« 秋日和 | トップページ | クラムチャウダー »

2006年11月20日 (月)

DM大賞

先週末、日本郵政公社と日本ダイレクトメール協会が主催する「全日本DM大賞」の審査会があった。これは、ダイレクトマーケティング関係ではおそらく国内唯一の作品コンテストだが、主催者の顔ぶれからもわかるように、この場合のDMとはダイレクトメールを指し、関連業界だけのイベントながら歴史は結構長く、今年で21回目になる。

この賞が設けられたばかりの頃は、自分もダイレクトメール協会の役員だったので、初期の数年間はこのコンテストの審査に加わっていたが、その後仕事の範囲や方向性の変化などもあって、この15年ほどはそこから遠ざかっていた。けれども、今回はまた縁があって、久しぶりに審査を引き受けることになった。

20年前とは市場環境もメディア環境も大きく変わって、マーケティング全般の中でのダイレクトマーケティングの価値と重みも増してきている今日、これは、その中の基幹メディアであるダイレクトメールが、あの頃からどう変化し進化したかを網羅的・集中的に観察できるまたとない機会だと、自分的には、実はひそかに楽しみにもしていた。

応募総数や最終審査対象数、入賞点数などは、今の段階で自分が発表する立場にはないと思うので、ここでは触れないが、さすが郵政公社の組織力というべきか、数的規模では決して欧米の同種のコンテストに見劣りしないだけのものが集まった。が、さて、内容と質はどうだったろうか。

15年前とくらべて変化を感じたのは、本来中心的ダイレクトメール・ユーザーだった通販会社などだけでなく一般大企業のエントリーが、意外と思えるほど増えてきたこと。自動車、クレジットカード、不動産、百貨店などは以前からもあったが、今は時代を反映して、情報・通信・運輸・サービスなどがそれに加わってきた。また、B-to-C(対個人消費者)だけでなくB-to-B(対企業)が目につくようになったのも、ダイレクトメールに対する一般企業のマーケターの認識が深まってきたということなのかも知れない。

ただ、このことからは、ダイレクトメールがさまざまな企業の広告メディア・ミックスの一環に取り入れられることが多くなったということは言えても、必ずしも、主要メディアとしての一角を占めるようになったとまでは言い切れないようだ。というのは、応募作品に添付するキャンペーン詳細の記入用紙をよく見ると、とても主要な役割を果たしたとは思えないほど発送通数の少ないものが大部分で、効果(レスポンス率)の確認をしていなかったり、発送通数すら記入していないものも少なからずあったからだ。その意味で、これまでにも重々認識していたことではあったが、草の根的なマーケターへの広がりだけでなく、伝統的な大企業のマーケターへのさらなる啓蒙の必要性を再確認させられた。

対照的に意外だったのは、通信販売のエントリー企業が少なかったこと。これは恐らく、コスト効率上の問題で、郵送ダイレクトメールから、宅配カタログとウェブサイトおよびEメールにウエイトがシフトしているからではないのだろうか?

応募作品そのものの印象としては、郵便法の規制がある程度ゆるやかになったこともあってか、表現形式が豊かになったように思う。定形郵便物のフォーマットにこだわらず、さまざまなサイズや形状のものが考案されるようになり、ダイレクトメール・パッケージという概念が自由な広がりを持つようになった。極小のもの、特大のもの、三角形のもの、円形のもの、立体的なもの、紙以外の素材を使ったもの、実用的なサンプルを同封したものなど、ずいぶんとバラエティに富んできた。

反面、メッセージ性がなく何を訴求しているのか判然としない(挨拶状やそれに該当するコピーが含まれていない)もの、ホームページのURLやフリーダイヤルのナンバーは記載されていてもそれによって何を求めるのかが語られていないものなど、クリエーティブ以前にマーケティングが分かっていないのではないかと疑わざるを得ないものが少なからずあったのには、暗然とさせられた。
また、応募用紙への記入だけからは、そのダイレクトメールが全体戦略の構造と流れの中でどんな位置にあり、他のメディアやチャネルとどうつながっているのかなどがよく見えて来ず、フラストレーションを感じさせられるものも多々あった。

思うに、企業規模の大小にかかわらず、デザインの感覚や技術はそれなりに進化したが、どうも、マーケティング戦略としてのプランニングが、そして一人一人のターゲットに語りかけるということが、忘れられているような気がする。“ダイレクトメールをどう作るか”“レスポンス率を上げるにはどうしたら良いか”といった本やセミナーには時々お目にかかるが、そこだけに関心を持つのではなく、みんなが分かった積もりになっているその前のところを、もう一度おさらいする必要がありそうだ。

2月22日にも書いたように、マーケターの道をダイレクトメールから歩み始めた者として、そのために役立つならば、できる限りの貢献をしたいと思っている。

|

« 秋日和 | トップページ | クラムチャウダー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: DM大賞:

« 秋日和 | トップページ | クラムチャウダー »