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2006年4月27日 (木)

広告賞選考会に思う

先週末、「広告D社賞」の本年度第一次選考会に行ってきた。その名称の通り、日本最大の広告代理店D社が主催する広告賞で、戦後間もない1947(昭和22)年に創設され、今では「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」「ポスター」「SP」「インターネット」「公共」といった各分野をカバーする、歴史の点でもスケールの点でも日本最大級の総合広告アワードだ。自分も、縁あってそのSP(セールスプロモーション)部門の選考委員を拝命してから、もう10年になる。

なぜダイレクトマーケティングを専門とする自分がSP部門の選考委員に指名されたのかと考えてみたが、どうやらSPの基幹メディアの一つとしてダイレクトメールが使われることが間々あるからということと、昨今ではSPとダイレクトマーケティングの間には目的・手法においてだんだん境界線がなくなりつつあるので、自分のような者がSPキャンペーンについての評価を行ってもさほどおかしくはないということのようだ。

このアワードは、“広告賞”と言っているのだから、評価に際しては難しいことを考えず、“広告のかたちとしてどうなのか”ということで割り切れば良いのだが、時に「SP」の意味を深く考え過ぎ、いろいろと気になってくることがある。
この賞の「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」「ポスター」そして「インターネット」という分野は、明確に“メディア”もしくは“コミュニケーション・チャネル”を基準としていることがわかるが、それに対して「SP」(「公共」もそうだが)は“目的”を基準にした分野と受け取れ、使用メディアという点では、前者に属するメディアの複合プラスSP特有のメディアというのが実態で、基準を前者の考え方に合わせれば、「マルチメディア・キャンペーン」とでも呼んだ方がわかり易いのではないかとも思ったりする。
逆に、分野をすべて目的基準にすると、「認知広告」「SP広告」「通販広告」「公共広告」などという呼び方になるかも知れない。

なぜ理屈をこねて、こんな余計なことを考えるかというと、自分の場合SPは“販売促進”という“目的”だと考え、キャンペーンの評価に際してはどうしても、クリエイティブすなわち表現技術もさることながら、それによって達成した成果と費用対効果を重視したいと思っているからだ。だが現実にはいつも、大勢として、マスメディアを含むマルチメディアで見栄えのするつくりのキャンペーンが受賞する結果になる。
自分は、本格的な「セールスプロモーション」ならば、SP特有の、ダイレクトメールやPOPやチラシなどのツールを使い、イベントなどの機会を活かして、投資に見合った成果をあげた場合を評価したいのだが、昨今SPキャンペーンと称するものは、通常のブランド認知広告と同様にマスメディアを多用するものが多い。各種マスメディアに莫大な広告費を投下すれば、その物量効果によって大きな反応が生じるのは当然で、それが真の成果なのかどうかは簡単には断言できない。問題は、投下したコストに対する採算性の高い(理想的には採算のとれた)成果を上げ得たかどうかではないかと思うのだがどうだろう。

SP広告部門にエントリーした各社は、作品と共に提出することを義務づけられている「キャンペーン概要」の中で、どんなメディアを使って“マーケットシェア”がどれだけ上がった、懸賞やプレゼントに対する“応募”がどれだけの数に達したかということについては語っているが、投じた広告費と直接それによって生み出された成果が採算に見合うものだったのかどうかは黙して語らない。
またそれによって、販売シェアではなくて新規の“見込客・購入客”がどれだけ獲得できたか、それに基づいて“LTV”(顧客生涯価値=個別客について最初だけでなく一定期間内の継続・反復取引きによってもたらされる累計収益)がどれだけ見込めそうかということにも言及しない。恐らく、そのような実績を測定するためのキャンペーン・フォローをしていないだろうし、する考えもないのかも知れない。

日本の一般的な会計システムでは、広告・販促費はあらかじめ見込んでおく固定経費だから、その枠内で収まっている分には、“シェア”が上がった、“集客”ができた、“応募”が多数あったというレベルの成果で良しとされるのだろうか?
“認知”が目的の広告ならそれでも良いのかも知れないが、“販促”を目的とするSP広告では違う考え方をすべきではないのだろうか? 投下費用に対して直接採算が取れたかどうかを厳しく問われ、それに加えてLTVも予測する必要のあるダイレクトマーケティングの会計システムで育ってきた自分は、ついついそういう風に考えてしまうのだ。

今や「認知広告」であっても、事後調査などではなくリアルタイムで、投資と成果を直接関連付けて“ROI”(Return on Investment)を問われるようになりつつある厳しい時代。
余計なお世話かも知れないが、行く行くはせめてSP部門だけでも、このダイレクトマーケティング的発想を取り入れてみるようにはならないものだろうか?

第一次選考では、少しでもそのような自分の考え方にそっている作品に票を投じてきたが、来月に予定されている二次選考、最終選考ではどんなキャンペーン・作品が残るのだろう? 自分としてはそろそろ、大企業のマスメディア中心の大量キャンペーンではない、ユニークなSPらしいキャンペーンが入賞することを期待しているのだが。

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