢いだが、今日展開されているデジタル革命とは、単なる広告メディア・ミックスのとしての新メディア導入の話では済まない、想像以上に大きな問題なのだ。広告メディアとしてのウエブは、その全体像の中の一部に過ぎない。マーケターは、我々が今知っているかたちの、明らかにメディア本位の伝統的広告から離れて、市場・顧客を中心に考えるダイレクトマーケティングやプロモーションに移行しつつある。これは今始まったことでなく、もう20年以上も前から進行していたことだが、デジタル革命がそれに拍車をかけた。このことは、将来は広告が今よりずっと少なくなる――つまり伝統的なメディアの広告収入も少なくなるということを意味する。』とぶち上げている。

彼はこうも言っている。『あらゆるメディアはデジタル化しつつある。それはウエブだけに影響を与えているわけではなくて、テレビにも、ラジオにも、新聞にも、雑誌にも、屋外メディアにも与えている。もう10年もすれば、すべてのメディアが、部分的にあるいは全面的にデジタル化して、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といった現在のメディア区分は、広告を受ける方の人々にとっては意味がなくなってくるだろう。だが、ほとんどの伝統的メディアの人々は、この波に対して備えができていないし、それを止める力もない。かつては、効果がストレートに現れないシステムになっている広告が、むしろ大手を振ってまかり通っていたが、そういう時代は終わりかかっている。企業のあらゆる業務プロセスがデジタル化され、かかった時間やコストに対して結果が問われるようになり、広告もメディアも、当然それを避けて通れなくなっている。広告費用の使い方も、“アカウンタビリティ”(つまり費用対効果)の面から見直されるようになりつつある。』と。

さらに彼は、『私たちは今、顧客中心の世界にいるが、ここでは、伝統的広告とメディアが今までやってきた一方通行のクリエーティブや編集は通用しなくなってきている。メディアとコミュニケーションがデジタル化すると、同時双方向のやりとりが可能になるから、“逃げ”や“ごまかし”が利かなくなるのだ。』と続け、『ソレルさん、デジタル革命は新メディア出現以上のことです。それは、今までのような広告の“終わりの始まり”です。どうやら、マーケターも消費者もそれを望んでいるようですよ。』と結んでいる。

自分は、“やがて小売は通販ばかりになり店舗は消滅する”とか、“インターネットがあらゆる広告メディアを駆逐する”とかいった、皮相的でセンセーショナルなもの言いは好きではないので、いささか極端に過ぎるこの論文のタイトルも、どうかとは思う。
しかし、確かにソレル氏の見方は甘いと思うし、“あらゆる情報はデジタル化する”、“インターネットは単なる広告メディアではない”、“マーケティングにはアカウンタビリティが求められる”というモーガン氏の指摘には、大いに共感を覚える。
そして彼同様に、事態に対してどうも十分に取り組んでいるようには見えない(わかっていないのかも知れない)伝統的な広告業界(エージェンシーも広告主も含めて)には、いささか苛立ちを禁じ得ないでいる。

(なお参考情報として、「DM News」2006年11月17日の“Digital age needs marketing basics: Wunderman”と、同じ「DM News」12月7日の“Internet, Mail top '07 ad channels: Universal McCann report”という記事も、ぜひ一読されることをお薦めしたい。)

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