« 八ヶ岳の冬 | トップページ | 犬の気もち »

2006年2月22日 (水)

ダイレクトメール応援歌

近頃、受け取るダイレクトメールの数と種類がめっきり少なくなった。これは、自宅と事務所のアドレスを一本化し、加入している国内・海外のクラブや団体も極力整理して、金融機関などの取引先も必要最小限に絞り込むようにしたからだろうし、また、マーケティング・コミュニケーション・メディアとしてのダイレクトメールが、手間とコストがかかると、他のメディアにくらべて敬遠されがちになっていることもあるのだろう。

その代わりに増えているのが電話とEメール。発信する方にとっては手っ取り早くて何かと都合が良いからだろうが、その方法と内容に“何だかナー”と感じさせられることが多い。個人的に腹が立ったり、うんざりさせられたりするだけでなく、“もっと上手く段取りしなきゃダメでしょう?”“そんな言い方じゃあ話を聞いてもらえないよ”などと、つい説教を垂れたくなってしまうことも再々だ。もっとも、余計なお世話なので、ホントにそうしたことはないが。
どこが下手でダメかというと、伝えようとしているらしいメッセージの内容や語り口もさることながら、電話やEメールだけでは無理がある状況にもかかわらず、何とかそれだけで目的を達しようとしている点だ。つまり、電話以前の伏線というものがあるはずなのにそれを考慮していない、情報の量と質を考えず何でもEメールで済まそうと考えている、といったことである。

かつてはダイレクトメールがそのような言われ方をしたこともあったが、今ではその座を電話やEメールに譲った感がある。他人の屋内のプライベートな道具の中に無遠慮に、あるいは勝手に入り込んで来ずに、郵便受けの中で大人しく開封されるのを待っている分、ダイレクトメールにはまだ可愛気があり、時間のある時には読んでやろうかという気にもなってしまう。また、人間とはどうしても、手に取れないバーチャルなものよりも少しでもリアルに近いものの方を信じたくなるものだが、電話・Eメールとくらべてみると、ダイレクトメールでなければ伝わらないことがあるのを、改めて認識させられる。

いまインターネットが、最先端のコミュニケーション・メディアとしてもてはやされているが、いかにインターネットでも、それ単独でマーケティングのあらゆる局面での目的を完全に達するのは難しい。これは、このマルチメディア時代の常識だ。もちろん他のメディアも同じことで、それぞれのメディアには特性とそれに見合った役割があり、それを的確に組み合わせた時に最大のコミュニケーション効果が生まれるのだと思う。
その中でダイレクトメールは、アナログ・メディアでありながら構成物としてデジタル記録メディアを取り入れることによって、デジタル通信チャネルにリンクし双方の架け橋となり、コミュニケーション効果を飛躍・拡幅させるための重要な役割を果たすことができるという、それ自体マルチメディア的な特性を内包している。そして表現上の創造的可能性も、他のメディアとくらべるとずっと幅があり奥が深い。だから、コストと手間は確かにかかるかも知れないが、正しく使えば結果もそれだけのものが得られる。 
ダイレクトメールは、多数いてもポテンシャルの低い外部見込客などに向けてではなく、少数でも付加価値の高い自社顧客や企業向けなどのマーケティングで、量的な認知・販促効果ではなく質的な継続・反復効果を目的とし、プロセスの前座ではなくて真打的役どころで、目いっぱい意匠を凝らして登場させれば、思わず客を唸らせ魅きつけて離さない力を発揮する。ダイレクトメールには、そういうことを期待し評価すべきなのだ。

と、そこまで声高らかに応援歌を歌い上げたが、日本のダイレクトメールのコミュニケーション・スキルの現状が、実態としてそれに相応しいレベルにあるかと問われると、ちょっと心許ない。自分の手もとにある、航空会社、旅行会社、保険会社、クレジットカード、ビジネス雑誌、自動車ディーラーなどのダイレクトメール・パッケージを見る限り、どれも、感心させられるような魅力からは程遠い。残念ながら、半世紀近く前に自分が関わりはじめた頃のそれと比べても、見た目は兎も角、本質は少しも進歩していない。それどころか退化の兆候さえある。

下手な鉄砲も数打ちゃ当たるとさまざまなサイズ・内容の印刷物を何でも構わずゴチャゴチャに詰め合わせたもの、単にチラシやカタログを封筒に入れただけのメッセージ(つまりレター)を伴わないもの、広告するだけで返信メカニズムが欠けているものなどは、コミュニケーション・スキル以前だが、一見小ぎれいにまとまってはいても訴求対象と情報としての本質に迫りきれていないもの、フラットな定型郵便物という先入観から抜け切れない没個性的なもの、ブローシャー(商品パンフレット)だけに力が入ってレターや外封筒がお座なりにされているものなども、明らかにスキル不足ないしは感違いだ。

ダイレクトメールはレスポンス広告と並んで、これからのインタラクティブマーケティング・クリエーティブの基本。ここからマーケティングの道を歩み始めたものとしては、ぜひ、世のクリエーターに本気で勉強してもらいたいし、自分も何とかその力になりたいと思っている。幸い、そんな日頃の思いを語り伝えることができそうな機会が近々訪れるかも知れないので楽しみだ。計画が具体的になったらまたここで書くことにしよう。

|

« 八ヶ岳の冬 | トップページ | 犬の気もち »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ダイレクトメール応援歌:

« 八ヶ岳の冬 | トップページ | 犬の気もち »