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2006年2月 8日 (水)

小澤征爾とプレジャー・プログラミング

2月2日のインターネットや新聞で、ウィーン国立歌劇場の音楽監督、小澤征爾(親交があるわけでもないので敬称略)が体調を崩して緊急入院し、長期療養の見込みのため年内の一切の活動がキャンセルになることを知った。今夏は、2002年7月に聴きに行ったボストン郊外タングルウッドでのボストン・シンフォニーお別れコンサート以来、久し振りに、サイトウ・キネン・フェスティバル松本でも聴きに行こうかと家内と話していたところだったので、まことに残念――というよりは、大事でなければ良いがと心配だ。

特に熱烈な小澤ファンというわけではなく、クラッシック音楽にうるさい方でもないが、昭和二桁前半の同世代(彼の方が2つ年上)で、その自由なものの考え方、インターナショナルな感覚、前向きでエネルギッシュな活動、次世代の育成と草の根的音楽啓蒙への献身という姿勢には、大いに共感するものがあって、僭越ながら密かに自分を重ねさせてもらってきた。
ウィーンのニューイヤー・コンサートで颯爽と大オーケストラを指揮する燕尾服姿のマエストロ・オザワではなくて、日本の片田舎の公民館で子供や地域住民のため気軽に誰でもよく知っているような曲のタクトを振っている小澤先生や、練習場でスノビッシュな外国人オーケストラ・メンバーを相手にポロシャツを汗まみれにしながら自己流の英語で熱っぽくコミュニケーションしているセイジが好きなのだ。

彼には、クラシック音楽家には(ファンにも)よくありがちな、“クラシックにあらずんば音楽にあらず”といった偏見のないところがいい。タングルウッドの前年のボストン・シンフォニー・ホールでのオフィシャル・ラスト・コンサートも、チケットまで購入していながら直前に例の9.11事件が発生し、やむなくキャンセルせざるを得なかったことなどもあって、“生オザワ”は数えるほどしか知らないのだが、彼の気さくな語り口からは、“楽しければそれでいいじゃないか”という音楽の真髄が率直に伝わってくる気がする。事実、彼の非公式なコンサートの演目にその証しを見てとれると思うのは、自分だけの勝手な解釈だろうか。

自分も、音楽とは“音を楽しむ”と書くぐらいだから、美しい音楽、楽しい音楽には、クラシックもポピュラーも、高級も大衆的もなく、由来や形式・体系にあてはめてジャンル分けし、それぞれ異なった接し方をする必要はないと思っている。いや、そんな理屈よりも感覚として、自分にとっては、ドボルザークの交響曲「新世界より」の第二楽章も、ジョン・デンバーの「カントリー・ロード」も、千昌夫が唄う「北国の春」も、目をつむって聴いたり口ずさんだりしていると、国籍の違いを越えて同じように懐かしいふるさとの原風景が浮かび、思わずジーンときてしまうということだ。

この感覚は、もともと自分の中にあったような気がするが、後年、仕事を通じてはっきりと意識するようになる。実は、マーケターとしての第一線にいた頃のある時期、商品開発にも深く関わって、特にレコードやテープによる音楽アルバムの制作・編集というプロデューサーまがいの仕事を任されていたが、そこでアーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団(小澤が常任指揮者だったボストン交響楽団のピックアップ・メンバー)の選曲・演奏による30センチLP10枚組のアルバムの日本発売版をプロデュースしたのがきっかけだった。そこでは、一枚一枚に、クラシックの名曲と、ジャズのスタンダード、ミュージカルや映画のヒット曲、そしてビートルズ・ナンバーまでが、何の違和感もなく混然とカップリングされており、聴いていて“これだ”と思った。
幸い大ヒットさせることができて、記念に来日したフィードラーとも直接話をする機会を得たが、そのような“教条主義的でない”演目編成は、“聴き手のシチュエーション”を最優先する「プレジャー・プログラミング」という考え方であることを知り、それ以来手がけた10を越えるアルバムでも、ずっとこの考え方を貫いた。

個人的にも自分は、小澤征爾やカラヤン、バーンスタインなどだけでなく、レイ・チャールズ、ビートルズ、バカラック、そして美空ひばり、越路吹雪、桑田圭祐なども広く愛聴し、プレジャー・プログラミングしている。理屈抜きに、魅力的なものは魅力的なのだ。
ちなみに私のカラオケ・レパートリーは、ジャズ、カントリー&ウエスタン、ハワイアンから、シャンソン、ラテン、歌謡曲、ど演歌にまで及ぶ(って、これはちょっと意味が違うか)。

小澤征爾入院から、とんだところまで話しが脱線してしまったが、音楽についての私論は別として、一日も早い彼の回復を祈りたい。我々世代は、彼の生き様からロマンと元気をもらっていたのだから。

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